公益法人代表としての資質
昨今、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(以下、同会)田中紀子氏は、明確なエビデンス無しに新型コロナに乗じて、新型コロナ流行時にパチンコを遊技するのはギャンブル依存症などとこじつけ、また、政権批判を行う等などのイデオロギー的で極端な発言が目につく。
そこで本稿では、田中氏の「公益法人の代表としての発言は適切なのか」を検証する。
思想・良心の自由の保証
田中氏には日本国憲法第十九条により、思想・良心の自由が保証されている。これは表現の自由や言論の自由に繋がる自由権である。私は田中氏の自由権を侵害する考えは全く無い。
日本国憲法
第十九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。(*1)
公益法人の各機関の役割と責任
下記の表は、内閣府が作成した「公益法人の各機関の役割と責任」における「公益法人のガバナンスにおける留意事項」と公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(法人コードA024871)の法人基本情報である。
法人基本情報
公益目的事業を「ギャンブル依存症に係る啓発・情報提供事業」並びに「ギャンブル依存症に係る予防教育事業」を行いもって社会に貢献する (*2)
出典・国/都道府県公式公益法人行政総合情報サイト 公益法人information
田中氏のツイッターアカウントのプロフィールには、「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表田中紀子」と記載されているので、ギャンブルに関わるツイートや記事は全て「ギャンブル依存症に係る啓発・情報提供事業」や「ギャンブル依存症に係る予防教育事業」の一環である。
その他のツイートや記事など、事前に個人的意見と断りを入れたとしても、「公益法人代表田中紀子」の意見である。
公益法人のガバナンスにおける留意事項
2020年12月の、公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議における「公益法人のガバナンスの更なる強化等のために - 最終とりまとめ」では、 下記のように結論づけている。
「公益法人は、税制上の優遇措置や国民からの寄附を受け、不特定かつ多数の人々の利益のために公益目的事業を実施する存在であり、社会的な信頼確保が特に重要である。そのため、各法人が自らの活動について国民全体に向けて積極的に説明や情報開示を行うことで透明性を確保することや、「公益法人としてのガバナンス」を確保することが求められている」(*3)
また、公益法人のガバナンスにおける留意事項には、公益法人は税制優遇を受けて活動する法人であり、国民の信頼を確保されるよう務める義務があると記載されている。
出典・公益法人の各機関の役割と責任 - 内閣府
公益法人のガバナンスにおける留意事項
国民の信頼あっての公益法人
公益法人についても、ガバナンスに関するルールは主に一般法人法に定められており、基本的には一般法人と共通です。しかし、公益法人は税制優遇を受けて活動する法人であり、国民の信頼なくしては成り立ちません。このことについて、役員等の関係者が自覚を持っていただくことが重要です。(*4)
公益法人の公益目的事業は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければなりません。(*4)
理事・監事には、事業・財産管理の義務や責任がある理事や監事は、報酬の有無にかかわらず、公益法人に対する国民の信頼が確保されるよう、事業や財産の管理を適切に行う必要があります。これは法律上の義務でもあり、これを怠ったことにより法人に損害が発生した場合には、損害賠償などの責任を問われることになります。(*4)
ギャンブル依存症の誇大表現や捏造
ギャンブル依存症推計320万人と出た時、パチンコ業界は「そんなにいない!」と猛反発してたけど、これだけ言われても自制できない人がこんなに多いとなると、やはり依存症者が相当数いるんだろうな。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) April 22, 2020
ストレス過多で、再発した人も多いだろう。
田中氏は、上記ツイートでギャンブル依存症は相当数が存在しているとしているが、直近の横浜市都市整備局(令和2年3月23日)の「横浜市民に対する娯楽と生活習慣に関する調査」では、過去1年以内でギャンブル依存症が疑われる者の推計値が0.5%であり、生涯ではギャンブル依存症の疑われる者の推計値が2.2%だった。
これは、厚生労働省の2017年のギャンブル依存症の調査(直近1年以内疑い約0.8%生涯疑い約3.6%)よりも、やや低い数値である。あくまでもスクリーニングテストであり「ギャンブル依存症推計320万人」は「疑い」であるにも関わらず、田中氏は公益法人の代表でありながら「ギャンブル依存症推計320万人」と「断定」し、エビデンスに基づかない発言をしている。
また、調査に使用されたスクリーニングテストであるSOGSのカットオフ値は過剰診断の問題点が指摘されており、5点以上では無く、7~8点以上が適切である点にも留意が必要である。
全世界にデマを拡散
こちらの動画では、全世界に対して「日本では320万人以上の人がギャンブル依存症と闘っている」とデマを拡散している。
海外メディア(チャンネル登録者数270万人)の取材に対して2017年の調査で、あくまで「生涯でギャンブル依存症が疑われる者の推計値が約320万人」と発表されているものを、「320万人がギャンブル依存症と闘っている」という誤った認識を世界に向け発信している。これは日本人への「スティグマ」そのものであり、なぜ、日本人であり公益法人代表である田中氏が慰安婦問題のような手法を用いるのだろうか。
and as a result, over 3.2 million people in japan are fighting against their gambling addiction.
