ギャンブル依存症とは


ギャンブル依存症の定義

「持続し反復する問題賭博行動によって臨床的に意味のある機能障害や苦痛が生じている状態」また「貧困になる、家族関係が損なわれる、個人的な生活が崩壊するなどの、不利な社会的結果を招くにもかかわらず、持続的に繰り返され、しばしば増強する賭博行為」を本質的な特徴とする。 (*1)


強迫的ギャンブルの定義

GA(ギャンブラーズ・アノニマス)の説明では『進行性で不可逆的な病気であり、ギャンブル依存は完治する事は無い。』というものです。また、『強迫的ギャンブルは重症であり、簡単なプログラムに従えば、進行を止めて回復できる。』とあります。(*2)


この二つのギャンブル依存症の定義には、ギャンブルの根幹を成す重要点である『確率論』についての言及が全くありません。また、強迫的ギャンブルにおいても、調査結果から進行的で不可逆的ではない事が証明されております。

私はギャンブルの根幹である確率論に言及しない、強迫的ギャンブルなどの『ギャンブル依存症の定義』は間違いであり、医療関係者やカウンセラーや当事者などが、強迫的ギャンブルなどのステレオタイプ化された『ギャンブル依存症の定義』に囚われ、負のループを構築させているのではないか、と考えます。

ギャンブル依存症のフロー

言い換えれば、俯瞰してギャンブル依存を捉えられていないから、カジノとパチンコの違いも理解せずに『ギャンブル依存症の定義』に囚われ、医療側に重点を置きすぎています。

そこで、今回は『ギャンブル依存症(日本でメインとなるパチンコやパチスロ)の実態を明らかにして依存症を0にしよう』というエントリーです。最近のエントリーのまとめです。



パチンコやパチスロとカジノの質の違い


パチンコやパチスロとカジノの質の違い

カジノは、ほぼ全ての勝負において、期待値がマイナスであり、期待値がプラスになる勝負の判別ができません。対して、パチンコやスロットは、期待値がプラスの確実に勝てる台が存在します。機種によりますが、ボーダー理論や設定判別などの難しくない知識があれば、勝てる台と負ける台の判別ができます。(*3)


カジノはほぼ全てのゲームで「試行回数を重ねる程」トータルで負けますが、パチンコやパチスロは台毎の店側の設定によって、1日単位で「試行回数を重ねる程」勝てる台と「試行回数を重ねる程」負ける台が明確に分かれています。



進行的で不可逆的では無い調査結果


厚生労働省の2017年のギャンブル依存症の調査で、約320万人(3.6%)が生涯でパチンコや公営競技等の、ギャンブル依存症が疑われる状態になった事があるとする調査結果を発表しました。直近1年以内ではギャンブル依存症が疑われた人は約70万人(0.8%=約22%)です。つまり、ギャンブル依存症が疑われても約250万人(2.8%=約77%)は回復しています。(*4)


この約250万人(2.8%=約77%)という回復率の数字は、90年台のインターネット発達以前のギャンブルに対しての情報の共有が進んでいない時代であれば、「数字がおかしい」と疑義の念を抱きますが、日本で主軸となるパチンコやパチスロに対しての勝つ為の情報が、インターネット発達後の情報の共有が急速に進んだ現代では、十分にあり得る数字です。


ギャンブル等各依存問題に関するこれまでの調査
出典・ギャンブル等依存 約250万人は自然回復か|Amusement Japan



ギャンブル依存症の診断

現在のギャンブル依存症の診断のベースは、アメリカ精神医学会のDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)やアメリカ・サウスオークス財団 のSOGS(サウスオークス・ギャンブリング・スクリーン)等ですが、これらにはギャンブルの根幹を成す確率論に対しての項目がありません。

パチンコやパチスロとカジノではギャンブルの質が違います。パチンコやパチスロがメインの日本での運用であれば、日工組社会安全研究財団・パチンコ・パチスロ遊技障害研究会の『パチンコ・パチスロ遊技障害尺度(PPDS)』(*5)も選択肢の一つではないでしょうか。


