ギャンブル依存症とかのブログ

確率論に言及しないギャンブル依存症対策や治療に疑問を感じます。
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Colabo問題での仁藤夢乃氏のツイート



一般社団法人Colabo(以下、Colabo)について、東京都に住民監査を請求をした暇空茜氏をColaboは提訴(*1)した。


「Colabo(コラボ)」代表の仁藤夢乃さん(32)が29日、インターネット上で「若年女性に生活保護を不正受給させ、無給で仕事をさせる貧困ビジネスをしている」などと虚偽の記述をされ、社会的信頼を傷つけられたなどとして、都内に住む男性を相手取り、慰謝料など計1100万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。 (*1)

その住民監査では、不適切な点や妥当性に疑義が生じる項目があったと報告され、東京都監査委員は、都福祉保健局へ過払い等があった場合はColaboに返還請求するよう勧告した。

勧告なされた後の、Colabo代表理事である仁藤夢乃氏の上記ツイートに、非常に違和感を感じたので、以前にエントリーした記事、「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏の言説は適切か」を基に意見をする。



地方自治体や官公庁からの業務委託と税制優遇

公益法人とは公益(不特定多数の者の利益)目的事業を行う法人であるが、公益法人による不祥事が多発した為に、その改善策として、公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議における「公益法人のガバナンスの更なる強化等のために - 最終とりまとめ(2020/12)」(*2)において、 下記のように結論づけている。


「公益法人は、税制上の優遇措置や国民からの寄附を受け、不特定かつ多数の人々の利益のために公益目的事業を実施する存在であり、社会的な信頼確保が特に重要である。そのため、各法人が自らの活動について国民全体に向けて積極的に説明や情報開示を行うことで透明性を確保することや、「公益法人としてのガバナンス」を確保することが求められている」(*2)

「税制上の優遇措置」とは、本来は納めるべき税金を納めずに済み、国民の財産、公金の原資である税金が、当該団体に還元される措置である。


公益法人のガバナンスにおける留意事項
出典・公益法人の各機関の役割と責任 - 内閣府

翻って、一般社団法人の事業には「公益性」は求められていないが、業務委託される事業が税金が原資である公金で業務委託される公共事業であれば、公益性が高い事業であり、一般社団法人と雖も公益法人と同等の責任が発生すると考えられる。



地方自治体や官公庁からの業務委託される法人と公益法人の責任とは

前述の「公益法人のガバナンスの更なる強化等のために - 最終とりまとめ」では、公益法人は税制優遇や国民からの寄付を受け、社会的、国民からの信頼確保の為に、当該法人の活動についての積極的な説明や情報開示を行う事が求められている。

この他にも国民からの信頼確保の為に、「公益法人としてのガバナンス」の確保が求められている。「公益法人としてのガバナンス」についての明確な定義として、以下の三要素が成立していれば「ガバナンスの効力が示されている」としている。




公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子代表理事の責任は?

このような点を踏まえ、「ガバナンスの効力が示されている」か否かを、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会の代表理事である、田中紀子氏の発言の例から検証する。



田中氏が言及しているギャンブル依存症スクリーニングテストである「SOGS」は、あくまでも「依存症の診断基準を満たす可能性のある者」を抽出するテストであって、「診断基準を満たした罹患者」を抽出するテストでは無い。

また、田中氏が出演した、2022年12月14日のNHKクローズアップ現代「やめたくてもやめられない。広がるオンラインカジノの闇」においても、2017年の久里浜医療センター調査結果の数値である「ギャンブル依存症320万人が罹患」と誤った発言している。



一般的には、数百万円から数千万円の多額の借金があるギャンブル依存症当事者が、数百万人も存在すると認識されているが、国立病院機構久里浜医療センターのギャンブル障害およびギャンブル関連問題実態調査報告書(*3)においての当事者(診断基準を満たしている)のギャンブルに関する借金(中央値300万円)は、公益財団法人日本遊技機工業組合社会安全研究財団パチンコ・パチスロパチンコ・パチスロ遊技障害全国調査 - 調査報告書(2018) (*4)では、借金が100万円〜400万円の者は0.8%(全国で数万人規模)であった。

実際の臨床においての当事者は、全国規模では数百万人も存在しない事が示唆されている。

過去にも田中氏は、海外メディア(チャンネル登録者数270万人)の取材において、全世界に対して「日本では320万人以上の人がギャンブル依存症と闘っている」とデマを拡散している。これは日本人への「スティグマ」そのものであり、なぜ、公益法人代表である田中氏が、慰安婦問題のような手法で日本人を貶めるのだろうか。


and as a result, over 3.2 million people in japan are fighting against their gambling addiction.






公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子代表理事の納税者への誹謗中傷



田中氏は、精神医療に携わる者でありながら、当事者の精神状態を加味していない「迷惑」発言、担当弁護士に対しての「ポンコツ」発言、「嘘つきでクソダサい見栄っ張りで卑怯な男」発言、更には、感情論での「反社会的行為への加担」発言は、誹謗中傷であり、名誉毀損の可能性がある発言である。


ソニーミュージックさんの方が、よほど反社会的行為に加担してるじゃないですか~。(*5)



田中氏の「ギャンブルの借金を親が肩代わりしてやるのはダメ」というツイートに対して、私がリプライをしたところ、何らエビデンスとなり得る調査等を提示せず、「タフラブは私が言い出したことなんかじゃないし、厚労省も支援者も昔から言ってること」と、公益法人の事業として、エビデンスを認識していない啓発を行っている事を自ら証明している。



更に田中氏は、「タフラブと底つきの意味もろくに理解してない」「話にならない人」「それでも異常に囚われ妄想が肥大化」「執拗なとらわれ」と糾弾するが、田中氏の発言の一部である「妄想」とは、統合失調症の症状の一種、もしくは妄想性障害の症状とされており、「妄想」という精神障害の症状を用いた表現での私(澤田貴行)に対しての糾弾は、侮辱罪、もしくは名誉毀損罪の可能性がある。


妄想とは明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことで、いやがらせをされているといった被害妄想、テレビやネットが自分に関する情報を流していると思い込んだりする関係妄想などがあります。(*6)

妄想性障害は、1つまたは複数の誤った強い思い込みがあり、それが少なくとも1カ月間持続するのが特徴です。(*7)



ギャンブル依存症問題を考える会への質問状

この直後、田中氏にはブロックされてしまったので、ギャンブル依存症問題を考える会にメールにて下記の質問状を送付した。(加筆、修正済み)



この質問状に対して返答が無かった為、ギャンブルが背景にあると推測しただけでギャンブルが因果か判別できない事件を纏める事業(*17)を、公益財団法人キリン福祉財団からの助成金で行っている事から、キリン福祉財団からのご厚意を受け賜り、上記質問状への回答を、ギャンブル依存症問題を考える会に対して代理で督促して頂いた。





弁護士からの受任通知

しかし、質問状への回答はなされずに、弁護士から受任通知が私宛にメール送信され、ギャンブル依存症問題を考える会や田中紀子氏への連絡を控える旨や、下記の「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏の朝日新聞でのデマ」ブログバナーに対して、「貴殿の行為に対する措置については当職にて検討中」である旨を通告された。


公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏の評判と朝日新聞でのデマ

このメールで「訴訟を提起」では無く、「貴殿の行為に対する措置については当職にて検討中」という表現を使用しているのは、、訴訟により害悪が生ずると通告し、畏怖させ、相手の行動を制限してしまうと、強要罪や強迫罪になる可能性を否定できなくなるからではないか。つまり、担当弁護士が記事の内容が真実であると認識している事を示唆している。


公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(法人コードA024871)の法人基本情報
出典・国/都道府県公式公益法人行政総合情報サイト 公益法人information

名誉毀損は「公共性」「公益性」「真実性」が証明されれば、違法性は阻却されるが、ギャンブル依存症問題を考える会の事業は、医療的な啓発や厚労省からの業務委託で「公共性」が高く、正しい知識の啓発が不特定多数の者の利益になり「公益性」が高い事から、田中氏の誤ったエビデンスによるデマ啓発に対して、信頼できる出典を明示し、指摘した問題点の「真実性」を証明している本件において、違法性は阻却される。



公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会の利益相反問題

田中氏は提携を結んでいる(*18)、一般社団法人グレイス・ロード(ギャンブル依存症回復施設)から300万円を借り入れているが(*19)、返済は確認できておらず、実質的に紹介料を前払いされている可能性を否定できない。

ギャンブル依存症問題を考える会とグレイス・ロードの利益相反関係。田中紀子氏の評判は?

図表にあるとおり、ギャンブル依存症は自助グループ(12ステップ)だけで回復するものではない。自助グループ(12ステップ)に適応できない特定の者には利益にならないにも関わらず、それを無視して特定法人へ入所を勧め、利益を誘導する行為は利益相反行為の可能性がある。

利益相反行為がある場合は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第八十四条によって、理事会で取引における重要な事実を開示して、その承認を受けなければならない。重要な事実の開示をしなかった場合には、同法第三百四十二条により百万円以下の過料となる。

また、その行為により第三者に損害が発生している場合は、同法第百十七条による賠償責任が発生する可能性もある。


一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第八十四条(競業及び利益相反取引の制限)
理事は、次に掲げる場合には、社員総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 理事が自己又は第三者のために一般社団法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 理事が自己又は第三者のために一般社団法人と取引をしようとするとき。
三 一般社団法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において一般社団法人と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。

第百十七条
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。(*25)



ギャンブル依存症問題を考える会の「公益法人としてのガバナンス」は確保されているか

田中氏が代表を務めるギャンブル依存症問題を考える会は、厚生労働省や文部科学省から業務委託がなされており、総額で約2千万円の税金が支出(*20)されているが、当該法人代表が「無根拠」「誇大」「デマ」発言や「他者への誹謗中傷」を行い、国民からの質問に全く説明義務を果たしていないギャンブル依存症問題を考える会に、前述の「公益法人としてのガバナンス」での明確な定義としての三要素を満たしているとは考えられず、「ガバナンスの効力が示されている」とは到底言えない。



一般社団法人Colaboの主張

東京都に対する住民監査請求結果について、Colabo弁護団が、「暇空茜氏の主張の大半は監査委員により退けられた」と、声明を発表した。



この監査結果での最重要な点は、「暇空茜氏の主張の大半は監査委員により退けられた」では無く、下記の不当性が認められ、その対応措置を勧告された事である。


令和3年度東京都若年被害女性等支援事業委託契約の委託料の精算には不当な点が認められ、その限りで本件請求には理由があるから、次に掲げる措置を講じることを勧告する。

(1)監査対象局は、本件契約に係る本事業の実施に必要な経費の実績額を再調査及び特定し、 客観的に検証可能なものとすること。

(2)調査の結果、本事業として不適切と認められるものがある場合や委託料の過払いが認め られる場合には、過去の事業年度についても精査を行うとともに、返還請求等の適切な措 置を講じること。(*21)


東京都監査事務局が不当と認めた点を抜粋して、「東京都若年被害女性等支援事業について当該事業の受託者の会計報告に不正があるとして、当該報告について監査を求める住民監査請求監査結果」(*22)から引用した。


託事業の経費として計上するに当たり不適切な点があるもの
(人件費、法定福利費について)

給与について、事業への従事割合によって委託事業の経費として按分をしたという説明がされたが、按分の根拠となる考え方が不明瞭で、その実態が不統一であり不適切である。また、按分の考え方に基づき按分すべき法定福利費、税理士報酬等については按分せず全額計上しており不適切である。一方で給与については総支給額を計上せず、所得税等の税額を控除した後の金額を計上し ており、過少計上となっている。


(領収書について)

本事業の特性上やむを得ない事由があることは理解できるものの、証ひょう書類としての性質上、領収書として認められるか否か疑義が生じるような領収書が含められていることは不適切である。また、領収書が示されていない事項が本件経費に計上されていることは不適切である。


(事業実績額の内訳の記載について)

本件事業実績額の内訳には実際とは異なる備品や購入していない備品が記されており、実態を正確に反映せずに本件事業計画書の事業所要額の内訳をそのまま転記したものと思われるものが見受けられることは不適切である。


(履行確認について)

本件実施状況報告書では、特定の事業によるアウトリーチ実施回数と声掛けをした人数や参加者数の記載にとどまることは、その実態が把握できず不適切である。


委託事業の経費として計上するに当たり妥当性が疑われるもの
(給食費、宿泊支援費について)

対象人数が不明であるものの、一回当たりの支出が比較的高額なレストランでの食事代やホテルの宿泊代、また食事代とは理解し難い物品の購入代が計上されている。さらに、宿泊支援費について都外遠隔地での宿泊代が計上されていることなど、本件契約の仕様書に記載される文言そのものからは委 託事業の経費として計上することに妥当性が疑われるものが見受けられる。(*21)


この勧告に対して、一般社団法人Colabo及び同代表理事仁藤夢乃代理人弁護団は、「東京都に対する住民監査請求結果について」という声明文を発表した。


「領収書の取扱、事業実績額の記載、履行確認について不適切性」
→「公金の使途の透明性の確保の重要性は理解しておりますので、今後このようなことについてどのようにバランスをとるべきかは都の担当部局と緊密に協議」

「一回当たりの支出が比較的高額なレストランでの食事代」
→「大人数での食事代(ひとりあたり1750円~3400円程度で令和3年度の1年間で5回程度)」「一人当たりの食費がそれ以上になることが3回程度ありましたが、Colaboの支援対象の女性のお祝い事をするためでした。

「都外遠隔地の宿泊代」
→「都外遠隔地の女性からの相談に対応するため、そこに出向いてその女性を自宅外に宿泊させる支援」(*22)


東京都監査事務局が指摘した、「委託事業費の按分が不明瞭」「要件を満たしているか疑義が生じる領収書」「内訳とは異なる備品や購入していない備品の記入」「活動の実態が不明瞭」「比較的高額な食事代や食事代とは理解し難い物品の購入代」は、理事等が常識的に注意ができれば、このような勧告を受ける事態を予防できる。

ましてや、公金を使用しての「個人のお祝い」は、常識的に考えれば、不適切で有る事は明白である。





一般社団法人や公益法人の法的責任

一般社団法人や公益法人等の理事等は、業務を委任された当該理事の専門的な能力、社会的な地位から期待される、善管注意義務や忠実義務が法令により生じる。


民法
第六百四十四条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。(*24)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(忠実義務)
第八十三条
理事は、法令及び定款並びに社員総会の決議を遵守し、一般社団法人のため忠実にその職務を行わなければならない。

第百十一条
理事、監事又は会計監査人(以下この款及び第三百一条第二項第十一号において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、一般社団法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

第百十七条
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。(*25)

「公益法人としてのガバナンス」の効力が示されていないギャンブル依存症問題を考える会の理事や、東京都監査事務局が会計報告に不当があると指摘されたColaboの理事には、民法の善管注意義務や一般社団法人法の忠実義務に反している可能性がある。