NHKクローズアップ現代(2022/12/14)でのデマ
NHKクローズアップ現代「やめたくてもやめられない。広がるオンラインカジノの闇」に出演した田中氏は、2017年の久里浜医療センター調査結果の数値である「ギャンブル依存症320万人が罹患」(*5)と発言したが、この調査で使用されたスクリーニングテストである「SOGS」は、あくまでも診断基準を満たす可能性がある者を選別するものであり、診断基準を満たした罹患者を選別するものでは無い。
「あくまで疑い」なのだが「罹患」と意図的に表記
2017年9月厚生労働省より、「ギャンブル依存症生涯罹患率推計:成人人口の3.6%およそ320万人」、「直近1年のギャンブル依存症罹患率0.8%およそ70万人」と推計が出された。 (*6)
過去にも、あくまでも「ギャンブル依存症疑いの推計」なのだが「ギャンブル依存症罹患率」と意図的に歪曲して問題を誇大化するツイートをしている。
そもそも日本のギャンブル依存症というのは、殆どがパチンコ依存症なんだよなぁ。公営競技だけだったら、日本の罹患率はこんなに高くないんだよね。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) December 8, 2016
だから問題は、こんなにバカスカとパチンコ店を許可したことにある。パチンコも開店場所とかもっと規制強化して欲しい。
ブログ投稿しました: 厚労省発表ギャンブル依存症罹患率についてです https://t.co/xSpGaKPjy2 本日、厚労省が行っているギャンブル依存症の疫学調査(中間とりまとめ)が発表されました。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) March 31, 2017
これは来年 ギャンブル依存
はい、一般の人から見ると区別がつかないですよね。つまり以前はスクリーニングテストだけで罹患率を出していたんですけど、その時は推計人数4.8% 536万人と出てたんですね。その数字には、このレベルの人も入ってしまいます。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) August 29, 2018
今はスクリーニングと面接をあわせて3.6% 320万人と推計されています。
また、時事に乗じているだけでの下記のツイートなどは、癌とギャンブル依存症とパチンコ自粛にはどのような関係があるのだろうか。
癌の既往症を抱えた、ギャンブル依存症者の妻や母は仲間にもたくさんいる。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) April 23, 2020
お願いだからパチンコ自粛してほしい‼️
お願いします‼️
《続報》愛妻逝く、大和田獏「悔しくて」 https://t.co/x6G1cCB8hm
無根拠なギャンブル依存症の断定
下記ツイートについても田中氏は報道を見ただけであり調査等は全くしていない。情緒的な判断だけでギャンブル依存症と断言している。
その通り、このご時世にパチンコに行っている人は、既に依存症かその予備軍。自分の意志の力で止める事はまず無理
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) April 2, 2020
玉川徹氏、専門家会議の提言に「いまだにパチンコ屋、飲みに行っている人たちに考えを変えてくださいって言っても無理」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース https://t.co/OTA9qRQWTk
この非常事態宣言下に開店しているパチンコ店にはるばるやって来て「俺は、依存症じゃない!ヒマなだけだ!」と言いはる人がいたら、その人はほぼパチンコ依存症とみて間違いない。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) April 25, 2020
「使途の一つがギャンブル」と記述さえしてあれば、全てをギャンブル依存症に結びつけ 、著書でも「使途の一つがギャンブル」の事件のリストをまとめている。田中氏は精神科医でもカウンセラーでもない。どのようなエビデンスで「ギャンブル依存症」と断定したのだろうか。
これはご家族も大変な目にあっているはず。力になりたい。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) October 11, 2019
ギャンブル依存症は、依存症の中で最も周囲に迷惑をかけていると思う。
10年間で「6億円超」を着服か…電子機器メーカーの元社員を逮捕『ギャンブルや生活費に…』と容疑認める(関西テレビ) - Yahoo!ニュース https://t.co/nucfzAChmm
使途はギャンブルなど。他の記事ではFXとギャンブルとのこと。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) October 12, 2019