ギャンブルは他の依存症と違い、その行為であるギャンブル自体を遊技しただけでは全ての目的は達成されず、最終目的である勝負に勝利しなければいけません。その、ギャンブルの中でもパチンコにおいては、その勝負に勝利する為の「勝負を行うか否か?」の感情的なスイッチのONとOFFの切り替えの判断となる指標を、論理的に明確に数値化できます。そこが、セルフコントロールする為のキーポイントです。(*3)




パチンコやパチスロが『遊技』である理由

パチンコやパチスロが『ギャンブル』ではなく『遊技』に分類される理由は、ギャンブル以前にゲームであり、ゲームであれば、テクニック(技術介入要素)によってハイスコア(お金を得る)を目指せるからです。

しかし、『ギャンブル依存症の定義』では、ハイスコア(お金を得る)を目指す為の根幹となり、セルフコントロールする為のキーポイントである、確率論(独立試行や期待値)の知識の有無についての言及が全くありません。キーポイントとなる確率論の知識を有しての「ギャンブル依存症」であれば納得できますが、そうではありません。


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ギャンブル依存症と認知の歪み

ギャンブルに至るまでの要因は多様ですが、「勝って儲けて満足する」という明確な目的があります。また、先述のとおり、勝ち負けの理屈が明確です。ギャンブル依存のギャンブルは、ギャンブル以前にゲームという概念が完全に欠落しています。

そのゲームの定石の基となる知識、確率論(独立試行・期待値)の認識不足を要因とする認知の歪みが依存の最大要因です。ちなみに、私がレクチャーした人達の中で正確な知識を有している人は0でした。

自己治療仮説もありますが、「苦痛」を取り除く為に放縦にギャンブルを行なって、更に「苦痛」を増やすのであれば、ギャンブルをセルフコントロールする為の知識を得て、ギャンブルでの「苦痛」を「解消」にすれば良いのです。

その時のギャンブルに至るまでの「苦痛」を取り除く事は大事ですが、また、別の「苦痛」でギャンブルに至れば問題は解決しません。



ギャンブルの確率論に対しての認知の歪み


認知の歪みとは

その個人に現実を不正確に認識させ、ネガティブな思考や感情を再強化させうるとされている(*6)

  1. 感情だけで理由をつけて大当たりが続くかどうかを読む(感情の理由づけ)
  2. パチンコやパチスロのプログラムが確率論に基づいて設計されている事を、感情の理由づけや論理的では無いネットの情報を理由に信用できない。(感情の理由づけ)
  3. たった一度の出る出ないの読みが当たっただけで決めつける(行き過ぎた一般化)
  4. 大当たりの間隔などでパターン化(レッテル貼り)
  5. 理論上もっと勝てる台にも関わらずレッテル貼りしたパターンで負けると予測してやめてしまう。(心のフィルター)
  6. やらなきゃ(金を)取り返せない(感情の理由づけ)
  7. パチンコでボーダーを1回でも超えていたら毎回1万円以上2、3万は勝てる。(実際は勝てない)(感情の理由づけ)


私がパチンコやパチスロの仕組み(独立試行や期待値などの確率論など)や、勝ち方をレクチャーしていた、1995年ぐらいと2010~2012年代の当事者(相手)のパチンコやパチスロに関しての考え方です。15年以上を経過しても負けている人たちの思考パターンや言説は一緒でした。あれから10年程経過した現在でも変わらないのではないでしょうか。

また、確率論で容易に負けを取り返せない事が判っても、依存症者はその事実を否認して、リラプス・スリップ(放縦な遊技)する事もあります。リラプス(スリップ)する人は認知の歪み(重度?)があり、目の前の現実だけが全てになり、感情の理由づけで中々確率論を信用できません。


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ギャンブル依存症とパーソナリティー障害

こちらもその当時の当事者(相手)の言葉です。


本当は期待値マイナスの台でも勝てる方法があるんだろうけど、自分が儲からなくなるような情報は人には教えない。

これは自分の思考と周りが同じ思考をしているという「行き過ぎた一般化」に当たります。そして、絶対に不可能な「期待値マイナスの台で勝つ方法を教えろ。本当はあるんだろ?」と、「非現実的な要求」を当事者ほぼ全員に迫られました。


期待値などは関係無い!何としてでも負け(金)を取り返そう!