また、それにより当該法人に損害が発生した場合には、当該理事の損害賠償責任が発生し、理事等が職務を遂行するにあたり、悪意や重大な過失が存在した場合には、第三者に生じた損害についての賠償責任が発生する。



十分な説明責任を果たさない法人への処置

公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議で指摘された、「適切な自治規範」の遵守がなされず、法令に直ちに違反しているとは言えないが、「ガバナンスの効力が示されている」とは言えず、納税者たる全ての国民への説明責任を十分に果たしているとは言えない法人には、厳正な措置がなされるべきである。

即ち、Colaboにおいては、不祥事の予防から事後対応、国民への説明責任を十分に果たす規範を構築しなければならず、よって、今回の問題で法的な責任が発生した場合の理事や監事の責任の有無や、その法的な責任の所在を明確にすべきである。このような問題が解消されなければ、委託契約を解除し、委託先の名簿からは永久に除外されるべきである。

ギャンブル依存症問題を考える会に至っては、原資が税金である官公庁からの業務委託で事業を行いながら、納税者たる国民からの質問に弁護士を介入させて回答を拒み、「公益法人のガバナンス」における説明責任を果たさないのであれば、公益認定取り消しが妥当である。



業務を委託される法人の信頼確保と公平性


公益法人の公益目的事業は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければなりません。また、法人の財産は、役員や職員の私産・私物ではなく、特に公益法人の場合は、税制優遇を受けて形成された、いわば国民から託された財産です。(*26)

「公益法人のガバナンスにおける留意事項」に明記されている「不特定多数の者」とは、国民全般を指し示しており、また、「法人の財産は税制優遇で形成された国民から託された財産」であるならば、国民からの税金が原資であるのと何ら変わりはない。

一般社団法人と雖も、税金が原資である公金で業務委託される公共事業であれば、公益法人と同等の責任が発生すると考えられる。

つまり、公共事業は国民全般の利益増進に寄与する事業、即ち、公益目的事業を国民からの税金で実行する事になる。



公務員 ≒ 法人理事(役員)等

この事から当該法人に求められるあり方は公務員とほぼ同じであり、「公益法人のガバナンスにおける留意事項」の「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければなりません。」は、日本国憲法第十五条第二項の「全体の奉仕者であり一部の奉仕者ではない。」とほぼ一致する。


日本国憲法
第十五条
○2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。(*27)

つまり、公務員とほぼ同様の「公益」「公平」「中立」などの公務員倫理の遵守、高い職業倫理が求められる。



田中氏や仁藤氏には日本国憲法第十九条により、表現の自由や言論の自由に繋がる自由権である思想・良心の自由が保証されているが、税金を原資として事業を行いながら、一部の支持者からの信頼関係の確保しかしておらず、同じ納税者にも関わらず、両者が敵視する者からの信頼関係の確保という責務を果たしていない。

両者は特定のイデオロギーの者との信頼関係の確保を優先し、それ以外の者との信頼関係の確保を放棄しているが、もはや、独善的な自己満足の為に、公益性の高い、「社会的弱者支援事業法人代表理事」という権威を、「私的利用」していると言わざると得ない。


日本国憲法
第十九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。(*27)



公益法人代表の政治的批判

公務員には全体の奉仕者として、公平中立に公務に携わる為に、政治的に中立な立場を維持する為の政治的行為の制限がある。(*28)(*29)



一般社団法人及び一般財団法人に関する法律や、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律には、政治活動の制限の規定は無いが、公益認定事業や官公庁からの業務委託により、国民からの信頼確保が求められるのであれば、公務員とほぼ同じあり方が求められる。

両者の政治批判や特定の政治上の主義を推進、支持する行為は、公務員の政治的行為の制限に準じて自主的に制限しなければならない。(*30)



余談になるが、仁藤氏が任意団体から政治活動に制限があり、所轄庁への報告義務や情報開示制度のあるNPO法人化では無く、自由度の高い一般社団法人化したのは、一定の支持層が存在するフェミニストという地位や、弱者を救済する善意の事業者という地位を確固たるものにする戦術で、特定政党からの将来的な政界進出という目標を達成する為の長期的な戦略であると推察した。


特定非営利活動促進法
第二条
この法律において「特定非営利活動」とは、別表に掲げる活動に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいう。


この法律において「特定非営利活動法人」とは、特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、次の各号のいずれにも該当する団体であって、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。

ロ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと。

ハ 特定の公職(公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第三条に規定する公職をいう。以下同じ。)の候補者(当該候補者になろうとする者を含む。以下同じ。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とするものでないこと。(*31)



EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)

日本政府では行政への国民の信頼を確保する為に「EBPM」(*32)に取り組んでいるが、田中氏のエビデンスを無視した啓発や、常識的には考えられない言動は、政府や内閣府、東京都が標榜する「EBPM」に反する活動である。


EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。 政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼確保に資するものです。 内閣府では、EBPMを推進するべく、様々な取組を進めています。(*32)

また、Colabo問題における東京都監査事務局が指摘した、「アウトリーチ実施回数と声掛けをした人数や参加者数の記載だけでは実態が把握できず不適切(*21)」という点は、政策効果測定に重要な関連を持つ情報を活用する「EBPM」の理念に沿わない、極めて不適切な報告であるという重要な指摘である。

この指摘された問題点を改善するには、「EBPM」に基づいた事業の効果を「PDCA」により検証し、その業務を常に改善し、効果や効率を高める工程を盛り込んだ事業計画案を提案しなければならない。

これは、Colaboや同様の事業を行う他団体においても、この問題点を改善できなければ、東京都等からの業務委託はなされない事を示唆している。



困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等の信頼度

今回の問題での仁藤氏やColaboの発表は支離滅裂に感じられ、全く信用に値しなかった。

その為、仁藤氏が構成員で参加していた「困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議」やColaboの事業(アウトリーチ活動等)、2024年4月に施行される「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が、「EBPM」の理念に沿ったものなのかと疑念が生じた。



公益法人や官公庁から業務委託される事業者の国民からの信頼確保の為の提案

自由主義国家である日本において、多種多様な価値観を有する国民が、価値観を共有できるポイントは「合理性」である。「合理性」とは普遍性であり、量的なエビデンスによる「合理性」である。

国民からの信頼を確保する為には、下記のような「合理性」を確保する為の法整備が必要である。



その業務による当事者の生活や疾病等の改善度を指標により明確にすべきであり、「ケーススタディ」等を根拠にした事業が適切であるのかを検証し、観察的な研究である「ケースコントロール研究」や「コホート研究」等を事業と同時に行い、検証すべきである。


ケーススタディ
社会科学では、すべての事象を網羅することができない場合に一つまたは複数の事例を取り上げて、推論が当てはまっているか、傾向が確認できるかを確かめる。人文科学でも、すべての事象を網羅することができない場合に、一つまたは複数の事例を取り上げる。(*33)


ケースコントロール研究
疾病に罹患した集団を対象に、曝露要因を観察調査する。次に、その対照として罹患していない集団についても同様に、特定の要因への曝露状況を調査する。以上の2集団を比較することで、要因と疾病の関連を評価する研究手法。(*34)


コホート研究
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察研究の一種である。(*35)

Colabo問題で東京都監査事務局が「実態が把握できず不適切」と指摘した、「アウトリーチ実施回数と声掛けをした人数や参加者数(*21)」のみの集計データは、もはや小学生レベルであり、多種多様な価値観を有する全ての国民から信頼される為には、普遍性や量的な「エビデンス」による「合理性」が必要なのである。



宇佐美典也氏と音喜多駿参議院議員



Colaboを批判している宇佐美典也氏(制度アナリスト、元経産省官僚)は、実証されたエビデンスの無い質問主意書(高井宗志元衆議院議員提出)で田中氏とコラボ(*36)しており、また、Colabo問題を追求している音喜多駿参議員議員(日本維新の会)は、宇佐美氏と田中氏の三人で過去にコラボしているが、他事業者への監査やColaboの政治活動に言及するのであれば、ギャンブル依存症問題を考える会の事業においても、エビデンスに基づいて監査すべきである。



Colabo問題には言及し、ギャンブル依存症問題を考える会に言及しないのであれば、宇佐美氏や音喜多氏には「ダブルスタンダード」というレッテル貼りがなされるであろう。

音喜多氏は「社会的弱者支援事業法人代表理事」である仁藤氏に近づいた時期もあったが、官公庁から業務を委託される公益法人や一般社団法人の問題が顕在化したのであれば、「公益法人のガバナンスの更なる強化等のために - 最終とりまとめ」においての「ガバナンスの効力が示されている」とされる三要素等を、「EBPM」に基づいて法制化すべきである。





*2023年1月11日加筆(段落「公益法人や官公庁から業務委託される事業者の国民からの信頼確保の為の提案」に加筆しました。)
*2023年1月12日加筆(段落「公益法人や官公庁から業務委託される事業者の国民からの信頼確保の為の提案」に加筆しました。)
*2023年1月14日加筆(段落「公益法人や官公庁から業務委託される事業者の国民からの信頼確保の為の提案」に加筆しました。)
*2023年1月16日加筆(段落「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会の利益相反問題」での「罰則」→「過料」に修正しました。)
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公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏への質問



公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏の「ギャンブルの借金を親が肩代わりしてやるのはダメ」というツイートに、私が上記のリプライをしたところ、何らエビデンスとなり得る調査等を提示せず、「タフラブは私が言い出したことなんかじゃないし、厚労省も支援者も昔から言ってること」と、公益法人の事業として、エビデンスに基づかない啓発を行っている事を自ら証明している。



論理的な回答ができなかった田中氏は、「タフラブと底つきの意味もろくに理解してない」「話にならない人」「それでも異常に囚われ妄想が肥大化」「執拗なとらわれ」と糾弾するが、田中氏の発言の一部である「妄想」とは、統合失調症の症状の一種、もしくは妄想性障害の症状とされており、「妄想」という精神障害の症状を用いた表現での私(澤田貴行)に対しての糾弾は、侮辱罪、もしくは名誉毀損罪の可能性がある。

また、田中氏が誹謗中傷で糾弾する理由は、「私(田中氏)がとてつもない重要人物で影響力が多大だという「妄想」を私(澤田)が抱いている」と、田中氏が考えている事が要因である。


妄想とは明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことで、いやがらせをされているといった被害妄想、テレビやネットが自分に関する情報を流していると思い込んだりする関係妄想などがあります。(*1)

妄想性障害は、1つまたは複数の誤った強い思い込みがあり、それが少なくとも1カ月間持続するのが特徴です。(*2)

後述する弁護士とは違い、田中氏は「それでも止まらないなら訴訟する」と明言しているが、私の田中氏に対しての批判には違法性は無いと確信しており、訴訟により害悪が生ずると通告し、畏怖させ、違法性の無い相手の行動を制限する田中氏の行為は、強要罪や強迫罪になる可能性が高い。



田中氏の影響力はどの程度なのか

全国放送であるNHK総合の番組や数多のメディアに出演する田中氏は、重要人物で影響力が多大であると考えるのが妥当であり、私の妄想では全く無い。

ここで、影響力が多大な田中氏が誤った認識を喧伝した点に注目したい。

2022年12月14日の田中氏が出演したNHKクローズアップ現代「やめたくてもやめられない。広がるオンラインカジノの闇」において、2017年の久里浜医療センター調査結果の数値である「ギャンブル依存症320万人が罹患」[(*3)、もしくは下記ツイート映像]と発言したが、この調査で使用されたスクリーニングテストである「SOGS」は、あくまでも診断基準を満たす可能性がある者を選別するものであり、診断基準を満たした罹患者を選別するものでは無い。



「あくまでも依存症疑い」である調査結果を、診断基準を満たした者である「罹患」とした発言は、常識的に考えれば絶対に間違えない事であり、他方で、エビデンスに基づかない啓発も行っており、何らかの目的を達成する為に問題を誇大化し、病気喧伝している可能性や、田中氏が何らかの健康上の問題を抱えており、常識的な判断が不能である可能性がある。また、誤った認識を全国放送で広めた影響は計り知れない。



ギャンブル依存症問題を考える会への質問状

この直後、田中氏にはブロックされてしまったので、ギャンブル依存症問題を考える会にメールにて下記の質問状を送付した。(加筆、修正済み)



この質問状に対して返答が無かった為、ギャンブルが背景にあると推測しただけでギャンブルが因果か判別できない事件を纏める事業(*13)を、公益財団法人キリン福祉財団からの助成金で行っている事から、キリン福祉財団からのご厚意を受け賜り、上記質問状への回答を、ギャンブル依存症問題を考える会に対して、代理で督促して頂いた。





弁護士からの受任通知

しかし、質問状への回答はなされずに、弁護士から受任通知が私宛に送信され、ギャンブル依存症問題を考える会や田中紀子氏への連絡を控える旨や、下記の「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏の朝日新聞でのデマ」ブログバナーに対して、「貴殿の行為に対する措置については当職にて検討中」である旨を通告された。


公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏の評判と朝日新聞でのデマ

このメールで「訴訟を提起」では無く、「貴殿の行為に対する措置については当職にて検討中」という表現を使用しているのは、、訴訟により害悪が生ずると通告し、畏怖させ、相手の行動を制限してしまうと、強要罪や強迫罪になる可能性を否定できなくなるからではないか。つまり、担当弁護士が記事の内容が真実であると認識している事を示唆している。


公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(法人コードA024871)の法人基本情報
出典・国/都道府県公式公益法人行政総合情報サイト 公益法人information

名誉毀損は「公共性」「公益性」「真実性」が証明されれば、違法性は阻却されるが、ギャンブル依存症問題を考える会の事業は、医療的な啓発や厚労省からの業務委託で「公共性」が高く、正しい知識の啓発が不特定多数の者の利益になり「公益性」が高い事から、田中氏の誤ったエビデンスによる「デマ」啓発に対して、信頼できる出典を明示し、指摘している問題点の「真実性」を証明している本件において、違法性は阻却される。



公益法人の国民からの信頼確保の為に

令和2年12月の公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議(*14)では、下記のように「社会的な信頼確保が必須であり、その為には、積極的な説明や情報開示が求められている」と結論づけている。


公益法人は、税制上の優遇措置や国民からの寄附を受け、不特定かつ多数の人々の利益のために公益目的事業を実施する存在であり、社会的な信頼確保が特に重要である。そのため、各法人が自らの活動について国民全体に向けて積極的に説明や情報開示を行うことで透明性を確保することや、「公益法人としてのバナンス」を確保することが求められている。(*14)

この有識者会議における最終とりまとめから、下記の「公益法人のガバナンスにおける留意事項」(*15)を内閣府が作成している。


公益法人のガバナンスにおける留意事項
出典・公益法人の各機関の役割と責任 - 内閣府

ギャンブル依存症問題を考える会の監督官庁である内閣府において、「EBPM」(*16)に取り組んでいるが、田中氏のエビデンスを無視した啓発や、常識的には考えられない言動は、内閣府が標榜する「EBPM」に反する活動である。


EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。 政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼確保に資するものです。 内閣府では、EBPMを推進するべく、様々な取組を進めています。(*16)

「社会的な信頼確保が必須であり、その為には、積極的な説明や情報開示が求められている」にも関わらず、弁護士を介し、回答を拒み、内閣府が標榜する「EBPM」を無視した啓発をするギャンブル依存症問題を考える会は、公益認定取り消しが妥当ではないか。

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厳罰主義から非犯罪化へ

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏は、芸能人などの著名人が違法薬物で逮捕されると、違法薬物の少量所持や使用は社会的費用が増加し、スティグマなどにより再起が難しくなるとして、「海外では違法薬物政策の厳罰化は失敗している事例が多く、厳罰主義から非犯罪化へと流れが変化しており、日本でもその流れに追従すべきである」と主張する。

実際に世界保健機関(以下、WHO)では、大麻と大麻樹脂を特に危険な麻薬であるスケジュール4から削除する事を勧告しており、その勧告を受け、2020年(令和2年)12月2日に国連麻薬委員会を構成する53カ国が参加した投票が行われ、賛成27、反対25、棄権1でスケジュール4からの削除を承認された。日本は反対に票を投じている。(*1)

また、米国下院でも米国連邦法において合法化する法案を2020年(令和2年)12月4日に可決した。(*2)



田中氏の主張のとおり、海外では厳罰主義から非犯罪化へと流れがあるのは事実だが、日本と比較した諸外国の薬物生涯経験率では、大麻は約15.1倍~約25.8倍、覚醒剤は5.5倍~22.2倍、コカインは約12.6倍~49倍、MDMAは9倍~37.3倍、何らかの薬物は約11.0倍~約19.6倍も多く、極めて顕著な差があり、日本は厳罰化によりG7内で唯一の麻薬蔓延防止に成功している類稀なる国である事実が確認できる。

このような諸外国の事情と異なる環境の日本での非犯罪化は果たして適切なのだろうか。


日本では個人消費目的で一定の薬物を所持、使用した場合に犯罪として処罰しているが、国際連合薬物・犯罪事務所(以下、UNODC)、WHOでは基本的に刑罰では無く、治療などの代替手法(以下、医療モデル)を提唱し、諸外国の多くのがこの医療モデルに準拠している。また、薬物は世界中で蔓延しており薬物使用障害での健康被害は深刻であるともしている。(*3)

しかし、このような医療モデルを提唱する基準とされている国は、刑務所人口が過密している(115カ国で100%超、79カ国で120%超、51カ国で150%超)諸外国である。その医療モデルを提唱する理由の一つに、刑務所の過密により刑務所内の教育や処遇プログラムへの参加が低下し、犯罪歴により就職が困難になり、再犯により再び収監される負のサイクルがあるとされている。(*3)

また、服役中に悪風感染し薬物使用を開始してしまう者も居り、全世界の受刑者の3人に1人が服役中に違法薬物を使用されたと推計されている。この負のサイクルが再犯率を高める要因となっており、社会的費用の増加になるとされている。(*3)



このような諸外国の事情であれば、社会的費用の軽減と薬物使用障害者への治療を目的とした医療モデルの提唱には一定の理解が可能である。田中氏の主張にはこのような背景があると考えられる。



しかし、日本では2019年(令和元年)末の刑務所収容率は55.1%(*4)であり、収容施設内での違法薬物の使用はできず、薬物からは隔離された状況である。田中氏は社会負担費が増加して大変になると指摘するが、それは刑務所の過密状態が続き、薬物生涯経験率が高水準で推移している諸外国のエビデンスを基にした想定であって、田中氏の提唱する非犯罪化が、薬物生涯経験率が著しく低く推移している日本において有効であるのかは疑問符を付けざるを得ない。

現にWHOでは医療用目的での大麻使用については支持しているが、日本での大麻使用の理由の主となる嗜好目的での使用は奨励していない。(*5)



非犯罪化により刑罰による人手や社会的費用(税金)減らせるのか

米国での刑事施設収容者は約143万人中65万人(約46%)が薬物関連事犯であり、連邦刑務所受刑者の年間1人当たりの費用が37,499ドル(1日あたり102.6ドル)であるので、刑事施設収容者全体の年間費用は536.2億ドルとなり、薬物関連事犯の年間費用は約24.3億ドル(2,347.3億円)となる。(*6)

米国国立薬物乱用研究所(以下、NIDA)によれば、全収容者の50%以上でアルコール、全収容者の75%で収監されるにあたり違法薬物が関連しており、米国の刑務所収容者の65%が薬物使用障害の診断基準であるDSM-IV(米国精神医学会:APA)の基準を満たしている。また、それ以外の20%が犯罪の時点でアルコールや薬物の影響下だったという研究の報告をしている。(*7)



日本の刑事施設収容者の年間費用

日本での2019年(令和元年)度の刑法犯検挙人員は192,607人であり、13,364人(約9.5%)が薬物事犯検挙人員である。法務省2020年(令和2年)版犯罪白書では刑事施設被収容者の年間1人当たりの費用が749,710円(1日あたり2,054円)であって、2019年(令和元年)度年末刑事施設収容者数は41,867人であるので、刑事施設収容者全体の年間費用は約313.8億円となる。(*4)

収容されている受刑者の罪名別構成比の資料が見当たらないので、入所受刑者人員の覚せい剤取締法違反の比率約24.6%で収容受刑者の推計値を算出すると10,290人となり、大麻取締法での入所受刑者人員の比率は約1.4%であるので収容受刑者の推計値は601人となる。

同じように算出した麻薬取締法での比率は0.4%で175人となり、麻薬特例法での比率は約0.2%で95人となる。4者を合わせると推計値は11,162人(約26.6%)となり、薬物事犯受刑者の年間費用の推計値は約83.6億円となった。(*4)(*A)





非犯罪化後の薬物依存症の推計値

日本で違法薬物は蔓延しておらず薬物生涯経験率が著しく低い為、非犯罪化直後は違法薬物が蔓延している諸外国の薬物生涯経験率に近い水準(*B)になると考えられ、仮に日本を除いた7カ国の薬物生涯経験率の平均値39.9%で薬物経験者を推計した場合、15~64歳人口は総務省統計局によると2020年(令和2年)7月1日現在で7,464.5万人(*8)であるので、約2,978.3万人が何らかの薬物を使用する事になる。

薬物使用に関する全国住民調査 2019年(令和元年)(以下、薬物使用に関する全国調査)(*9)においての、何らかの薬物使用の生涯経験者数の推計値は218.8万人であり約13.6倍である。



非犯罪化後の種類毎の薬物生涯経験者の推計値は、薬物使用に関する全国調査での薬物の種類毎の生涯経験者の推計値が全体に占める比率を用いて算出した。(薬物使用に関する全国調査での薬物の種類毎の生涯経験者の推計値は重複した使用も含まれている為、非犯罪化後の推計値も重複した使用を含んでいる。)


推計値は大麻で約2,186.7万人(29.3%)、覚醒剤で約472.9万人(6.3%)、コカインで約409.9万人(5.5%)、ヘロインで約160.9万人(2.2%)、有機溶剤で約1,312.4万人(17.6%)、 その他(MDMA・危険ドラッグ・LSD)で約1,111.1万人(14.9%)となった。(*C)


薬物依存症になる比率は大麻で約9%、アンフェタミン(覚醒剤)で約11%、コカインで約15%、ヘロインで24%(*10)であるので、この比率を非犯罪化後の薬物別生涯経験者推計値に使用すると、大麻で約196.8万人、覚醒剤で約52.0万人、コカインで約61.4万人、ヘロインで約38.6万人となり、推計値の総計は約348.9万人になった。



2017年(平成29年)度の厚生労働省の患者調査では、ICD-10による精神作用物質使用(アルコールを除いた乱用する可能性のある物質や薬物)により依存症と診断されている総患者数は約22,000人だが、受診で判明しているだけの患者数であり、処方薬や市販薬の患者も含まれているので、薬物使用に関する全国調査の薬物別生涯経験者の推計値から薬物依存症になる者の推計値を算出した。

薬物別の薬物依存症になる者の推計値は、大麻で約14.4万人、覚醒剤で約3.8万人、コカインで約4.5万人、ヘロインで約2.8万人となり、薬物依存症になる者の推計値の総計は約25.5万人である。


違法薬物非犯罪化前後の推計値

米国では収監されるにあたり全収容者の75%に違法薬物が関連しており、違法薬物自体も蔓延しているので、社会的費用を抑制する為に合法化や非犯罪化は有効であるのだろうが、日本では違法薬物が蔓延しておらず、薬物関連事犯が全受刑者の約26.4%であり、2019年(令和元年)の何らかの薬物経験者の推計値である218.8万人が非犯罪化により約2,979万人と増加し、依存症と診断される者の推計値は約25.5万人から約349.0万人と増加する。

参考までに(*10)の研究ではニコチンでの依存症になる比率はICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類:WHO):42%、DSM-IV:32%、アルコールでは12%だが、2013年(平成25年)の成人の飲酒行動に関する全国調査(以下、飲酒全国調査)(*12)では、AUDIT(*C)16点以上でアルコール依存症疑いの者は男性4.6%、女性0.7%。ICD-10によって診断されたアルコール依存症経験者は2013年(平成25年)の20歳以上の人口比率で男性1.3%、女性0.3%(男女合計推計値109.0万人)。アルコール依存症該当者は、男性1.0%、女性0.2%(男女合計推計値58.0万人)であった。


(*C)AUDITはWHOによって開発された問題飲酒者のスクリーニングテストで、多くの国々で飲酒問題の早期発見・早期介入のツールとして使われており、日本でも20年以上前に翻訳され、医療や保健指導の現場で活用されています。(*13)

前述のAUDITの比率を用いて2020年(令和2年)度のAUDITによるアルコール依存症の疑いの者(16点以上)の推計値を算出すると、20歳以上の人口は2020年(令和2年)7月1日現在で約10,499.4万人(男性:約5053.1万人、女性:約5446.3万人)(*8)であるので、男性で約232.4万人(4.6%)、女性で約16.3万人(0.7%)、合計で約248.7万人(約2.3%)となった。(*D)



同様に2020年(令和2年)度のICD-10によるアルコール依存症経験者とアルコール依存症該当者の推計値を算出すると、アルコール依存症経験者の推計値は約109.1万人(約1.0%)、アルコール依存症該当者の推計値は約58.0万人(約0.5%)となった。(*E)



他の懸念事項としては、2020年(令和2年)版犯罪白書での薬物入手の為に窃盗や恐喝、強盗や詐欺などの罪を犯した経験のある者の比率は調査全体の23.5%に上る事から、非犯罪化後に薬物使用者が爆発的に増加した場合にも、薬物入手の為の犯罪が増加する可能性がある。(*4)


薬物入手のための犯罪の経験の有無別構成比
出典・2020年(令和2年)版 犯罪白書 -薬物犯罪- | 法務総合研究所 法務省(*4)



大麻が誘発する精神疾患の研究


米国の全国縦断的研究


田中氏は研究すら碌にされていないと主張するが、Carlos Blancoらの研究(2016)(*16-1)での、34,653人を対象とした米国での縦断的研究では、非使用者と比較した場合に3年以内の薬物使用障害を誘発するオッズ比は、アルコールではOR2.7、大麻ではOR9.5、ニコチンではOR1.7、他の薬物ではOR2.6と有意に高かった。3年以内の双極性障害やうつ病などの気分障害のリスクや、強迫性障害などの不安障害のリスクとの関連性は無かった。





若年層の大麻使用のリスク

Ken C. Wintersらの米国の薬物使用と健康に関する全国調査の12~21歳の27,708人を対象とした、青年期のアルコール使用障害と大麻使用障害についての研究(2007)(*18-2)では、直近2年間で飲酒を開始し、かつ、大麻の使用を開始した者のうち、大麻乱用及び大麻使用障害を発症した20代(22歳~26歳)の以前の分析結果であるOR3.0を比較の基準点OR1.0として、大麻乱用及び大麻使用障害を発症した10代(12歳~18歳)と比較した。

10代の各年代でORが3.9~7.2と大幅に高くなっており、年齢が大麻使用障害に有意な関連があった。



参考までに直近2年で飲酒を開始した者のうち、アルコール乱用及びアルコール使用障害を発症した20代(22歳~26歳)の以前の分析結果であるOR3.7を比較の基準点OR1.0として、10代(12歳~18歳)と比較した。大麻乱用及び大麻使用障害の10代よりも有意差が無い年代が多い。



Gabriella Gobbiらの研究(2019)(*15-1)での、1990年代半ば以降の11の研究の23,317人以上のデータをメタアナリシス(複数の研究の結果を統合し統計的手法で分析)で分析した研究において、18歳未満時に嗜好目的で大麻を使用していた者を34歳まで追跡調査(縦断的調査)をした。

その結果、青年期での大麻使用者は大麻使用以前の精神疾患が無いにもかかわらず、非使用者と比較して、若年成人期のうつ病発症ではOR1.37、自殺念慮ではOR1.50、自殺企図ではOR3.46と有意に高く、うつ病などの誘発に関連していた。自殺企図については各研究結果のORにばらつきがある事に留意する必要がある。





PTSDや大うつ病を有する退役軍人の医療大麻

Jane Metrikらの米国のVHA(退役軍人保健局)の退役軍人対象とした多くの研究(*18-10)では、退役軍人局での大麻使用及び大麻使用障害が多くなっており、その背景には、退役軍人に多く有する症状(不安、PTSD、慢性的な痛み、大うつ病、うつ病、ストレス、不眠症)を緩和させる為に医療用大麻の利用を承認されている事がある。

医療大麻使用者は嗜好用大麻使用者よりもPTSDの診断をされる可能性が5倍高く、大うつ病の診断をされる可能性は4倍高かった。PTSDと現在診断されている者は嗜好用大麻使用者の約2倍多く医療用大麻を使用しており、また、大うつ病に現在診断されている者は嗜好用大麻使用者の約3倍多く医療用大麻を使用していた。

医療大麻使用者は大麻使用の動機として、比較的低リスクで睡眠の改善や嗜好目的、社交不安などへの対処などの為に使用してるが、PSQI(ピッツバーグ睡眠質問表)を使用した睡眠の質を評価する質問表では、医療用大麻使用者と嗜好用大麻使用者の両者で臨床的に重度とされる睡眠の質の低下が確認された。


ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)は,睡眠障害の評価として広く使用されており,睡眠の質,入眠時間,睡眠時間,睡眠効率,睡眠困難,睡眠薬の使用,日中覚醒困難の7要素の合計得点として算出される。信頼性,妥当性の高い尺度であり,睡眠の質的,量的情報が得られ,個体間や群間での比較が可能となる(*18-11)