ここの所大型横領事件が続いているが、今の様な生ぬるいギャンブル依存症対策では、カジノができたら益々この手の犯罪は増えるだろう。
池田泉州銀行の行員 2億円余りを着服 大阪 | NHKニュース https://t.co/3wec5vfLze
下記の5月9日のツイートなどは、ソーシャルディスタンスを確保してパチンコ店に並んでいる人達を写した写真をコメント付きでリツイートしてるのだが、この大勢の人達に対して精神疾患であるギャンブル依存症と断定するのは人格攻撃に当たり、名誉毀損の可能性がある。
この国のギャンブル依存症者がいかに多いか、はじめて可視化された。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) May 9, 2020
よく訓練された依存症たち | 1分で感動 https://t.co/k4yjpEKbCk
被疑者がギャンブル依存症と判明していない事件や報道を全てギャンブル依存症だと断定するのは、ギャンブル依存症者は犯罪者であるという「スティグマ」を強める行為であり、ギャンブル依存症の誤解や偏見を撒き散らす行為である。
当事者の病状を診断する行為は、医師法第17条では医師による医学的判断と解釈されており、無資格である田中氏の一連のツイートは医師法第17条違反の可能性がある。(*7)
「タフラブ」の懸念事項
田中氏は、アイドルグループ「神宿」とのコラボやアニメなどを作成して「タフラブ」を国民に広く啓発している。また、田中氏は「タフラブ」を次のように説明している。
タフラブを我々は「自立した愛の形」と名付けていますが、つまりは 依存症者がやらかした問題を周囲の人は、尻拭いや肩代わりをせずに、本人の問題は、本人に責任をまっとうしてもらう! (*8)
底つき体験
底つき体験とは依存状態に陥って社会生活において重大な支障をきたした時に、本人がその深刻な状態を認識して、その状態から脱しようと依存症と向き合う事である。
タフラブは近親者が援助などをせずに社会生活において支障をきたして、依存症と向き合うまでの「見守る愛」であり、その落ちる所が無い迄にどん底に落ちた「底つき体験」を通して当事者本人を回復に向かわせようとする施策だが、一つの疑問が湧く。当事者が底つきしなかった場合はどうなるのか。
借金ができなくなって高金利の闇金に手を出しても、仕事を解雇されても、犯罪を犯しても、病院などでカウンセリングや治療を受けても、底つきしなかった場合にもたらされるのは「死」ではないのだろうか。(*9)
これを依存症や当事者への対応についての知識の無い近親者が動画などに啓発されて安易に「タフラブ」を貫き通してしまった結果、死に至る。という懸念も生じる。田中氏は精神医療の知識の無い一般の素人に周知する危険性を認識しているのだろうか。
当事者の自殺
また、当事者の自殺が多いという事とタフラブという手法には関連があるのではないかという疑念も湧く。
話は逸脱するが、当事者に自殺が多いと認識しているという事は精神科を受診後に自殺しているのではないか。私が知る限り(10人ぐらい?)、依存症で精神科を受診し、いわゆる「衝動を抑える薬」を処方され服用すると、間違いなく全員が「だんだん生きていてもしょうがないと思い始める」と言い、自殺念慮を覚えたり、その中の数人は自殺企図もしている。因果はあるのだろうか。
タフラブというのは、依存症界では常識ですが、日本では一般の人にはあまり知られておらず、これが依存症問題を長引かせてしまう一つの原因になっています。(*8)
閑話休題。依存状態に陥るのは個々人において様々な背景要因があり、行き過ぎた「タフラブ」にもたらされるのが「死」であれば、「依存症界ではタフラブは常識」とレッテルを貼りスレテオタイプ化するのではなく、個々人において対応を変えるのが最適解である。そういった啓発が必要である。
仮に、当事者の近親者が、田中氏の「タフラブ」啓発で「タフラブ」を知り、素人知識の行き過ぎた「見守る愛」で当事者が死に至った場合に田中氏はどのように責任を取るのだろうか。
ギャンブル依存症自己診断ツール「LOST」の懸念
ギャンブル依存症自己診断ツール「LOST」とは、ギャンブル依存症の早期発見、治療の為のセルフチェック式の4問のみの簡易テストである。開発に至った経緯は、現時点で使われるスクリーニングテスト「SOGS」「DSM-5」「20の質問」では下記の欠点がありその欠点を補う為に開発した、と田中氏は述べている。
「算出方法が面倒」「質問数が多すぎる」「ギャンブル依存症者の対照群が一般人となっているため過剰診断になりがち」などという欠点があり、一般に広く用いられるには至っていなかった。そのためギャンブル依存症の予防教育や、早期発見、早期診断が実現せず、重症化してやっと家族が相談に訪れるという具合であった。(*6)
早期発見や早期診断の問題点
LImitless
1.ギャンブルをする時には予算や時間の制限を決めない、決めても守れないOnce again
2.ギャンブルに勝った時に「次のギャンブルに使おう」と考えるSecret
