遊技障害リスク軽減の提案
公益財団法人日工組社会安全研究財団の「パチンコ・パチスロ遊技障害研究成果中間報告書(*1)」において、遊技障害(ギャンブル依存症)リスクに関連する項目が明らかになった。
私がパチンコやパチスロを始めた90年代は様々な営業形態があったが、その当時の営業形態を参考にした、遊技障害リスクを軽減させるパチンコ店の営業方法や対策を提案する。
遊技障害リスクの有る者の問題点
以下の項目は「パチンコ・パチスロ遊技障害研究成果中間報告書(*1)」において指摘された、遊技障害と関連性が有る項目である。
- ・ギャンブルやパチンコ・ パチスロのための現在の借金がある
- ・パチンコ・パチスロの借金のための債務整理等体験がある
- ・月の遊技負け額が多い
- ・上限に達しても控えない
- ・自由時間以外しない(*1)
比較的強く関連
- 遊技頻度が高い
- 1日の遊技時間が長い
- 月の遊技使用額が多い
- パチンコ・パチスロ比重はパチスロが多い
- 価格台比重は高貸しが多い
- 上限を決めていない
- 時間が来てもやめない
- 家族と過ごすストレス解消行動が少ない(*1)
関連性有り
*価格台比重は高貸し・低貸しどちらでの遊技が多いのかの割合。*パチンコ・パチスロ比重はパチンコ・パチスロのどちらでの遊技が多いのかの割合。
私はパチンコやパチスロを指導していた経験があるが、ほとんどの当事者は確率論や技術介入要素についての知識が全く無く、下記のような問題点があった。
- パチンコやパチスロの当たり抽選システムの仕組み
- 独立試行(ベルヌーイ試行)
- 大数の法則
- 期待値
- ボーダー理論
- 換金ギャップや非等価交換での持ち玉遊技の有利不利
- これらを基にした遊技台選択方法や遊技方法
- 非論理的な理由等で遊技台の大当たりの好不調を読む。大当たりの間隔等でのパターン化。
- パチンコやパチスロのプログラムが確率論に基づいて設計されている事を非論理的な思考等で信用できない。
- たった一度の読みが当たっただけで決めつける。
- 理論上もっと勝てる台にも関わらず、非論理的な思考で負けると予測してやめてしまう。
- どんな機種でも期待値を無視してでも勝てる方法がある。
- パチンコでボーダーを1回でも超えていたら毎回1万円以上2、3万は勝てる。
確率論や技術介入要素の知識
下記項目について殆どの者に知識が無く、それを見聞きした事があっても信用できない。
認知の歪み
データ取得の強制・自動化
前述の関連する項目は、技術介入要素(確率論等の知識を含む・以下同様)を理解し、遊技台の選択時や止め時の判断できれば、高期待値の台を捨てる可能性が減り、期待値が欠損している台の遊技を極力回避できれば、問題ある遊技は発生しない。
また、技術介入要素を基にした行動を妨げる認知の歪みを解消する為には、その信用できない確率論等の知識を一般化させる為に、遊技データや収支データを縦断的に自動で強制的に蓄積するシステムの構築の必要性がある。
強制・自動化する理由は、現在も実機連動サービス(サミー・マイスロ、ユニバ・ユニメモなどのシステム)や類似アプリはあるが、その利用は任意であり、私が指導していた当時にもデータ取得を煩雑に捉える者が多かった為、遊技障害リスクの高い者の利用頻度は著しく低いと考察した為だ。
モバイルデバイス等で取得されたデータ閲覧が困難な者には、店舗に専用デバイスの設置も考えられる。
初めての遊技以前より基本的な知識として技術介入要素の知識が備わり、自動でデータを蓄積するシステムが構築されていれば遊技障害撲滅も可能である。
マイナンバーカード
政府がマイナンバーカードの普及を掲げているのであれば、それに紐付けしたシステムの構築にも有利な点がある。
マイナンバーと電子マネーを紐付け、 現在は現金で行う貸し玉と換金を電子マネーで管理し、入場規制、遊技規制をする。不正使用防止の為に実用化できれば顔認証の導入も検討する。これにより18歳未満の入場禁止の強化や、ゴト師対策、設定漏洩等の不正対策、脱税対策になり、縦断的な遊技データ蓄積も包括的な遊技障害対策になる。FeliCa(ICカード)に対応できれば円滑な運用も期待できる。