また、TLFB(飲酒量測定法)を使用した医療用大麻使用者と嗜好用大麻使用者を比較した調査では、医療用大麻使用者は嗜好用大麻使用者よりも過去1ヶ月におけるアルコールを飲酒する日の割合が約2倍低く、大麻を使用する日の割合が3.5倍高く、SF-36による調査で嗜好用大麻使用者より健康状態が悪化している事が確認された。


TLFB法はカナダで開発され た飲酒量測定法であり,手帳などの「カレンダー」 により飲酒機会などの記憶を呼び起こし,「標準 飲酒量フォーマット」を使って,1回に数種類の アルコールを飲んだ時でも正確に飲酒量を思い起 こさせる手法である(*18-12)
SF-36®(MOS Short-Form 36-Item HealthSurvey)は、世界で最も広く使われている自己報告式の健康状態調査票である.特定の疾患や症状などに特有な健康状態ではなく,包括的な健康概念を,8つの領域によって測定するように組み立てられている.わずか36項目の質問,5分程度の回答時間で包括的な健康度を測定する(*18-13)


ハーム・リダクションとしての医療大麻

また、医療大麻の使用がアルコールの飲酒を抑止する事から、アルコール使用障害のハーム・リダクションとして大麻が使用されている場合があるが、Meenakshi S. Subbaramanらの研究(2018)(*18-15)では、認知行動療法と薬物療法(ナルトレキソン・アカンプロセート)を併用したアルコール使用障害治療中の大麻使用の影響を、16週間の治療期間終了後と1年後にアルコール問題の質問票であるDrInC(45項目の自己記入式の質問票)を用いて検証した。

その結果、治療開始時には未使用者より大麻使用者の方が大麻の使用頻度に関係無く、衝動調節項目の点数が高く、大麻を月に4~8回使用するグループ(以下、Q3)では社会的責任項目の点数が高かった。治療終了時ではQ3と月に12回以上使用するグループ(以下、Q4)において、大麻未使用者と比較した衝動調節項目と社会的責任項目で有意に点数が高かった。Q4では身体的項目とDrInC全体の点数が高かった。


DrInC(Drinker Inventory of Consequences)は、衝動調節12項目、身体的項目8項目、対人飲酒項目10項目、飲酒に対する自己の思考項目8項目、社会的責任項目7項目の合計45項目の自記式のアルコール問題の質問票。得点が高いほど問題がある。(*18-15)

治療後1年では、大麻を月に1~2回使用するグループ(以下、Q2)とQ3、Q4は未使用者よりも衝動調節項目、社会的責任の点数が高く、Q2とQ4では身体的項目の点数も高かった。DrInCの回答結果全体では、Q4では大麻未使用者と比較してORが1.44と有意に高く、質問の得点の高さに関連していた。



医療用大麻使用者の64%がほぼ毎日大麻を使用している為(嗜好用大麻使用者約21%)、調査の現時点で大麻使用障害と診断される者が51.5%(嗜好用大麻使用者24.7%)おり、また、生涯においての大麻使用障害経験率は69.7%(嗜好用大麻使用者48.1%)であった。(*18-10)


精神疾患リスクの高い者や統合失調症患者の大麻使用のリスク

M. J. McHughら(2016)の研究(*18-3)では、UHR(精神疾患リスクが極めて高い者)190人を平均5.0年間(2.4~8.7年)追跡した縦断的調査での大麻乱用者は58%にのぼったが、そのうち、APS(弱い精神病症状群 = 精神病閾値以下の弱い陽性症状を示す群)(*18-4)の病歴を有した26%の者が、他の者よりも精神病性障害(幻覚、妄想、まとまりのない会話、まとまりのない行動など)(*18-5)に移行する可能性が4.9倍高かった。精神病性障害は統合失調症に似た症状であり統合失調症に移行する者もいる。(*18-6)



統合失調症などのSMI(重度精神疾患)を有する患者の大麻使用と暴力の関連を、メタアナリシスで分析したLauraDellazizzoら(2019)(*18-7)の研究では、大麻と暴力には中程度の関連性があった。



あくまで仮説になるが、物質使用障害になりやすい精神疾患リスクのある者が非犯罪化などにより大麻乱用になった場合、精神病性障害への罹患から統合失調症に移行し、暴力に繋がり犯罪を引き起こす可能性は容易に想定できるのではないか。


大麻使用者の肺癌リスク

Murray A. Mittlemanらの研究(2001)(*17)では、非使用者と比較して、大麻使用後1時間以内に心臓発作が起こる頻度が4.8倍に上がるとされ、S Aldingtonらの研究(2008)(*18-1)では、非使用者と比較して、肺癌リスクが5.7倍高く、大麻の長期使用が若年成人の肺癌リスクが高くなるとしている。


大麻使用による精巣がんのリスク

フレッドハッチソンがん研究センターのStephen M. Schwartzらの研究(2009)(*18-8)では、精巣がんの男性の大麻使用歴を調査した結果、診断時に大麻使用者であると精巣がんになるリスクが70%増加した。

精巣がんは細胞の種類により大別して、セミノーマ型と非セミノーマ型に分別(*18-9)できるが、診断時に治療後の経過が悪いと予測される分類である予後不良は非セミノーマ型だけに設定されており、セミノーマ型では予後不良に分類される事は無い。非セミノーマ型精巣がんのリスクの増加は、18歳以前の大麻使用に関連している事も判明した。


医療大麻の研究

このように嗜好用医療用を問わずに大麻使用のリスクが研究により判明しているが、激しいてんかん発作を引き起こすレノックス・ガストー症候群やドラべ症候群の治療薬として、大麻から抽出された精神活性作用を持たないCBDを成分とした治療薬がFDA(米食品医薬品局)に承認されている事例(*18-16)もあり、医療用としての大麻使用が有用であるとする研究も多数有る事から、ハーム・リダクションなどで医療用大麻を安全に使用する為には、確たるエビデンスを得る為に更なる研究が必要であると考察した。



違法薬物が脳に及ぼす影響


覚醒剤が脳に及ぼす影響

覚醒剤使用経験者では、セロトニン・トランスポーターの密度が健常者より低下している事が攻撃性の強さと相関し、コカイン、覚醒剤乱用者では大脳基底核のドーパミンD2受容体が減少し、そのドーパミンD2受容体が眼窩前頭皮質での局所糖代謝率が関連して、線条体のドーパミンD2・D3受容体利用率が健常者より低下する事が衝動性と負の相関関係であるとされている。(*19)




田中氏は覚醒剤は脳をボロボロにするなんてデマだとツイートしたが、Steven Bermanらの研究(2009)(*25)では、非使用者と比較して、覚醒剤乱用者群は灰白質が少なく、前帯状皮質、大脳辺縁系、大脳辺縁系皮質で平均11.3%下回っていた。また、白質が7%肥大し、海馬の体積が7.8%下回っていた。



覚醒剤乱用者群での海馬の体積は単語想起テストの結果と相関しており、覚醒剤乱用者群は内側側頭葉と大脳辺縁系皮質に覚醒剤使用による顕著な影響があり、覚醒剤乱用が脳に悪影響を与えているか、もしくはその可能性があるとしている。この結果は覚醒剤乱用者の記憶障害の要因は側頭葉欠損と海馬欠損であるとする仮説と一致した。



覚醒剤使用により統合失調症に類似した症状が現れる事は覚醒剤精神病と呼称され、ドーパミン受容体拮抗薬への反応性も類似している事は以前から判明してるが、東京大学、都立松沢病院、富山大学の覚醒剤による精神病と関連した脳体積減少の共同研究において、覚醒剤精神病者の脳の左半球の下前頭回や上側頭回などの特定部位の灰白質の体積減少が判明した。(*33)

脳の左半球の下前頭回や上側頭回などの特定部位の灰白質の体積減少は統合失調症者においても珍しくなく、他にも前頭極皮質、前頭眼窩野においても体積減少が判明し、前頭極皮質の体積減少と精神病症状の重症度は相関関係だった。(*33)




大麻が脳に及ぼす影響

また、大麻においても、大阪大学大学院医学系研究科解剖学講座(分子神経科学)の木村文隆准教授を中核とした研究グループが、大麻の有効成分であるカンナビノイドが大脳皮質への視床からの投射が退縮し、脳の正常な発達に障害を与える事実を報告した。(*38)



他にも、Giovanni Battistellaら(2014)(*42)の、大麻使用年数が同一である、精神疾患が無く大麻以外を使用していない、月に最低1本、週に最大で1本のジョイント(紙巻き大麻)を時々使用しているグループと、月に10本以上のジョイントを使用しているグループとの灰白質の減少をMRIで比較した研究では、月に10本以上のジョイントを使用している事が、内側側頭皮質、側頭極、海馬傍回、島皮質、眼窩前頭皮質の灰白質の減少に関連しており、これらの結果には研究以前の直近3ヶ月間の大麻使用頻度と強く相関していた。




ラッシュが身体に及ぼす影響


日本では指定薬物であるラッシュに関してのACMD(英国薬物乱用諮問委員会)の報告書では、ラッシュは主成分である亜硝酸エステルや亜硝酸イソブチルなどを含有した吸入剤であり、使用すると血管拡張作用により血流の増加を促し、平滑筋の弛緩を引き起こすとされる。血圧を下げ心拍数を上げるが、場合によっては身体的に危険なレベルに至る事もあり、メトヘモグロビン血症になる可能性や、心臓病を抱えた者には危険である可能性もあるとされる。(*46)

また、バイアグラとの併用は命を絶たれる危険もあり、亜硝酸エステルの一種である亜硝酸イソプロピルを使用した製品では視力障害の症例報告の増加が報告されている。(*46)





大麻が運転に及ぼす影響

米国では全州で大麻使用の影響のある場合の運転は違法である。NIDAの大麻と自動車事故に関する報告では、大麻喫煙後に交通事故に関与するリスクが約1.92倍に増加し、大麻の成分であるテトラヒドロカンナビノール(以下、THC)の濃度を判定する血液検査を用いた調査では、THCが高濃度だった場合にアルコールや他の薬物を使用しなかったドライバーと比較して、事故の原因となる可能性が約3~7倍増加した。(*48)

しかし、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の研究では、大麻使用後に発生した事故の統計上の有意差は見られなかったが、THCの体内吸収力には個人差があり、有害な影響は用量に関連している事や、大麻使用後は遅い速度で慎重な運転をする事で喪失していると認識している感覚を補おうとする(難しい操作の制御力が低下するので、想定外の事態や持続的な注意が発生した場合、確実に対処できない場合がある)事が研究で判明しており、この研究ではそのような点が関連している可能性がある事に留意すべきである。(*48)



非犯罪化や合法化で大麻使用者の増加

冒頭の田中氏のツイートで反社会勢力の闇流通ルートの解明が容易になるというが、産経新聞の2018年に合法化したカナダの大麻事情についての記事(*49)では、トルドー首相が目標に掲げていた闇流通市場の撲滅は達成できておらず、大麻購入者の42%が違法大麻を購入している。その理由として、合法大麻では製造の厳しい安全基準により費用がかかり、違法大麻よりも割高になる事があげられる。(*50)

また、カナダでの2018年(過去12か月)の調査では、16~19歳の大麻使用率は36%、20~24歳の大麻使用率は44%であった。これが2019年になると16~19歳の大麻使用率は44%、20~24歳の大麻使用率は51%であった。これは合法化によって大麻を厳格に管理するものでは無く、使用の増加を招き若年層の精神疾患リスクを高めている結果となっている。(*51)

他にも、Deborah S. Hasinらの研究(2017)(*52)では、1991からの20年間に118,497人を調査した研究では、部分的な大麻合法化である医療用大麻の合法化をされた州では他の州よりも、違法な大麻使用が1.4%、大麻使用障害が0.7%増加していると報告されている。

大麻使用を合法化、非犯罪化をした諸外国では生涯経験率は高止まりしたままであり、仮に、日本において合法化、もしくは非犯罪化した場合には、違法薬物の供給元である反社会勢力の売上が増加する可能性が高い。



日本での違法薬物使用、少量の違法薬物所持の非犯罪化

田中氏は合法薬物であるアルコールなどと違法薬物の有害性を比較し、他の違法薬物よりもアルコールなどの有害性が大きく、社会的費用の発生する有害性の低い違法薬物は非犯罪化するべきであると主張する。

しかし、現在の日本の飲酒や喫煙による健康問題が顕在している状況で、違法薬物の非犯罪化は現在の問題に加えて新たな問題を増加させるだけであり、田中氏のアルコールと他の違法薬物との有害性の比較は論点をずらしているだけである。



また、違法薬物使用までの閾値には個人差があり、違法薬物使用に抵抗感があまり無く違法という事実だけで使用までに至らないクラスタや、殆どの国民が20歳になったら一度は飲酒や喫煙をするように(飲酒の生涯経験率は92.5%、喫煙の生涯経験率58.7%(*9))興味本位で薬物を使用するクラスタが、非犯罪化により刑罰という抑止力が消滅し暴露された場合には、薬物使用の先駆者となり得る可能性が高い。

仮に友人同士などの集まりで1人が違法薬物を少量所持していた場合に、その場に居た全員が使用しても罪に問われないのであれば、新規薬物使用者は爆発的に増加し、一定の期間は新規使用率が諸外国の生涯経験率に近い水準で推移する事は容易に予測でき、薬物経験率の低い日本での非犯罪化は抑止とトレードオフになる。

使用者の増加は一定数の薬物依存症者が出現し、現時点よりも薬物依存症者は確実に増加する。一定数以上の薬物依存症者が出現すれば精神医療や回復施設、自助グループの需要が増加し、医療崩壊の可能性もある。


薬物使用と抑止はトレードオフ

薬物依存症当事者の経験談として沖縄ダルク施設長佐藤和哉氏は、シンナーから大麻、更に覚醒剤使用へと至った経験から、大麻使用で違法薬物使用への抵抗感が無くなれば、他の依存性の強い違法薬物使用への抵抗感をも無くし、ゲートウェイドラッグとなる事が多く、また、諸外国の合法化や非犯罪化の情報は違法薬物使用までの抵抗感が薄らぐと指摘する。(*53)

全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(以下、精神科における薬物精神疾患の全国調査)(*54)では、人生で初めて使用した薬物が大麻だった者が、精神科受診時に乱用していた主な薬物は覚醒剤が約41.1%、大麻が30.7%、多剤が8.7%、睡眠薬・抗不安薬が5.8%、市販薬(鎮咳薬・鎮痛薬・睡眠薬)が5.4%となっており、精神科受診時には大麻からハードドラッグである覚醒剤へ約41.1%が移行しており、佐藤和哉氏の主張を裏付ける結果となっている。