3.ギャンブルをした事を誰かに隠すTake money back
4.ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う。(*6)
この4つの質問に自分の1年以内のギャンブル経験が2つ以上あてはまったら、あなたはもうギャンブル愛好家ではなく、ギャンブル依存症に罹患している可能性がある。早めに相談機関を訪れることをお勧めする。(*6)
上記のように早期発見や早期予防を掲げているが、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)では、予防的、早期介入を促す「精神病リスク症候群(弱性精神病症候群)」の診断カテゴリーを導入する提案があったのだが、米国心理学会やDSM-IV作成委員長のデューク大学名誉教授アレン・フランシス氏が強く反対して提案は破棄された。
その理由として、精神科医・大野裕氏(**1*)によるアレン・フランセス氏へのインタビューにおいて、このように回答している。
精神病になると言われていた10人中9人が精神病にそうならないのです。精神疾患の予防法として立証されたものはありません。(*10)
- (**1*)国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター所長を経て現在は顧問。皇后陛下・雅子さまの主治医
「LOST」の信憑性
Q1.ギャンブルをする時には予算や時間の制限を決めない、決めても守れない
A.当てはまる
論理的に勝てる(期待値がプラス)台であれば予算や時間を決めずにやる。反対に論理的に負けると判断したときは立ち回りを変える。また、パチンコ屋は基本的には13時間営業が多いので、元々の時間制限はある。諏訪東京理科大学篠原菊紀教授のツイートを参照すると、健全遊技でも当てはまってしまうのではないか。
全国調査で年金層で依存疑いが有意に高い、ということはありません。年金層は低貸が多く、時間当たりの平均負け額350円程度、甘海が多く、年金の内々で無理なく遊んでいます。勝ちは目的とせず遊びとして健全に遊んでいます。むしろ勝ちを目的とするという認知の歪みが依存疑いとかかわります。 https://t.co/OMdzZ96LJX
— はげひげ (@96hage) December 17, 2018
Q2.ギャンブルに勝った時に「次のギャンブルに使おう」と考える
A.当てはまる
勝てていれば軍資金になる。諏訪東京理科大学篠原菊紀教授もこのようにツイートしている。
実際、パチンコ・パチスロでの一時間当たりの平均損失額は300~1300円程度で、パチンコ・パチスロのみで大きな借金を抱えることは難しい。パチンコ・パチスロの借金のための債務整理に至るには、勝ち分を負けの補填に使わず負け額が積算されていく、借金の金利が膨らむなど別な経緯が必要と考えられる
— はげひげ (@96hage) May 10, 2020
Q3.ギャンブルをした事を誰かに隠す
A.当てはまる
重要な面接や面談等で「ギャンブルやりますか?」と聞かれたら「やりません」と答えるかもしれない。また、知人や交際相手の親族等が、ギャンブル嫌いなら隠す事もある。
Q4.ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う。
A.当てはまらない
パチンコ、スロットを始めた知識の無い頃でも、「すぐに」取り返したいとはあまり考えない。「すぐに」と考えても、夜中にパチンコ屋は開いていない。
上記は「LOST」で診断した結果である。4問中3問が当てはまるが全く問題の無いギャンブル依存症となった。仮にこの結果を基に誤診の多いという精神科などを受診して、偶然にも利益のみを追求する精神科医に当たれば、故意に処方薬依存に陥らせる事をしたり、投薬等による自殺企図や自殺願望等を持つ事を考慮しない治療をすぐに始める可能性がある。
また、未だにあるのかは不明だが多剤大量処方で普通の生活が送れなくなる事も否定できない。受診する側からすると医師が誠実かどうかを判断する指標が無く受診もギャンブルになってしまう。田中氏はこのような問題点をどのように考えているのだろうか。
全ての精神科医が誠実であれば心配はいらないが、「LOST」で手軽で簡単にセルフチェック、診断できるという事は、安易にギャンブル依存症などの診断を下される可能性を否定できない。また、ギャンブル依存症というレッテル貼りによる差別や本人の心理的負担もあるのではないか。
そして、意図的に患者数を増加させようと目論み、国内の世論を誘導する為に利用するのではないか、という疑惑が生じてくる。
他者への批判
発信力のある田中氏は公益法人の代表でありながら法人や個人を名指しで批判している。株式公開している「楽天」への「人の不安につけ込んで商売するって信じがたい暴挙」という批判は、それによって株価が変動する可能性を否定できない。株価が変動するという事は「特定の者の利益になり特定の者の不利益になる」。