- マイナンバーとそれに紐付けた電子マネーの両者が無いと遊技できない。
- 期間(その日だけ・月間・年間など)による負債の限度額の設定、限度額に達すると設定した期間中は入場、遊技させない。
- 設定した期間は電子マネーから一定額以上の現金を引き出せない。(*下記篠原教授のツイートから提案)
- 申告で遊技を不可能にする場合、申告解除を第三者からのみに設定できれば遊技は不可能である。
- 限度額に達した場合には、技術介入要素の講習の受講や精神医療的な治療等の支援が考えられる。
実際、パチンコ・パチスロでの一時間当たりの平均損失額は300~1300円程度で、パチンコ・パチスロのみで大きな借金を抱えることは難しい。パチンコ・パチスロの借金のための債務整理に至るには、勝ち分を負けの補填に使わず負け額が積算されていく、借金の金利が膨らむなど別な経緯が必要と考えられる
— はげひげ (@96hage) May 10, 2020
遊技障害と関連している項目である「月の遊技負け額」や「月の使用金額」に限度額を設定できれば、必然的に遊技時間等も制御される。また、設定した期間に一定額以上の現金の引出し、口座への移動等を制限する事によって、設定期間中の生活全体の使用金額を抑えられる。これは技術介入要素を理解していない遊技者には有効だと考察できる。
懸念事項として、私が指導した者の内で問題ある遊技を反復する遊技者は、遊技できないストレスへのコーピングが不能な者がいた為、代替行動の提案が必要だと考えられる。
マイナンバーと電子マネーを補足できれば、専業(いわゆるパチプロ)の収入も明確になり、納税も可能になる。
- 取扱額が多いので、電子マネー各社にパチンコ店用の機器、アプリ開発を促し無料で導入する。
- 電子マネーを利用して、いわゆる「ノリ打ち」システムの構築する。簡単にノリ打ちができ、当事者間での不正防止に役立つ。例えば、1000台規模の店で大規模ノリ打ちオフ等の遊技者主催イベント等が考えられる。
- 換金時に手数料名目で勝っている側から手数料を引き、負けている側に補填する。
- ボーダーラインを超えている台や高設定示唆が出た台をある程度遊技した場合、何らかのボーナス(キャッシュバックや)等を出玉如何に関わらず与える(オペラント条件付けの正の強化)。
電子マネーを利用したその他のアイデア
止め時を明確にする為の営業形態
私がパチンコを始めた90年代初頭は下記ツイートの様な営業形態があったが、現在のパチンコ店においての営業方法は等価交換に近い無制限営業が主流であり、低貸しでも貯玉が有る店舗では等価交換に近いベースになると考えられる。
初勝ちは3000円ぐらいだった記憶がある。因みに換金が4円貸2.5円1回交換で機種は
— 澤田貴行 (@a11kll) January 10, 2020
京楽の『ニュートランプカード2』
スーパーリーチとおまけチャッカーがあったから覚えてる。#パチンコ #ビギナーズラック #おまけチャッカー #スーパーリーチ #京楽 #一回交換
昔みたいに定量制、一回交換、ラッキーナンバー制、タイムサービス(L.N制で時間内に当たれば無制限)などの高ベース貯玉無し営業で低リスクにならんかな?打ち止め抽選開放なら釘見れない人でも勝率上がりそう。今は優秀台開放抽選とか営業中にできないか。。。#ギャンブル依存症 #パチンコ #パチスロ https://t.co/ymSSstluqK
— 澤田貴行 (@a11kll) January 11, 2020
遊技障害リスクに関連する項目である「月の使用金額が多い」を抑止するには、4円貸し2.5円交換貯玉無しでの一回交換(確変終了で交換)や、ラッキーナンバー制(確変終了時)、ラッキーナンバー制でのタイムサービス(午前中無制限等)、定量制等での高ベース営業を提案する。
無制限営業を推奨しない理由は、リスクに関連する項目に「自由時間以外しない」「上限を決めていない」「上限に達しても控えない」「時間が来てもやめない」があり、止め時の見極めができない技術介入力の低い初級者には、明確な区切りを付けて遊技継続の可否の判断を促すのが有効であると考察する。
遊技者間格差