しかし、大麻そのものの作用によりハードドラッグへのゲートウェイとなるのでは無く、環境要因でゲートウェイになっている可能性がある点には留意すべきである。(*55)



「ダメ。ゼッタイ。」の効果


薬物乱用に苦しむ当事者、家族の声を受け止め、「破滅」ではなく「回復」や「再起」への道を示して欲しいと願う。国は、そろそろ「ダメ絶対」では効果があがらないことを認め、方向転換をする時期に来ているのではないだろうか。(*56)

田中氏は偏見や差別を生む、公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター(以下、乱用防止センター)の、大麻や覚醒剤などの薬物に一度でも絶対に手を出してはいけない「ダメ。ゼッタイ。」普及運動には効果が無いと主張する。

しかし、「ダメ。ゼッタイ。」普及運動の効果は、薬物使用経験を持たない者への薬物を使用しない理由についての設問(複数回答あり、薬物使用に関する全国調査)においての、「法律で禁止されているから」70%、「「身体や精神に悪影響があるから」56.8%、「家族や友人に迷惑をかけるから」37.9%、「やめられなくなると怖いので」29.5%という回答結果に国民の意識が現れている。

加えて厳しい摘発や、著名人などの薬物犯罪での巨額な損害賠償や活動自粛、過剰なバッシングなども抑止力として極めて効果の高いスティグマとなり、国民に対して一時的にでも社会から排除される事を想像させており、その結果として、諸外国と比較しても極めて低い日本の薬物使用生涯経験率に反映されていると考察した。



処方薬や市販薬依存の罹患率


だから違法薬物の生涯経験者が実際に低いとしても、日本は処方薬、市販薬の依存症罹患率はかなり高いと言われている。(*57)

田中氏は処方薬や市販薬依存の罹患率はかなり高いと主張しているが、乱用防止センターでは処方薬や市販薬の乱用防止啓発活動も行っており、精神科における薬物精神疾患の全国調査では、直近1年以内に薬物使用があった精神障害症例において、処方薬や市販薬が主な薬物である薬物関連精神障害患者が48.9%、それ以外の薬物での患者が51.1%である事が判明しており、この比率を2017年(平成29年)の厚生労働省の患者調査での精神作用物質使用(乱用する可能性のある物質や薬物)により依存症と診断されている総患者数である約22,000人に用いて患者数の推計をした場合、処方薬や市販薬が主な薬物である薬物関連精神障害患者は10,758人、それ以外の薬物での患者が11,242人になった。



薬物使用に関する全国調査での直近1年の経験率は、鎮痛薬が63.1%(約4711.6万人)、精神安定薬が5.7%(約425.6万人)、睡眠薬が6.7%(約500.2万人)であり、違法薬物を含むその他の薬物の0.24%(約17.9万人)と比較した場合には顕著な差となっており、この経験率を考慮した場合の処方薬や市販薬の依存症罹患率は極めて低いと考察するのが妥当である。


出典・2020年(令和2年)における組織犯罪の情勢【暫定値】 | 警察庁組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課(*58)

他方で覚醒剤事犯においては再犯者率が高く、直近10年では59.3%から2020年(令和2年)上半期は68.9%と著しく増加しているが、前述の日本の薬物使用生涯経験率は3%未満で推移しており、薬物問題全体像を俯瞰して捉えた場合、抑止効果の高い「ダメ。ゼッタイ。」を維持しつつ、再犯率を下げる施策が最適解であると考察した。

「ダメ。ゼッタイ。」は、それ自体が違法薬物未経験者に向けた予防の為であり、その当事者や家族に対して向けたものでは無いと啓発すべきである。

また、「ダメ。ゼッタイ。」や薬物使用者の事件報道などが犯罪者というレッテル張りを促し、当事者の社会復帰を妨げると主張するが、覚醒剤使用者の事件が起きている事実や精神障害者が存在する事実がある事から、その法令違反をしたパーソナリティーや精神障害の寛解度を医学的根拠で提示する事が、国民からの理解が得られやすい可能性があると考察した。

日本では思想信条の自由が保障され、万人で考え方や価値観は千差万別であり、ある事象に対しての受容量は個人差がある事から、強制的に受容しなければいけない社会では無く、受容するか否かの自由を保障しなければならない。


令覚醒剤取締法違反 入所受刑者の精神診断別構成比(男女別)| 令和2年版 犯罪白書 -薬物犯罪- | 法務総合研究所 法務省
出典・2020年(令和2年)版 犯罪白書 -薬物犯罪- | 法務総合研究所 法務省(*4)



保護観察と薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予制度

薬物使用等の罪を犯す者には薬物依存が要因にある事が多い事から、再犯防止、改善更生を促す事を目的に、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律と更生保護法が2016年(平成28年)6月から施行されている。これは3年以下の刑期の場合に刑の一部について1~5年の間で刑の執行を猶予し、執行猶予の期間中に保護観察に付せる制度である。(刑の全部が執行猶予の者でも保護観察に付せる。)(*59)


保護観察
保護観察とは,犯罪をした人または非行のある少年が,社会の中で更生するように,保護観察官及び保護司による指導と支援を行うものです。刑務所等の矯正施設で行われる施設内での処遇に対し,施設外,つまり,社会の中で処遇を行うものであることから,「社会内処遇」と言われています。(*60)

仮釈放制度だけでは仮釈放期間中も刑期が進行している事から残期期間でしか保護観察に付せず、社会内処遇が短期間になる点を改善し、刑の一部を執行猶予とする事で保護観察期間を仮釈放制度よりも長期間に設定するものであり、保護観察期間終了後も継続的に支援機関に繋がる事を促すものである。(*61)

保護観察付き執行猶予者には一般遵守事項とは別に、専門的処遇プログラムである薬物再乱用防止プログラムを受ける特別遵守事項が課せられる。遵守事項違反や再犯等があった場合には不良措置として、仮釈放者に対する仮釈放の取り消し、保護観察付き執行猶予者に対する執行猶予の取り消しなどの措置がなされる。(*62)




刑の一部執行猶予制度の概要 | 平成28年版 犯罪白書 -薬物犯罪- | 法務総合研究所 法務省
出典・6 刑の一部執行猶予制度 | 平成28年版 犯罪白書 | 法務総合研究所 法務省(*59)



薬物専門裁判所、ドラッグ・コート

日本では導入から日が浅く調査などが少ないが、日本の薬物事犯者の処遇のモデルとなった米国の薬物専門裁判所であるドラッグ・コートではエビデンスとなる多くの調査が行われている。

ドラッグ・コートは1989年にコカイン乱用者が激増したフロリダ州において、薬物依存症者は犯罪として処罰しても再犯が減少しない理由には薬物依存症がある事から、薬物依存症での再犯を抑制する為に刑事司法制度に治療(治療裁判所に処遇されたプログラム。以下、プログラム)を導入したドラッグ・コートが開始された。現在では全米で3,100以上が存在している。(*3)

ドラッグ・コートで裁判を受ける被告人は有罪を認めてその刑が確定した後に、薬物が原因であれば、プログラムに一定期間参加する事を条件に刑の執行を猶予される。その一定期間に薬物使用が無い場合には刑務所に収監はされず、刑の執行を免除される。(*63)

2013年の米国ハワイ州での費用の比較をすると、薬物事犯を治療につなげる事で収監しないドラッグ・コートでは6,300ドル、連邦刑務所では46,000ドルの費用が発生する。ドラッグ・コートの利用は、収監されるにあたり全収容者の75%に違法薬物が関連し、刑務所の過密が続く米国での社会的費用を抑制する役割を担っている。(*63)

法務省の報告書における1,157人のドラッグ・コート参加者と627人の非参加者を比較した調査では、18カ月後の薬物検査で陽性となったのはドラッグ・コート参加者で29%、非参加者で46%だった。また、同調査において直近6ヶ月以内に犯罪行為に関与した者は、ドラッグ・コート参加者が31%、非参加者が43%であった。(*3)

このようにドラッグ・コートに参加する事で受けるプログラムには、犯罪減少に効果があるとされているが、平均的な効果以上の犯罪減少に貢献したプログラムがある一方で、約15%のプログラムでは犯罪の抑止または増加への影響が無く、約6%のプログラムでは犯罪増加に関連したとする調査結果もある点に留意する必要がある。(*3)

プログラムの効果を高める要因として、ドラッグ・コート参加者が同時に抱えている精神的な問題や医療、職業や教育に関する支援をした場合には、有意な効果があるとされている。また、適切な支援の内容には個人差があり、不適切な支援の受け入れを義務付けた場合にはドラッグ・コートの参加結果に悪影響をもたらす要因となる可能性があるとされ、ドラッグ・コート全参加者に対しての同一内容の支援は推奨されていない。(*3)

このような研究結果は、犯罪者処遇における重要な指針となる RNR原則(Risk-Need-Responsivity principle)に沿うものとされている。(*3)


RNR原則
RNRモデルとは、(a) 再犯リスクの高さに応じ、(b) 再犯を誘発する要因に焦点を当て、(c) 犯罪者に適合するように実施することを重視する犯罪者処遇のモデルである。RNRモデルには再犯減少のエビデンスが認められるとして、日本の保護観察にも定着させるべきとの指摘がある。(*64)



より薬物依存症者を治療に繋がり易くする為には

日本においては違法薬物の使用や所持に対しての法が厳格に運用されており、受診すると逮捕される可能性がある為、多数の者を治療に繋げる為には田中氏の主張する非犯罪化に一定の理解はできる。しかし、諸外国との薬物生涯経験率に顕著な差がみられ、圧倒的に抑止されている日本においての非犯罪化の問題点は、前述のように爆発的な使用者の増加を考察できる点である。

薬物依存症者を治療に繋がり易くする為の施策を考察する為、薬物生涯経験率の著しく低い日本と経験率の高い諸外国との差違を比較した結果、その差違は入手しやすさと取締り状況の項目に現れており、生涯経験率の高い諸外国では薬物の入手は比較的に容易であり取締り状況も緩く、一方で日本においての薬物の入手は簡単にできるものでは無く取締りも厳しい点である。



比較対照とした項目を勘案すれば、仮に非犯罪化した場合でも違法薬物の供給元を厳しく取締り、違法薬物への需要が爆発的に増加しても供給を遮断する事が、違法薬物使用者の爆発的な増加を抑止させる事が可能である。しかし、ここで治療への繋がり易さを優先し、非犯罪化で違法薬物使用者が爆発的に増加する可能性が高いギャンブルをする必要性は全く無い。

以前の記事(*65)でもした提案をより発展させた提案を挙げるならば、違法薬物の営利目的、譲受、譲渡、栽培、輸出入、製造などした者は、10年以上の懲役もしくは禁固として現在よりも厳罰化する。違法薬物使用者が逮捕や自首した際に入手先を自供しなかった場合には同様の刑罰とするが、入手先を自供した場合には依存症回復プログラムへの参加などを条件に刑の全部を執行猶予とする。

非犯罪化せずとも現行の日本で運用されている合意制度により入手先を自供し、刑の全部が執行猶予となれば、違法薬物の使用を絶ちたいと考慮している者が治療に繋がり易くなる可能性があり、加えて、執行猶予と保護観察で刑罰という抑止力を維持しつつ継続的に支援機関に繋がる事にもなる。また、自供により供給元の摘発の強化にもなり、供給を遮断すれば、再犯の可能性もより低くなると考察した。


合意制度
薬物犯罪は、一般に犯罪組織が関与する密行性の高い犯罪類型であり、多数人が関与することや複数の者の間の禁制品の流通を伴うことなどから、合意制度は、首謀者の関与状況等を含めた事案の解明のために、犯罪の実行者等の組織内部の者から供述や証拠物を得て捜査を進展させる上で、有用な捜査手法となり得る。(*4)

欧米などの諸外国で厳罰化でも効果がない理由の一つに、陸伝いに違法薬物が流通している事が考察できるが、四方を海に囲まれている日本では簡単には持ち込めず、水際対策が有効である事もあり、2019年(令和元年)の財務省の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況では違法薬物摘発が強化されている。

これは、最近の諸外国の大麻合法化や非犯罪化の影響による大麻事案検挙者急増への対策や、薬物事犯者に対する刑の一部執行猶予制度や保護観察制度だけでは再犯が減少しない事実への対策の可能性もある。


密輸形態別の摘発件数・押収量の推移
(*66)参照元・2019年(令和元年)の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況(2020年(令和2年)2月12日)詳細 | 財務省

供給元の摘発を強化し、供給を遮断すれば薬物使用率が低くなるのは至極当然である。取締り強化の効果は、薬物使用の入手可能率の推移(薬物使用に関する全国調査)において、2019年(令和元年)度と前年までの平均値を比較して、入手可能率が著しく減少している事に現れている。次回の調査では直近1年の薬物経験率の減少に期待ができる。





違法薬物少量所持や使用の非犯罪化をは詭弁である


薬物使用の生涯経験率の推移(1995年~2019年) | 薬物使用に関する全国住民調査 (2019)
出典・薬物使用に関する全国住民調査 2019年(令和元年) | 薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究 | 2019年(令和元年)度 総括・分担研究報告書 | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 研究代表者 嶋根拓也氏(*9)

2017年から大麻生涯経験率が増加しているが、他の薬物生涯経験率においては急激な変化は見られない事から、最近の諸外国の大麻合法化や非犯罪化の動きに合わせて、嗜好用大麻が安全であるというデマ情報がインターネットにより拡散されている事と関連していると推測した。


出典・2020年(令和2年)における組織犯罪の情勢(暫定版) | 警察庁組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課(*58)

大麻生涯経験率の増加に合わせて、2019年(令和元年)の大麻事犯検挙人員数は過去最多を更新し、2020年(令和2年)上半期の大麻事犯検挙人員においても前年を上回っており、2021年(令和3年)1月に厚労省が大麻使用罪の創設を検討する有識者会議を立ち上げる事を決めた。(*67)


このような国際情勢下で逆に取り締まりを強化したいのは、覚せい剤の検挙者数が減っている事により、自分たちの組織の存続が危ぶまれる厚生労働省麻薬取締部と警察の自己保身以外に考えられないというのが、私の率直な感想です。(*68)

大麻使用罪創設についてGreenZoneJapan代表理事であり医師である正高佑志氏は、厚労省麻薬取締部と警察の保身であると主張するが、前述した大麻使用により精神疾患発症リスクの高くなる20代以下の検挙人員が68.8%(1,557人)と大半を占めている事から、厚労省が日本国憲法二十五条により社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めた業務の一環として、大麻使用罪創設が検討されたと考察するのが妥当であり、本稿で述べた考察から厚労省麻薬取締部や警察の保身では無い可能性は非常に高い。


日本国憲法
第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
二 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。(*69)


この大麻使用罪の創設に反対するのは正高氏の他にも、田中氏や亀石倫子氏(弁護士)などがいる。



日本では大麻などに対して違法だからという理由で漠然と否定的な事や、アルコールが許容され過ぎている事が思考停止だと糾弾し(田中氏)、アルコールと比較して害が少ない事や逮捕により社会負担費が増大するという理由で非犯罪化を主張する。