楽天はこんな時代に人の不安につけ込んで商売するって信じがたい暴挙。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) April 22, 2020
個人でのPCR検査キットの使用は控えましょう(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース https://t.co/4CwBOgbyDt
楽天もパチンコも今まで散々儲けてるんだから、この緊急事態にまでガツガツして、社会にこれ以上余計な心配を増やさないで欲しい。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) April 22, 2020
日銭商売の小さな商店だって、子供達だって、人命優先、医療崩壊を防ぐために協力してるんだよ。
独善的なツイート
下記のツイートは、元KAT-TUNの田口淳之介氏が厚生労働省麻薬取締部に大麻取締法違反で逮捕された時のツイートである。すぐに保釈されたが、どのような状況なのかも不明瞭である田口氏に対して、田中氏の「我々依存症界にとって迷惑」というツイートは田口氏の精神状態を全く考慮していない。
田口淳之介さん土下座なんて我々依存症界にとって迷惑でしかない。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) June 7, 2019
しかしそれを打合せてやらせたとしたら、担当の弁護士がポンコツだったとしかいいようがない😡😡😡
田中氏の発言は、精神医療に携わる者であり依存症罹患者の自殺率の高さを認識しているにも関わらず、自らの主張を押し通すだけの発言である。ましてや「担当の弁護士がポンコツ」などは名誉毀損の可能性がある。
依存症界という特定の者の利益を求め、田口氏や担当弁護士、ファン等の特定の者の不利益になるツイートを独善的と言わずに何というのだろうか。
田中氏の独善的なツイートを批判した関連エントリー
第三者への損害賠償責任
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には「悪意又は重大な過失があった時には第三者に生じた損害を賠償をする責任を負う」と明記されている。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百十七条
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。(*11)
田中氏はブログエントリーでも、「ソニーミュージックが反社会行為に加担している」や、新型コロナで自粛要請中に営業をしていたパチンコ店法人を名指しで批判している。そもそも、「ソニーミュージックが反社会行為に加担している」は、信用毀損罪や業務妨害罪の可能性がある。
ソニーミュージックさんの方が、よほど反社会的行為に加担してるじゃないですか~。(*12)
要請無視のパチンコ店は大賑わいです。我が家の近所のパチンコ店「オアシス」など、近所の店「プレサス」が開けてるから(*13)
この山口敬之氏に対してのツイートは山口氏自身の人格を攻撃するものであり名誉毀損ではないだろうか。
嘘つきでクソダサい見栄っ張りで卑怯な男。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) October 16, 2020
修理代も払えないなら、アストンマーチンなんか乗るな💢
準強姦逮捕状の「山口敬之」氏、高級外車修理代を踏み倒し訴訟 地裁では敗訴https://t.co/QnA0LNGtkg #デイリー新潮
このような批判や、先述の楽天や田口淳之介氏、山口敬之氏などに対しての、悪意や重大な過失で損害が生じている場合には、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(第百十七条)によって、当該役員である田中氏に第三者に生じた損害賠償責任が発生する。
田中氏の立ち振る舞いは適切なのか
今回列記した、田中氏の対立軸を生み出す批判的なツイートやエビデンスの無い情緒的な言説は、公益法人のガバナンスにおける留意事項に照らし合わせた場合、不特定多数の利益の増進に寄与するとは到底考えられない。これは「特定の者の利益になり特定の者の不利益になる」事になり、国民の信頼を得られない事に繋がる。
特に、反パチンコ派やギャンブル業界から依存症対策経済的支援を求める特定の者の利益にはなるが、パチンコ業界(メーカーには一部上場企業もある)やパチンコユーザー等とギャンブル依存症を無根拠に結びつける表現や誇大な表現は、国民にネガティブなレッテル貼りを促しスティグマを増強し、特定の者の利益を喪失する。
また、同会には厚生労働省や文部科学省から業務委託がなされており、約2千万円の税金が支出されているが、一連の無根拠、誇大ツイートをする田中氏が代表である同会に業務を委託される資格はあるのだろうか。(*14)
国民の信頼の確保
田中氏に批判されている側も納税者であり、その人々から信頼を得られるとは到底思えず、私などの国民の批判は田中氏が代表である同会を信頼していない証左でもある。