「期待値マイナスの台では勝てない」という事実が存在するのに、「期待値などは関係無く絶対に取り返す」と、負けている自己を受け入れられないのは「否認」です。


他人が勝っている(自分より秀でる)のを見る事に不快感を感じる。(なんで俺が負けているんだ)

他人の成功を妬むのは「羨望」です。他人が自分より勝っているのを受け入れられずに、「あの台が出る。(実際には出ない)」と嘘をつき、他人の価値を下げる行為を行うなどをした当事者もいました。


バレなければ何をやってもいい

これは私が直感的に聞いたのですが、ほぼ全員にこういった傾向がありました。他人の出玉を窃盗したり、タバコなどでキープしてある他人の台を横取りしたり等の、「バレなければ何をやってもいい」という利己的な行為は、反社会性パーソナリティー障害や自己愛性パーソナリティー障害ではないだろうか。


(パチンコ店員に対して)もっと釘を開けろ!高設定を使え!いくら使ってると思ってんだ!こんなんじゃ勝てないだろ!

これはリラプス・スリップ(放縦な遊技)をした人が、パチンコの確率論に対する認知の歪みが解消された時の発言です。この奢り昂った高慢で他責な態度も自己愛性パーソナリティー障害ではないだろうか。


もっと簡単にやって短時間でパッと儲からないのかよ!

これはパーソナリティー障害ではないが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)ではないだろうか。また、認知の歪みが中々解消されない方は「考えるのが面倒くさい」という共通項がありました。これもまた、ADHD(注意欠陥・多動性障害)ではないだろうか。


*2019年12月18日加筆

私がレクチャーした中で数人程、借金を正当化して、パチンコやスロットをやっていた人がいましたが、全員が自己愛性パーソナリティー障害でした。この事からサンプルは少ないですが、ギャンブル依存度と自己愛の成熟度は負の相関ではないだろうか。

また、隠れてギャンブルをして負けている自分を隠す事(誇張)や嘘をつくのも、自己愛性パーソナリティー障害であり、他者軽視な部分や感情のみの思考パターンは仮想的有能感(*7)ではないだろうか。

数人程のセルフコントロールを中々できなかった人の私の所感です。手軽に「ハンドルを握ってるだけ」「ボタンを押してるだけ」で「優越感」や「達成感」を感じられるパチンコやパチスロをやっている。

  1. 「優越感」や「達成感」などを生活の中で感じるポイントが少ない。
  2. 「努力」や「忍耐」が苦手。
  3. 「遵法精神」が低い。
  4. 「情報量」が少ない。インターネット時代でも情報取得に偏りがある。

*2019年12月9日加筆

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ギャンブル依存症と自尊心


自尊心とは

自尊心とは、他人からの評価ではなく、自分が自分をどう思うか、感じるかである(*8)

自尊心の欠如はセルフコントロールを失う事もあり、依存症の原因となる事もあります。また、自尊心が過剰になると不誠実な行いや勝負に敗れた事も否認します。この結果を他責にする事もあります。発達障害者は自尊心が低くなりやすいという指摘もあります。(*8)

然すれば、発達障害の「自尊心の低さ」や「認知の歪み」は、ギャンブル依存との親和性が高いのではないでしょうか。(*8)



ギャンブル依存に陥る

ギャンブル依存には確率論(独立試行・期待値)の認識不足を要因とする認知の歪みがあり、自己愛の未成熟さや、発達障害的な拘りや衝動性、認知の歪みによる思考がギャンブル依存を加速させています。