しかし、薬物は多数の研究がなされており、大麻は他の依存症や精神疾患を誘発する事実も判明しており、ゲートウェイドラッグとなり依存性の高い覚醒剤に移行する者が約40%も存在する。

また、逮捕により社会負担費が増大すると主張するが、それは刑務所の過密状態が続き、薬物生涯経験率が高水準で推移している諸外国のエビデンスを基にした想定であり、日本では厳しい取り締まりや田中氏が差別や偏見を生むと主張し阻止を目論む「ダメ。ゼッタイ。」普及運動の成果により、長年に渡り薬物生涯経験率が著しく低く推移しており、社会負担費が増大する可能性は低い。

加えて、「ダメ。ゼッタイ。」が高い抑止効果を上げている事も調査で判明している。

大麻使用罪創設反対派はこのような事実を全く無視し、諸外国とは全く薬物事情の異なる日本において海外での薬物施策である薬物非犯罪化を主張しているが、生涯経験率が著しく低い日本での非犯罪化は、逆に公衆衛生上の問題が増大し、社会負担費も増大する可能性や、反社会勢力の薬物の売上が増大する可能性が高い。

違法薬物の問題は個人の問題では無く、非犯罪化によって問題が大多数の者に発生すれば、ミクロの問題はマクロの問題になり社会問題化する。現在のアルコールなどの健康問題に加えて新たな問題を増加させるだけであり、アルコールなどと他の薬物との有害性の比較で論点をずらした主張や、本稿で取り上げた田中氏らの主張は詭弁と言わざるを得ない。


出典・公益法人の各機関の役割と責任 - 内閣府
出典・公益法人の各機関の役割と責任 - 内閣府(*70)

田中氏は公益法人の代表であり、税制優遇を受ける公益法人は国民の信頼が無くては成り立たないとされ、受益者たる不特定多数の国民の利益の増進に寄与するものでなければいけないが、田中氏の違法薬物の少量所持や使用を取り締まるべきでは無いという主張は、明らかに特定の受益者だけの立場に立った利益相反する行為である。

国庫補助金が交付されている公益法人の代表としての忠実義務に反する行為である可能性があるが、田中氏にはその自覚が全く無く無責任である。



*2021年2月10日加筆(段落「違法薬物が脳に及ぼす影響」の「大麻が脳に及ぼす影響」を、「大麻が誘発する精神疾患の研究」を加筆、修正しました。)
*2021年2月8日加筆(段落「大麻が誘発する疾患の研究」を加筆、修正しました。「違法薬物少量所持や使用の非犯罪化をは詭弁である」を修正しました。)
*2021年2月6日加筆(段落「大麻が誘発する疾患の研究」を加筆、修正しました。)
*2021年1月20日加筆(段落「田中氏の主張は詭弁である」を「薬物の少量所持や使用の非犯罪化は詭弁である」に段落名を変更し、加筆、修正しました。)
*2021年1月15日加筆(段落「田中氏の主張は詭弁である」に加筆しました。)


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(*1)参照元・国連は大麻及び大麻樹脂を附表Ⅳから削除を決定。「最も危険で医療価値なし」という分類を変更し、医療価値を認める | 日本臨床カンナビノイド学会
(*2)参照元・米下院、大麻規制権限を州政府に移す法案可決 | ロイターニュース - 国際:朝日新聞デジタル
(*3)参照元・法務総合研究所研究部報告62 第4章 諸外国における薬物事犯者処遇 | 法務省
(*4)参照元・2020年(令和2年)版 犯罪白書 -薬物犯罪- PDF版 | 法務総合研究所 法務省
(*4)参照元・2020年(令和2年)版 犯罪白書 -薬物犯罪- HTML版 | 法務総合研究所 法務省
(*5)参照元・嗜好用マリフアナの合法化「奨励しない」 WHO事務局長 | AFPBB News
(*6)参照元・Prisoners in 2019 | U.S. Department of Justice 米国司法省
(*6)参照元・Annual Determination of Average Cost of Incarceration Fee (COIF) | Office of the Federal Register
(*7)参照元・Criminal Justice DrugFacts | National Institute on Drug Abuse 米国国立薬物乱用研究所
(*7)参照元・Substance Abuse and America’s Prison Population 2010 | Partnership to End Addiction
(*8)参照元・人口推計(2020年(令和2年)7月1日現在確定値) | 総務省統計局
(*9)出典・薬物使用に関する全国住民調査 (2019)| 薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究 | 令和元年度 総括・分担研究報告書 | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 研究代表者 嶋根拓也氏
(*10)参照元・Prof Michael Farrell, MB | Natasha K Martin, DPhil | Emily Stockings, PhD | Annick Bórquez, PhD | Javier A Cepeda, PhD | Prof Louisa Degenhardt, PhD | Robert Ali, MD | Lucy Thi Tran, BPsySc | Prof Jürgen Rehm, PhD | Prof Marta Torrens, PhD | Prof Steve Shoptaw | Rebecca McKetin, PhD (2019) | Responding to global stimulant use: challenges and opportunities | THE LANCET
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(*10)参照元・Fernando A Wagner , James C Anthony (2002)| From first drug use to drug dependence; developmental periods of risk for dependence upon marijuana, cocaine, and alcohol |PubMed PMID:11927172
(*10)参照元・N Kawakami , N Takatsuka, H Shimizu, A Takai (1998) | Life-time prevalence and risk factors of tobacco/nicotine dependence in male ever-smokers in Japan |PubMed PMID:9744133
(*11)参照元・2020年(令和2年)版 犯罪白書の概要 | 法務総合研究所 法務省
(*12)参照元・WHO世界戦略を踏まえたアルコールの有害使用対策に関する総合的研究 | わが国の成人の飲酒行動に関する全国調査2013年(201315050A0002.pdf) | 国立病院機構 久里浜医療センター 研究代表者 樋口進氏
(*13)参照元・AUDIT (Alcohol Use Disorders Identification Test) | 国立病院機構久里浜医療センター 精神科 真栄里仁氏
(*14)参照元・人口推計(平成25年7月1日現在確定値) | 総務省統計局
(*15-1)参照元・思春期に大麻を摂取してなければうつ病が防げたかも 米国で40万件 | ニューズウィーク日本版
(*15-1)参照元・Gabriella Gobbi, MD, PhD1; Tobias Atkin, BA1; Tomasz Zytynski, MD1; et al February 13, 2019 | Association of Cannabis Use in Adolescence and Risk of Depression, Anxiety, and Suicidality in Young AdulthoodA Systematic Review and Meta-analysis
(*15-2)参照元・異質性の検定 test for heterogeneity - 日本理学療法士学会
(*16-1)参照元・大麻合法化が急速に進む米国 依存性を警告する研究成果も次々発表 | J-CAST ニュース
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(*16-3)参照元・信頼区間 - ウィキペディア(Wikipedia)
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(*57)引用元・「国際薬物乱用・不正取引防止デー」厚労省への要望書 田中紀子氏 | NEXT MEDIA Japan In-depth
(*58)参照元・2020年(令和2年)における組織犯罪の情勢【暫定値】 | 警察庁組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課
(*59)参照元・6 刑の一部執行猶予制度 | 平成28年版 犯罪白書 | 法務総合研究所 法務省
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(*62)参照元・3 保護観察対象者に対する措置 | 平成22年版 犯罪白書 | 法務総合研究所 法務省
(*63)参照元・公益財団法人日工組社会安全研究財団助成研究 地域社会における薬物事犯者の再犯防止支援 | 特定非営利活動法人アジア太平洋地域アディクション研究所 研究代表者 尾田真言氏
(*63)参照元・公益財団法人日工組社会安全研究財団助成研究 薬物犯罪の現状と課題 | 日本犯罪社会学会 編集:河合幹雄氏 朴元奎氏 小関慶太氏
(*64)参照元・リスク・ニード・リスポンシビティモデルを踏まえた保護観察処遇についての考察 | 勝田聡氏
(*65)参照元・実刑10年で薬物事犯は減る?非犯罪化は間違っている
(*66)参照元・令和元年の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況(2020年(令和2年)2月12日)詳細 | 財務省
(*67)参照元・大麻取締法 新たな罰則検討へ 近く有識者会議立ち上げ 厚労省 | NHKニュース
(*68)引用元・大麻使用罪の創設に反対します | GreenZoneJapan代表理事 正高佑志氏
(*69)引用元・日本国憲法 | 電子政府の総合窓口(e-Gov)
(*70)出典・公益法人のガバナンスにおける留意事項 | 公益法人の各機関の役割と責任 | 国・都道府県公式公益法人行政総合情報サイト 公益法人information
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田中氏の陳情の責任問題



公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(以下同会)田中氏の陳情により、2016年3月1日に、高井宗志衆議院議員より衆議院に「ぱちんこ遊技機の射幸性管理に係る規制の在り方とのめりこみ・ギャンブル依存症問題の関係に関する質問主意書」が提出された。

この質問主意書には、元経産省官僚であり、日本の制度アナリストである、宇佐美典也氏が作成を手助けしている。(*1)


他方でパチンコ業界には、パチンコメーカー又はホールが遊技くぎを改変し遊技機の射幸性を向上させる不正改造が蔓延していることが平成二十七年六月から遊技産業健全化推進機構によって実施された遊技機性能調査によって明らかになっている。  このようなパチンコ業界に蔓延する不正改造がパチンコ産業のヘビーユーザー化を加速し、いわゆる「のめりこみ・ギャンブル依存症」の罹患者及びその家族の家庭環境・経済環境に深刻な影響を与えていることが懸念される。そこで「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風適法」という)における射幸性の管理の在り方について以下の諸点に関して質問する。(*2)

注釈:ホール=パチンコ店


この質問主意書で重要な点は、射幸性とギャンブル依存症の関連性である。質問主意書を要約すると、「遊技機の射幸性を向上させる不正改造がギャンブル依存症に深刻な影響を与えている懸念がある」である。

しかし、ギャンブリング障害(ギャンブル依存症)研究者である、公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授篠原菊紀氏(以下、篠原教授)は、「アミューズメントジャパン」の記事上で、2017年12月8日時点(質問主意書は2016年3月1日)で「エビデンスベースでは、現時点では分からない」と明言している。

つまり、田中氏は、射幸性とギャンブル依存症の関連性のエビデンスが無い陳情をしたという事になる。


──そもそも出玉率(射幸性)と遊技障害者の人数に因果関係はあるんでしょうか?
篠原教授 エビデンスベースで話すなら、「現時点では分からない」というのが正確な答えになります。今回初めて、日本の「直近一年」の推計値が分かったわけです。依存対策としての効果を測るなら、規制後にこの数がどう変わるか、規制と依存の人数の変化に因果関係があるのかを調べなくてはなりません。 (*3)



ギャンブル依存症の関連性

この質問主意書の直前より、一連の違法改造問題で、約290万台が撤去された。

これにより、不正改造をして射幸性を向上させた遊技機が撤去されたが、射幸性を低下させたにも関わらず、不正改造機が撤去された後の2020年の調査では、コロナ下の影響も留意しなければいけないが、直近1年のギャンブル依存症疑い率は増加している。


data

つまり、ギャンブル依存症は減っておらず、ギャンブル依存症問題と射幸性が関連していない事を実証しているのである。また、篠原教授は、射幸性は実験室条件での継続回数の増加をエビデンスにしており実証的では無いと指摘している。



篠原教授らの最新のパネル調査(縦断的調査)、「パチンコの出玉性能とパチンコ・パチスロ遊技障害の因果関係ーパネル調査による研究ー 」IRゲーミング学研究 (18)2-12,2022年3月(堀内由樹子,秋山久美子,坂元章,篠原菊紀,河本泰信,小口久雄,岡林克彦)では、射幸性とギャンブル依存症リスクとの因果関係は無かった事が判明している。





ギャンブル依存症のリスク変動

射幸性によるギャンブル依存症のリスクを、ギャンブル障害およびギャンブル関連問題実態調査報告書(*4)とギャンブル等依存症の治療・家族支援に関する研究総合研究報告書(*5)の調査から検証する。

調査からは、当たりまでの考察過程が単純で払い戻し率が低く抑えられており、勝った時の金額が高く、射幸性の高い宝くじ等は依存症リスクが低く、当たりまでの考察過程が多様で、遊技者の技量により遊技者間に差が出やすく、勝った時の金額が抑えられており、払い戻し率が高く、射幸性が抑えられている、パチンコやパチスロの依存症リスクが高くなる事を示唆していた。

これは、射幸性が依存症リスクに関連しているのでは無く、払い戻し率の高低や、そのゲーム構造によりリスクが変動すると考察できる。

言い換えるならば、ギャンブルの種類によって依存症リスクが変動しており、研究調査等で行われたギャンブルの調査結果が、全てのギャンブルに当てはまらない事を示唆している。



陳情の目的

ここで田中氏の目的を明確にしたい。田中氏は、第190回国会内閣委員会の高井氏の質問や、河野太郎国家公安委員長(当時)の答弁を称賛するツイートをしている。



河野氏の下記答弁(抜き打ち検査などで不正改造により射幸性を高めたパチンコ機を撤去する)への賛同から、田中氏のエビデンスの無い陳情の目的は「ギャンブル依存症の懸念があるから射幸性の高いパチンコ機の撤去を早急に実現して下さい」である。

逆に、ギャンブル依存症の懸念をせずに陳情したのであれば、射幸性の高いパチンコ機の撤去以外に目的が無くなるので、それでは田中氏の運営する会の目的に全く合致しない。

また、田中氏は「速やかな撤去、ぬき打ち検査、検定取り消し、行政処分」を明言した河野氏の答弁が、陳情の目的に合致する完璧な答弁だったから嬉々としたツイートを行ったと感じた。


○河野国務大臣 違法な機械が大量に出回っていたわけでございますから、かなりの量があるというふうに承知をしておりますので、一遍にというわけにはいきませんが、これは最大限速やかに撤去するというのは当然のことだと思いますので、団体にもきちんとそれはやらせるように指導してまいりたいと思っておりますし、今後は、まず、機構にきちんと抜き打ちでチェックをしていただいて、違反があれば、先ほど申し上げましたように、メーカーに対しては型式検定の取り消し、ホールに対しては営業停止を含む行政処分を科すという警察の意思を明確に出していきたいというふうに思っております。 (*6)

更に、田中氏の陳情にエビデンスが無いにも関わらず、「ギャンブル依存症の懸念があるから射幸性の高いパチンコ機撤去を早急に実現して下さい」であったと裏付けるような田中氏の記事もある。


ぎゃ~!嬉しい~!!!だってですよ、この問題取り上げられてからもう、2年近くの時間がたってるのに、全然機械の入れ替えなんて進んでないんですから。(*7)