そのツイートや言説にエビデンスがあり正当性があるのであれば、同会への国民の信頼を確保する為に明確で合理的な説明をしなければならない。完全無視をするのは自ら公益法人代表としての責務を放棄している。
また、今回指摘した田中氏のツイートや言説は、民法第六百四十四条の善管注意義務に違反にしている可能性がある。この事により同会に損害が生じた場合には役員に対して、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(第百十一条)により損害賠償責任が発生する。
民法
第六百四十四条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。(*15)
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百十一条
理事、監事又は会計監査人(以下この款及び第三百一条第二項第十一号において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、一般社団法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(*11)
全体の奉仕者
公益法人の公益目的事業は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければなりません。また、法人の財産は、役員や職員の私産・私物ではなく、特に公益法人の場合は、税制優遇を受けて形成された、いわば国民から託された財産です。(*4)
公益法人のガバナンスにおける留意事項に明記されている「不特定多数の者」とは、国民全般を指し示しており、また、「法人の財産は税制優遇で形成された国民から託された財産」という事は、国民からの税金で支出されているのと何ら変わりはない。
つまり、公益法人は国民全般の利益増進に寄与する事業、即ち、公益目的事業を国民からの税金で実行する事になる。
公務員 ≒ 公益法人(役員)
この事から公益法人に求められるあり方は公務員とほぼ同じであり、公益法人のガバナンスにおける留意事項「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければなりません。」は、日本国憲法第十五条第二項の「全体の奉仕者であり一部の奉仕者ではない。」とほぼ一致する。
日本国憲法
第十五条
○2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。(*1)
つまり、公務員とほぼ同様の「公益」「公平」「中立」などの公務員倫理の遵守、高い職業倫理が求められる。
しかし、田中氏の下記ツイートからは特定のイデオロギーの者との信頼関係の確保を優先し、それ以外の者との信頼関係の確保を放棄している事が読み取れる。言い方を変えれば、田中氏は代表である公益法人の同会を「私的利用」しているのではないだろうか。
全く同感です。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) November 25, 2019
わかろうとしない匿名の人に無駄な労力使うのは、バカバカしいから敵意むき出しの人は即ミュート。
わかり合える仲間を増やす方がよほど楽しいし励まされるもんね💖
世の中全員に愛されることもなけど、全員に嫌われることもない。仲間は必ずできるしね🍀 https://t.co/49ZhdaE0cl
公益法人代表の政治的批判
公務員には全体の奉仕者として、公平中立に公務に携わる為に、政治的に中立な立場を維持する為の政治的行為の制限がある。(*16)(*17)
政治的行為の制限の一部
- 特定政党の支持・反対
- 公職の選挙で特定候補者の支持・反対
- 特定の内閣の支持・反対
- 国の機関等で決定した政策の妨害
- 多数の人に接し得る場所で政治的目的を有する意見
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律や、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律には、政治活動の制限の規定は無いが、公益性が求められるのであれば、公務員とほぼ同じあり方を求められる。田中氏の政権批判とも取れる下記ツイートやリツイート、記事は、公務員の政治的行為の制限に準じて自主的に制限しなければならないはずである。(*18)
布マスク配ったり、こんなビデオ作ったり、これが我が国の総理とは情けない。
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) April 12, 2020
国会議員と違って、補償もされず生活ができないと不安を抱えている国民がこんなにくつろいでいられるわけない。
国民と乖離している、お坊ちゃんセレブ政権。 https://t.co/KfOXLqHmHy
マスク2枚って、「安倍政権に何を言っても無理だ」と国民を脱力させる作戦かな…?