遊技者間において技術介入力の非対称性により格差が発生していると、技術介入力の高い上級者は利益が多くなり、技術介入力の低い初級者は損失が多くなる。
店が控除した金額と遊技者の利益は遊技者間でゼロサムになるが、リスクに関連する項目に「月の遊技負け額が多い」「現在の借金」があるのであれば、初級者と上級者の差を埋める営業方法等や、遊技障害に陥らせない為に初級者をスキルアップさせる営業が必要であると考察する。
- 定量制打ち止め台の抽選開放
- 高設定台の抽選開放
- 営業の2部制(10:00~16:00 18:00~23:00など)を実施すれば、朝から遊技する遊技者の大きいアドバンテージを緩和できる。(持ち玉比率が下がるので長時間営業よりもベースが上げられる。)
- 初級者では高期待値台の見極めが難しい為、明確な出玉イベントの復活も有効ではないか。
- 朝一入場抽選時に抽選料を徴収する事や朝一入場時に入場料を徴収する事により、無徴収より割数を上げられる。
遊技者間格差を埋める機種作り
パチンコでは上級者と初級者の決定的な差となる釘の見方、即ち、遊技以前で決定される収支差を無くす為に全てのパチンコに設定機能をつける。
古い機種になるが、ユニバーサルの「ギガ」「ジェネシス」の様に命釘無しの電動チューリップ付きチャッカーで、釘調整では無くプログラミングで設定された回転率を維持し、制御するような機種が良いと考察する。
設定付き遊技機では高設定確定演出等の設定推測する判断要素を遊技者側に事前に告知し、継続すべきか止めるべきかの判断をユーザー側に促す。
しかし、パチンコやパチスロは如何にお金を使わずに出玉を得られるのかのゲームであるが故、全ての遊技者が上級者になるとアウト(打ち込み)が著しく減少し、店側の売上が著しく減少する。減少を抑止するには遊技機基準の見直しが必要である。
パチンコやパチスロの限定免許制
以前に私が指導していた者には技術介入要素の知識を正確に認識している者は存在しなかった。然すれば、免許制を導入し、高貸しでの遊技を試験合格で可能とすれば、不合格者は低貸し限定になり、リスクのある人はスクリーニングされて排除される。
パチンコ業界の社会貢献
社会貢献としては、現在は小学校のプログラミングの履修で論理的思考を養うが、その題材として簡単なパチスロのプログラミングで確率論(期待値、独立試行、大数の法則)を学んでも論理的な思考を育成でき、確率論を認識できる。
制御された遊技が期待値等の確率論を明確に認識しているのであれば、それは遊技障害(ギャンブル依存症)の予防に役立つ。遊技機メーカーからの積極的な支援があれば将来の人材を確保できる可能性もある。
パチンコ業界の社会的責任
業界の方々に認識して頂きたいのは、遊技機の知識や遊技の定石を正確に認識しない者に対して、その知識を教えずにギャンブル依存症と決めつけ、遊技機の射幸性や射幸心を煽る営業の責任にされている現状がある。これは精神医療の利権であり倫理的な問題である。
また、公的医療保険の適用で増え続ける医療費を圧迫し、遊技の意味を加味しない医療側からだけの偏った視点での研究や、効果に疑問符のつく非業界団体の依存症アドバイザー育成への助成、依存症団体に対しての税制優遇や業務委託があり、そのギャンブル依存症ビジネスに税金が使用され日本国民は非常に迷惑している。
パチンコ業界は遊技として娯楽を提供している筈であり、遊技によって苦痛を与え遊技障害が発生しているのであれば、当事者が実害を被ってから排除するのでは無く、事前に試験でスクリーニングすれば遊技障害も発生しない。
免許制で遊技障害を事前に防止し、一刻も早く、倫理的な問題の解消し、依存症対策で使用されている無駄な税金の使用を抑止する事が業界の社会的責任であると確信している。
*2020年10月16日加筆(段落「遊技者間格差」に加筆しました。)
*2022年11月8日加筆(リストを修正しました。)
(*1)参照・引用元・パチンコ・パチスロ遊技障害研究成果中間報告書 - 公益財団法人日工組社会安全研究財団
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