繰り返すが、射幸性とギャンブル依存症の関連性のエビデンスは無い。これはエビデンスの有無を確認せずに陳情したという事になる。



田中氏の陳情の認識



費用の明確な認識

また、田中氏は、台数と価格から1兆円という費用を算出して、明確にその費用を認識している。これは、パチンコ業界に高額な費用が発生する事を事前に想定していたのだろうか。それを喜んでいるようにすら感じる。





第三者に被害がある事を認識

下記ツイートでのやりとりでは、「河野氏の答弁で別の被害者を生み出した側面がある」というリプライに対して、田中氏は「その現実も踏まえる」「メーカーにも負担」とリプライしている。つまり、自身のエビデンスの無い陳情で、第三者であるパチンコ業界に被害があった事を認識しているという事になる。




法的な問題点

私は法曹関係者ではないので、その点を留意して下さい。

今回検証した、田中氏のエビデンスの無い陳情によって、第190回国会内閣委員会の高井氏の質問により、河野氏の「速やかな撤去」の明言を引き出した事は事実である。


○高井委員 大臣にお聞きしたいと思いますが、パチンコメーカーの業界団体である日工組というところがありますが、ここは、現在問題のある遊技機の自主回収を段階的に進めていくと。先ほど大臣は、早急にというか、かなり力強くおっしゃっていただいたんですが、段階的に。私、ちょっと雑誌とかをいろいろ読んだら、何か、何年かかけてというような表現をしている雑誌もありました。こういった方針だと。
 しかし、不正に改造された、射幸性が高くなった遊技機が市場に大量に出回っているということがこの調査によって明らかになったわけでありますから、警察としては、業界のこうした取り組み、段階的にというような対応を黙認するということであれば、これはパチンコ依存症問題を放置、拡大することにつながるとも考えるんですけれども、大臣の見解はいかがでしょうか。(*6)

○河野国務大臣 違法な機械が大量に出回っていたわけでございますから、かなりの量があるというふうに承知をしておりますので、一遍にというわけにはいきませんが、これは最大限速やかに撤去するというのは当然のことだと思います(*6)



甚大な費用

約290万台規模のパチンコ機撤去であれば、パチンコ機1台の価格が約40万円前後とすると機械代だけで1兆円強の規模となり、入れ替え費用等を含めるとそれ以上の費用が発生している。段階的な入れ替えは、高額な入れ替え費用や倒産等のホールの負担を考慮していたと考えられる。

しかし、田中氏のエビデンスの無い陳情によって河野氏が「速やかな撤去」を明言し、ホール負担を考慮して段階的な入れ替え予定だったものが、ホール負担を考慮せずにパチンコ機の「速やかな撤去」がされた、というのが真実ではないだろうか。

急激で甚大な費用の発生はホール経営を圧迫した要因の一つであり、田中氏のエビデンスの無い陳情は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十七条の「重大な過失」と事実認定される可能性がある。

また、田中氏の嬉々としたツイートや明確に費用を認識しているツイート等は、エビデンスの無い陳情が影響を及ぼし、撤去を加速させる事でホール負担が増えるという事情を認識していた事が窺え、「悪意」と事実認定される可能性がある。


一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百十七条
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。(*8)

更に付け加えれば、田中氏のエビデンスの無い陳情は、民法第六百四十四条の善管注意義務に違反している可能性がある。事実認定されれば、同会に損害が生じた場合には役員に対して、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(第百十一条)により損害賠償責任が発生する。


民法
第六百四十四条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。(*9)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百十一条
 理事、監事又は会計監査人(以下この款及び第三百一条第二項第十一号において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、一般社団法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(*8)

その当時に営業していた約1万軒のパチンコ店が個別に訴訟を提起して、田中氏のエビデンスのない陳情が、悪意、重大な過失、善管注意義務違反と事実認定されれば、田中氏や運営する同会には損害賠償責任が発生する。



本末転倒

最後になるが、その1兆円強の費用を最終的に負担したのは、全国のパチンコユーザーだという事実を忘れないで頂きたい。

パチンコやパチスロは遊技であるが故、技術介入力の高低により収支が増減する。技術介入力の高い遊技者は負け額を抑えられ、常勝している者も存在するが、ギャンブル依存症当事者に圧倒的に多い、技術介入力の低い遊技者は負け額を抑えられない。これは事実である。

即ち、撤去によりギャンブル依存症が減少していないという事実は、重症化の要因の一つである金銭問題を悪化させた懸念すらある。なぜなら、1兆円強の費用の大部分を負担したのは、技術介入力の低いギャンブル依存症当事者や一般ユーザーだからである。依存リスクを増大させたのは、田中氏自身であり本末転倒である。



*2022年9月29日加筆(全文を読みやすく、加筆、修正しました。)
*2022年12月19日加筆(段落「ギャンブル依存症のリスク変動」を加筆致しました。)


合わせて読みたいエントリー



(*1)参照元・御礼!ギャンブル等依存症対策基本法成立です - in a family way - 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏
(*1)参照元・そうだ調査へ行こう!です - in a family way - 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏
(*1)参照元・ギャン妻こそ信じてました・・・です - in a family way - 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏
(*1)参照元・宇佐美典也さんです - in a family way - 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏
(*1)参照元・人のご縁です - in a family way - 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏
(*2)引用元・ぱちんこ遊技機の射幸性管理に係る規制の在り方とのめりこみ・ギャンブル依存症問題の関係に関する質問主意書 - 衆議院
(*3)引用元・篠原菊紀教授に聞く依存問題の真実 - Amusement Japn
(*4)参照元・令和2年度依存症に関する調査研究事業「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題実態調査」報告書 | 研究代表者:独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
(*5)参照元・厚生労働科学研究費補助金障害者政策総合研究事業ギャンブル等依存症の治療・家族支援に関する研究令和元年ー令和3年総合研究報告書 | 研究代表者:松下幸生氏(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)
(*6)引用元・第190回国会内閣委員会第14号(平成28(2016)年4月27日(水曜日))会議録本文-衆議院
(*7)引用元・感激!高井崇志先生&河野太郎大臣です - 田中紀子 - アゴラ
(*8)引用元・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 - 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
(*9)引用元・民法 - 電子政府の総合窓口 - e-Gov イーガブ




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公益法人代表としての資質

昨今、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(以下、同会)田中紀子氏は、明確なエビデンス無しに新型コロナに乗じて、新型コロナ流行時にパチンコを遊技するのはギャンブル依存症などとこじつけ、また、政権批判を行う等などのイデオロギー的で極端な発言が目につく。

そこで本稿では、田中氏の「公益法人の代表としての発言は適切なのか」を検証する。



思想・良心の自由の保証

田中氏には日本国憲法第十九条により、思想・良心の自由が保証されている。これは表現の自由や言論の自由に繋がる自由権である。私は田中氏の自由権を侵害する考えは全く無い。


日本国憲法
第十九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。(*1)


公益法人の各機関の役割と責任

下記の表は、内閣府が作成した「公益法人の各機関の役割と責任」における「公益法人のガバナンスにおける留意事項」と公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(法人コードA024871)の法人基本情報である。


法人基本情報
公益目的事業を「ギャンブル依存症に係る啓発・情報提供事業」並びに「ギャンブル依存症に係る予防教育事業」を行いもって社会に貢献する (*2)

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(法人コードA024871)の法人基本情報
出典・国/都道府県公式公益法人行政総合情報サイト 公益法人information

田中氏のツイッターアカウントのプロフィールには、「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表田中紀子」と記載されているので、ギャンブルに関わるツイートや記事は全て「ギャンブル依存症に係る啓発・情報提供事業」や「ギャンブル依存症に係る予防教育事業」の一環である。

その他のツイートや記事など、事前に個人的意見と断りを入れたとしても、「公益法人代表田中紀子」の意見である。



公益法人のガバナンスにおける留意事項

2020年12月の、公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議における「公益法人のガバナンスの更なる強化等のために - 最終とりまとめ」では、 下記のように結論づけている。


「公益法人は、税制上の優遇措置や国民からの寄附を受け、不特定かつ多数の人々の利益のために公益目的事業を実施する存在であり、社会的な信頼確保が特に重要である。そのため、各法人が自らの活動について国民全体に向けて積極的に説明や情報開示を行うことで透明性を確保することや、「公益法人としてのガバナンス」を確保することが求められている」(*3)

また、公益法人のガバナンスにおける留意事項には、公益法人は税制優遇を受けて活動する法人であり、国民の信頼を確保されるよう務める義務があると記載されている。


公益法人のガバナンスにおける留意事項
出典・公益法人の各機関の役割と責任 - 内閣府


公益法人のガバナンスにおける留意事項

国民の信頼あっての公益法人
公益法人についても、ガバナンスに関するルールは主に一般法人法に定められており、基本的には一般法人と共通です。しかし、公益法人は税制優遇を受けて活動する法人であり、国民の信頼なくしては成り立ちません。このことについて、役員等の関係者が自覚を持っていただくことが重要です。(*4)

公益法人の公益目的事業は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければなりません。(*4)

理事・監事には、事業・財産管理の義務や責任がある理事や監事は、報酬の有無にかかわらず、公益法人に対する国民の信頼が確保されるよう、事業や財産の管理を適切に行う必要があります。これは法律上の義務でもあり、これを怠ったことにより法人に損害が発生した場合には、損害賠償などの責任を問われることになります。(*4)



ギャンブル依存症の誇大表現や捏造



田中氏は、上記ツイートでギャンブル依存症は相当数が存在しているとしているが、直近の横浜市都市整備局(令和2年3月23日)の「横浜市民に対する娯楽と生活習慣に関する調査」では、過去1年以内でギャンブル依存症が疑われる者の推計値が0.5%であり、生涯ではギャンブル依存症の疑われる者の推計値が2.2%だった。


ギャンブル等依存症調査比較

これは、厚生労働省の2017年のギャンブル依存症の調査(直近1年以内疑い約0.8%生涯疑い約3.6%)よりも、やや低い数値である。あくまでもスクリーニングテストであり「ギャンブル依存症推計320万人」は「疑い」であるにも関わらず、田中氏は公益法人の代表でありながら「ギャンブル依存症推計320万人」と「断定」し、エビデンスに基づかない発言をしている。

また、調査に使用されたスクリーニングテストであるSOGSのカットオフ値は過剰診断の問題点が指摘されており、5点以上では無く、7~8点以上が適切である点にも留意が必要である。



全世界にデマを拡散

こちらの動画では、全世界に対して「日本では320万人以上の人がギャンブル依存症と闘っている」とデマを拡散している。

海外メディア(チャンネル登録者数270万人)の取材に対して2017年の調査で、あくまで「生涯でギャンブル依存症が疑われる者の推計値が約320万人」と発表されているものを、「320万人がギャンブル依存症と闘っている」という誤った認識を世界に向け発信している。これは日本人への「スティグマ」そのものであり、なぜ、日本人であり公益法人代表である田中氏が慰安婦問題のような手法を用いるのだろうか。


and as a result, over 3.2 million people in japan are fighting against their gambling addiction.






NHKクローズアップ現代(2022/12/14)でのデマ

NHKクローズアップ現代「やめたくてもやめられない。広がるオンラインカジノの闇」に出演した田中氏は、2017年の久里浜医療センター調査結果の数値である「ギャンブル依存症320万人が罹患」(*5)と発言したが、この調査で使用されたスクリーニングテストである「SOGS」は、あくまでも診断基準を満たす可能性がある者を選別するものであり、診断基準を満たした罹患者を選別するものでは無い。



「あくまで疑い」なのだが「罹患」と意図的に表記


2017年9月厚生労働省より、「ギャンブル依存症生涯罹患率推計:成人人口の3.6%およそ320万人」、「直近1年のギャンブル依存症罹患率0.8%およそ70万人」と推計が出された。 (*6)

過去にも、あくまでも「ギャンブル依存症疑いの推計」なのだが「ギャンブル依存症罹患率」と意図的に歪曲して問題を誇大化するツイートをしている。



また、時事に乗じているだけでの下記のツイートなどは、癌とギャンブル依存症とパチンコ自粛にはどのような関係があるのだろうか。





無根拠なギャンブル依存症の断定

下記ツイートについても田中氏は報道を見ただけであり調査等は全くしていない。情緒的な判断だけでギャンブル依存症と断言している。



「使途の一つがギャンブル」と記述さえしてあれば、全てをギャンブル依存症に結びつけ 、著書でも「使途の一つがギャンブル」の事件のリストをまとめている。田中氏は精神科医でもカウンセラーでもない。どのようなエビデンスで「ギャンブル依存症」と断定したのだろうか。



下記の5月9日のツイートなどは、ソーシャルディスタンスを確保してパチンコ店に並んでいる人達を写した写真をコメント付きでリツイートしてるのだが、この大勢の人達に対して精神疾患であるギャンブル依存症と断定するのは人格攻撃に当たり、名誉毀損の可能性がある。



被疑者がギャンブル依存症と判明していない事件や報道を全てギャンブル依存症だと断定するのは、ギャンブル依存症者は犯罪者であるという「スティグマ」を強める行為であり、ギャンブル依存症の誤解や偏見を撒き散らす行為である。

当事者の病状を診断する行為は、医師法第17条では医師による医学的判断と解釈されており、無資格である田中氏の一連のツイートは医師法第17条違反の可能性がある。(*7)



「タフラブ」の懸念事項

田中氏は、アイドルグループ「神宿」とのコラボやアニメなどを作成して「タフラブ」を国民に広く啓発している。また、田中氏は「タフラブ」を次のように説明している。


タフラブを我々は「自立した愛の形」と名付けていますが、つまりは 依存症者がやらかした問題を周囲の人は、尻拭いや肩代わりをせずに、本人の問題は、本人に責任をまっとうしてもらう! (*8)





底つき体験

底つき体験とは依存状態に陥って社会生活において重大な支障をきたした時に、本人がその深刻な状態を認識して、その状態から脱しようと依存症と向き合う事である。

タフラブは近親者が援助などをせずに社会生活において支障をきたして、依存症と向き合うまでの「見守る愛」であり、その落ちる所が無い迄にどん底に落ちた「底つき体験」を通して当事者本人を回復に向かわせようとする施策だが、一つの疑問が湧く。当事者が底つきしなかった場合はどうなるのか。

借金ができなくなって高金利の闇金に手を出しても、仕事を解雇されても、犯罪を犯しても、病院などでカウンセリングや治療を受けても、底つきしなかった場合にもたらされるのは「死」ではないのだろうか。(*9)

これを依存症や当事者への対応についての知識の無い近親者が動画などに啓発されて安易に「タフラブ」を貫き通してしまった結果、死に至る。という懸念も生じる。田中氏は精神医療の知識の無い一般の素人に周知する危険性を認識しているのだろうか。