また、確率論に対する認知の歪みがギャンブルへの興味を持続させ、ギャンブルに対しての消費速度を鈍化させる。然すれば、ギャンブルに対しての認知の歪みを解消して、消費速度を加速させれば、ギャンブルへの興味はコントロールされたものとなります。

逆説的に言えば、自己愛が成熟している人や認知の歪みが無い人は、一時のギャンブルに熱中しても、オペラント条件付けの正の弱化(勝てないでお金が減る)で依存状態に至らないと考えます。


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ギャンブル依存症からの回復への提案

ギャンブル依存に「未成熟な自己愛」や「否認」、「自尊心の低さ」や「認知の歪み」があるのであれば、医療側で「未成熟な自己愛」や「否認」、「自尊心の低さ」を精神療法や薬物療法で治療し、ギャンブルに対しての興味を持続させる「認知の歪み」は、確率論を用いた論理的な認知行動療法で解消します。

確率論を用いた論理的な認知行動療法は、ギャンブルに対しての思考(認知の歪み)の底つきを早める、もしくは底上げをするものです。また、ギャンブルで重大な問題が生じるのを避ける効果もあります。

実際に、パチンコやパチスロを確率論に基づいた立ち回りで遊技するのが非常に効果的です。負けている現実を受け入れる精神医療的治療と、負けを減らし、論理的に負けを受け入れられる証明を自ら行う認知行動療法は、いわば、ハームリダクション ・ギャンブルと言っても過言ではありません。

ハームリダクション・ギャンブル

ハームリダクション・ギャンブル(パチンコ・パチスロ)のメリット
  1. 「負けが減る」
  2. 「勝ちが増える」
  3. 「勝てる台が少ない事を論理的に理解して徐々に遊技機会が減る」
  4. 「セルフコントロールされた趣味としてのギャンブルになる」
  5. 「渇望感などの離脱症状を緩和できる」

私は「ギャンブル依存症からの回復」ではなく、「パチンコやパチスロで勝てない人に仕組みと勝ち方」をレクチャーしていましたが、中には、確率論に対しての「認知の歪み」が中々解消できずにリラプス・スリップ(放縦な遊技)する人もいました。

しかし、確率論の認識の無いリラプス(スリップ)と、確率論の認識の有るリラプス(スリップ)では有意義さに顕著な差があり、確率論の認識によって「認知の歪み」が解消してからのリラプス・スリップ(放縦な遊技)は0です。確率論の認識が無ければ、リラプス(スリップ)が反復するのは容易に想像ができます。

また、パチンコで理論上勝てる台が無かった時に、どうしてもパチンコをやりたくなったら、即効性のある投薬などの精神医療的なアプローチで、衝動を抑える選択肢も有り得ます。

セルフコントロールができていれば、ギャンブルを止める必要はなく、「絶対に止めなければならない」という「12ステップ」や「強迫的ギャンブル」には疑問符をつけざるを得ません。その方法は下のリンクにまとめてあります。


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ギャンブル依存症は作られた病(やまい)

日々の生活での経験則から、生きていく為に不要な認知の歪みが解消されるのであれば、元々、認知の歪みがある人でも、知識である確率論により、パチンコやパチスロへの認知の歪みが解消されるはずである。パチンコやパチスロで定石の基となる知識、確率論を無視した「ギャンブル依存症」は作られた病(やまい)なのではないだろうか。



(*1)引用元・ギャンブル依存症 - Wikipedia
(*2)参照元・強迫的ギャンブルとGA - GA日本ホームページ
(*3)引用・参照元・ギャンブル依存症の確率論に対する認知の歪み
(*4)引用元・ギャンブル依存症と併存障害
(*5)参照元・パチンコ・パチスロ遊技障害尺度(PPDS) | 公益財団法人 日工組社会安全研究財団
(*6)引用元・認知の歪み | Wikipedia
(*7)参照元・「他人を見下す若者」の増加と、家庭教育でできること |名古屋大学大学院教育学研究科教授・ 速水敏彦氏 | Benesse
(*8)引用元・自尊心 | Wikipedia