— 田中紀子 Noriko Tanaka (@kura_sara) April 2, 2020
また、パチンコ関連業界団体に「振り込めばマスコミ等に業界の依存対策貢献を広める」として、寄付を要求していたという証言もある。
聞いた話ですが、いきなり趣意書と振り込み用紙が送られてきて、振り込めばマスコミ等に業界の依存対策貢献を広める、でなければ……的な。 https://t.co/BxosbzT497
— はげひげ (@96hage) September 15, 2017
うーん。田中さんの中では、活動初期に各パチ系団体にイキナリ振込用紙を送りつけて集金しようとしてた過去は無かった事になってるのだろうか。。あの頃、僕は各団体から「アイツは誰だ?」って問合せを受けまくってたのだが
— 木曽崇@「夜遊びの経済学」絶賛発売中! (@takashikiso) September 13, 2017
ロクなもんじゃない! https://t.co/Fpf026UD5c
公益認定等委員会
同会は2018年3月1日から公益社団法人に認定されたが、田中氏の一連の無根拠、誇大ツイートや記事は2020年の5月現在でも確認できる。内閣府の審議会(諮問機関)である公益認定等委員会は7人の委員で構成されているが、公益認定はどのような判断で下されたのだろうか。また、監査は機能しているのだろうか。公益認定取り消しをせずに放置されていた状況を考慮すると、7人の委員にも疑惑の目を向けてしまう。
*2022年12月18日加筆(段落「NHKクローズアップ現代(2022/12/14)でのデマ」を加筆致しました。)
(*1)引用元・日本国憲法 - 電子政府の総合窓口 - e-Gov イーガブ
(*2)引用元・公益法人等の検索(ギャンブルと検索してください) - 国・都道府県公式公益法人行政総合情報サイト - 公益法人information
(*3)引用元・公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議における「公益法人のガバナンスの更なる強化等のために - 最終とりまとめ」
(*4)引用元・公益法人の各機関の役割と責任 - 内閣府
(*5)参照元・NHK | クローズアップ現代 | やめたくてもやめられない広がるオンラインカジノの闇
(*6)参照・引用元・たった4問でわかる!ギャンブル依存症スクリーニングテストLOST誕生 - Japan in-depth
(*7)参照元・「医行為」について - 厚労省
(*8) 参照、引用元・祝!タフラブCD化 NHKみんなのうた「変顔体操」両A面に アゴラ | 田中紀子氏
(*9)参照元・「底付き」は必要なのか - みゃおと鳴いたnet | scrblbug氏
(*10)引用元・精神医療ダークサイド(元読売新聞東京本社医療部・佐藤光展氏著)(p177)
(*11)引用元・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 - 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
(*12)引用元・薬物にハマっている時の足跡を残すことも薬物教育に役立つ証拠 - 田中紀子 - アゴラ
(*13)引用元・新台入れ替えまで!自粛に応じぬパチンコ店に厳しい措置を・・・です
(*14)参照元・公益社団法人・ギャンブル依存症問題を考える会 - 定款・事業報告書・決算報告書
(*14)参照元・公益社団法人・ギャンブル依存症問題を考える会への総支出額 - 政府の事業が検索できるサイトJUDGIT!(ジャジット)
(*15)引用元・民法 - 電子政府の総合窓口 - e-Gov イーガブ
(*16)参照元・政治的行為の制限 - 人事院
(*17)参照元・一般職地方公務員の政治的行為の制限 - 衆議院
(*18)参照元・公益認定と政治活動等の取扱いについて―不認定事例をベースにした報告―公益財団法人公益法人協会 - 専務理事 - 鈴木勝治
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