当事者の自殺

また、当事者の自殺が多いという事とタフラブという手法には関連があるのではないかという疑念も湧く。

話は逸脱するが、当事者に自殺が多いと認識しているという事は精神科を受診後に自殺しているのではないか。私が知る限り(10人ぐらい?)、依存症で精神科を受診し、いわゆる「衝動を抑える薬」を処方され服用すると、間違いなく全員が「だんだん生きていてもしょうがないと思い始める」と言い、自殺念慮を覚えたり、その中の数人は自殺企図もしている。因果はあるのだろうか。


タフラブというのは、依存症界では常識ですが、日本では一般の人にはあまり知られておらず、これが依存症問題を長引かせてしまう一つの原因になっています。(*8)

閑話休題。依存状態に陥るのは個々人において様々な背景要因があり、行き過ぎた「タフラブ」にもたらされるのが「死」であれば、「依存症界ではタフラブは常識」とレッテルを貼りスレテオタイプ化するのではなく、個々人において対応を変えるのが最適解である。そういった啓発が必要である。

仮に、当事者の近親者が、田中氏の「タフラブ」啓発で「タフラブ」を知り、素人知識の行き過ぎた「見守る愛」で当事者が死に至った場合に田中氏はどのように責任を取るのだろうか。



ギャンブル依存症自己診断ツール「LOST」の懸念

ギャンブル依存症自己診断ツール「LOST」とは、ギャンブル依存症の早期発見、治療の為のセルフチェック式の4問のみの簡易テストである。開発に至った経緯は、現時点で使われるスクリーニングテスト「SOGS」「DSM-5」「20の質問」では下記の欠点がありその欠点を補う為に開発した、と田中氏は述べている。


「算出方法が面倒」「質問数が多すぎる」「ギャンブル依存症者の対照群が一般人となっているため過剰診断になりがち」などという欠点があり、一般に広く用いられるには至っていなかった。そのためギャンブル依存症の予防教育や、早期発見、早期診断が実現せず、重症化してやっと家族が相談に訪れるという具合であった。(*6)


早期発見や早期診断の問題点


LImitless
1.ギャンブルをする時には予算や時間の制限を決めない、決めても守れない

Once again
2.ギャンブルに勝った時に「次のギャンブルに使おう」と考える

Secret
3.ギャンブルをした事を誰かに隠す

Take money back
4.ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う。(*6)

この4つの質問に自分の1年以内のギャンブル経験が2つ以上あてはまったら、あなたはもうギャンブル愛好家ではなく、ギャンブル依存症に罹患している可能性がある。早めに相談機関を訪れることをお勧めする。(*6)

上記のように早期発見や早期予防を掲げているが、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)では、予防的、早期介入を促す「精神病リスク症候群(弱性精神病症候群)」の診断カテゴリーを導入する提案があったのだが、米国心理学会やDSM-IV作成委員長のデューク大学名誉教授アレン・フランシス氏が強く反対して提案は破棄された。

その理由として、精神科医・大野裕氏(**1*)によるアレン・フランセス氏へのインタビューにおいて、このように回答している。


精神病になると言われていた10人中9人が精神病にそうならないのです。精神疾患の予防法として立証されたものはありません。(*10)



「LOST」の信憑性


Q1.ギャンブルをする時には予算や時間の制限を決めない、決めても守れない
A.当てはまる
論理的に勝てる(期待値がプラス)台であれば予算や時間を決めずにやる。反対に論理的に負けると判断したときは立ち回りを変える。また、パチンコ屋は基本的には13時間営業が多いので、元々の時間制限はある。諏訪東京理科大学篠原菊紀教授のツイートを参照すると、健全遊技でも当てはまってしまうのではないか。


Q2.ギャンブルに勝った時に「次のギャンブルに使おう」と考える
A.当てはまる
勝てていれば軍資金になる。諏訪東京理科大学篠原菊紀教授もこのようにツイートしている。


Q3.ギャンブルをした事を誰かに隠す
A.当てはまる
重要な面接や面談等で「ギャンブルやりますか?」と聞かれたら「やりません」と答えるかもしれない。また、知人や交際相手の親族等が、ギャンブル嫌いなら隠す事もある。


Q4.ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う。
A.当てはまらない
パチンコ、スロットを始めた知識の無い頃でも、「すぐに」取り返したいとはあまり考えない。「すぐに」と考えても、夜中にパチンコ屋は開いていない。


上記は「LOST」で診断した結果である。4問中3問が当てはまるが全く問題の無いギャンブル依存症となった。仮にこの結果を基に誤診の多いという精神科などを受診して、偶然にも利益のみを追求する精神科医に当たれば、故意に処方薬依存に陥らせる事をしたり、投薬等による自殺企図や自殺願望等を持つ事を考慮しない治療をすぐに始める可能性がある。

また、未だにあるのかは不明だが多剤大量処方で普通の生活が送れなくなる事も否定できない。受診する側からすると医師が誠実かどうかを判断する指標が無く受診もギャンブルになってしまう。田中氏はこのような問題点をどのように考えているのだろうか。

全ての精神科医が誠実であれば心配はいらないが、「LOST」で手軽で簡単にセルフチェック、診断できるという事は、安易にギャンブル依存症などの診断を下される可能性を否定できない。また、ギャンブル依存症というレッテル貼りによる差別や本人の心理的負担もあるのではないか。

そして、意図的に患者数を増加させようと目論み、国内の世論を誘導する為に利用するのではないか、という疑惑が生じてくる。



他者への批判

発信力のある田中氏は公益法人の代表でありながら法人や個人を名指しで批判している。株式公開している「楽天」への「人の不安につけ込んで商売するって信じがたい暴挙」という批判は、それによって株価が変動する可能性を否定できない。株価が変動するという事は「特定の者の利益になり特定の者の不利益になる」。





独善的なツイート

下記のツイートは、元KAT-TUNの田口淳之介氏が厚生労働省麻薬取締部に大麻取締法違反で逮捕された時のツイートである。すぐに保釈されたが、どのような状況なのかも不明瞭である田口氏に対して、田中氏の「我々依存症界にとって迷惑」というツイートは田口氏の精神状態を全く考慮していない。



田中氏の発言は、精神医療に携わる者であり依存症罹患者の自殺率の高さを認識しているにも関わらず、自らの主張を押し通すだけの発言である。ましてや「担当の弁護士がポンコツ」などは名誉毀損の可能性がある。

依存症界という特定の者の利益を求め、田口氏や担当弁護士、ファン等の特定の者の不利益になるツイートを独善的と言わずに何というのだろうか。


田中氏の独善的なツイートを批判した関連エントリー



第三者への損害賠償責任

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には「悪意又は重大な過失があった時には第三者に生じた損害を賠償をする責任を負う」と明記されている。


一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百十七条
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。(*11)

田中氏はブログエントリーでも、「ソニーミュージックが反社会行為に加担している」や、新型コロナで自粛要請中に営業をしていたパチンコ店法人を名指しで批判している。そもそも、「ソニーミュージックが反社会行為に加担している」は、信用毀損罪や業務妨害罪の可能性がある。


ソニーミュージックさんの方が、よほど反社会的行為に加担してるじゃないですか~。(*12)
要請無視のパチンコ店は大賑わいです。我が家の近所のパチンコ店「オアシス」など、近所の店「プレサス」が開けてるから(*13)

この山口敬之氏に対してのツイートは山口氏自身の人格を攻撃するものであり名誉毀損ではないだろうか。



このような批判や、先述の楽天や田口淳之介氏、山口敬之氏などに対しての、悪意や重大な過失で損害が生じている場合には、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(第百十七条)によって、当該役員である田中氏に第三者に生じた損害賠償責任が発生する。



田中氏の立ち振る舞いは適切なのか

今回列記した、田中氏の対立軸を生み出す批判的なツイートやエビデンスの無い情緒的な言説は、公益法人のガバナンスにおける留意事項に照らし合わせた場合、不特定多数の利益の増進に寄与するとは到底考えられない。これは「特定の者の利益になり特定の者の不利益になる」事になり、国民の信頼を得られない事に繋がる。

特に、反パチンコ派やギャンブル業界から依存症対策経済的支援を求める特定の者の利益にはなるが、パチンコ業界(メーカーには一部上場企業もある)やパチンコユーザー等とギャンブル依存症を無根拠に結びつける表現や誇大な表現は、国民にネガティブなレッテル貼りを促しスティグマを増強し、特定の者の利益を喪失する。

また、同会には厚生労働省や文部科学省から業務委託がなされており、約2千万円の税金が支出されているが、一連の無根拠、誇大ツイートをする田中氏が代表である同会に業務を委託される資格はあるのだろうか。(*14)



国民の信頼の確保

田中氏に批判されている側も納税者であり、その人々から信頼を得られるとは到底思えず、私などの国民の批判は田中氏が代表である同会を信頼していない証左でもある。

そのツイートや言説にエビデンスがあり正当性があるのであれば、同会への国民の信頼を確保する為に明確で合理的な説明をしなければならない。完全無視をするのは自ら公益法人代表としての責務を放棄している。

また、今回指摘した田中氏のツイートや言説は、民法第六百四十四条の善管注意義務に違反にしている可能性がある。この事により同会に損害が生じた場合には役員に対して、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(第百十一条)により損害賠償責任が発生する。


民法
第六百四十四条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。(*15)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百十一条
 理事、監事又は会計監査人(以下この款及び第三百一条第二項第十一号において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、一般社団法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(*11)



全体の奉仕者


公益法人の公益目的事業は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければなりません。また、法人の財産は、役員や職員の私産・私物ではなく、特に公益法人の場合は、税制優遇を受けて形成された、いわば国民から託された財産です。(*4)

公益法人のガバナンスにおける留意事項に明記されている「不特定多数の者」とは、国民全般を指し示しており、また、「法人の財産は税制優遇で形成された国民から託された財産」という事は、国民からの税金で支出されているのと何ら変わりはない。

つまり、公益法人は国民全般の利益増進に寄与する事業、即ち、公益目的事業を国民からの税金で実行する事になる。



公務員 ≒ 公益法人(役員)

この事から公益法人に求められるあり方は公務員とほぼ同じであり、公益法人のガバナンスにおける留意事項「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければなりません。」は、日本国憲法第十五条第二項の「全体の奉仕者であり一部の奉仕者ではない。」とほぼ一致する。


日本国憲法
第十五条
○2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。(*1)

つまり、公務員とほぼ同様の「公益」「公平」「中立」などの公務員倫理の遵守、高い職業倫理が求められる。

しかし、田中氏の下記ツイートからは特定のイデオロギーの者との信頼関係の確保を優先し、それ以外の者との信頼関係の確保を放棄している事が読み取れる。言い方を変えれば、田中氏は代表である公益法人の同会を「私的利用」しているのではないだろうか。





公益法人代表の政治的批判

公務員には全体の奉仕者として、公平中立に公務に携わる為に、政治的に中立な立場を維持する為の政治的行為の制限がある。(*16)(*17)



一般社団法人及び一般財団法人に関する法律や、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律には、政治活動の制限の規定は無いが、公益性が求められるのであれば、公務員とほぼ同じあり方を求められる。田中氏の政権批判とも取れる下記ツイートやリツイート、記事は、公務員の政治的行為の制限に準じて自主的に制限しなければならないはずである。(*18)



また、パチンコ関連業界団体に「振り込めばマスコミ等に業界の依存対策貢献を広める」として、寄付を要求していたという証言もある。





公益認定等委員会

同会は2018年3月1日から公益社団法人に認定されたが、田中氏の一連の無根拠、誇大ツイートや記事は2020年の5月現在でも確認できる。内閣府の審議会(諮問機関)である公益認定等委員会は7人の委員で構成されているが、公益認定はどのような判断で下されたのだろうか。また、監査は機能しているのだろうか。公益認定取り消しをせずに放置されていた状況を考慮すると、7人の委員にも疑惑の目を向けてしまう。



*2022年12月18日加筆(段落「NHKクローズアップ現代(2022/12/14)でのデマ」を加筆致しました。)


(*1)引用元・日本国憲法 - 電子政府の総合窓口 - e-Gov イーガブ
(*2)引用元・公益法人等の検索(ギャンブルと検索してください) - 国・都道府県公式公益法人行政総合情報サイト - 公益法人information
(*3)引用元・公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議における「公益法人のガバナンスの更なる強化等のために - 最終とりまとめ」
(*4)引用元・公益法人の各機関の役割と責任 - 内閣府
(*5)参照元・NHK | クローズアップ現代 | やめたくてもやめられない広がるオンラインカジノの闇
(*6)参照・引用元・たった4問でわかる!ギャンブル依存症スクリーニングテストLOST誕生 - Japan in-depth
(*7)参照元・「医行為」について - 厚労省
(*8) 参照、引用元・祝!タフラブCD化 NHKみんなのうた「変顔体操」両A面に アゴラ | 田中紀子氏
(*9)参照元・「底付き」は必要なのか - みゃおと鳴いたnet | scrblbug氏
(*10)引用元・精神医療ダークサイド(元読売新聞東京本社医療部・佐藤光展氏著)(p177)
(*11)引用元・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 - 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
(*12)引用元・薬物にハマっている時の足跡を残すことも薬物教育に役立つ証拠 - 田中紀子 - アゴラ
(*13)引用元・新台入れ替えまで!自粛に応じぬパチンコ店に厳しい措置を・・・です
(*14)参照元・公益社団法人・ギャンブル依存症問題を考える会 - 定款・事業報告書・決算報告書
(*14)参照元・公益社団法人・ギャンブル依存症問題を考える会への総支出額 - 政府の事業が検索できるサイトJUDGIT!(ジャジット)
(*15)引用元・民法 - 電子政府の総合窓口 - e-Gov イーガブ
(*16)参照元・政治的行為の制限 - 人事院
(*17)参照元・一般職地方公務員の政治的行為の制限 - 衆議院
(*18)参照元・公益認定と政治活動等の取扱いについて―不認定事例をベースにした報告―公益財団法人公益法人協会 - 専務理事 - 鈴木勝治



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犯罪の原因はギャンブル依存症

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会・田中紀子氏の、「使途の一つがギャンブル」と記述してある事件の一連のツイートである。田中氏は著書でも「使途の一つがギャンブル」の事件のリストをまとめているが、田中氏はどのような合理的な理由でギャンブル依存症と断定したのだろう、と疑問が湧く。



田中氏は精神科医でも臨床心理士や精神保健福祉士でもなく、ましてや接見すらしていない。インタネットのニュース記事に「使途はギャンブルなど」と記述してあればギャンブル依存症と断定する。ここで田中氏のギャンブル依存症問題を考える会以外での活動に触れてみる。



依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク

田中氏は「依存症問題の正しい報道を求めるネットワークの発起人の1人」である。他の発起人には、「筑波大学・医学医療系社会精神保健学教授・斎藤環氏」「国立研究開発法人・国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所・薬物依存研究部部長・松本俊彦氏」などの錚々たる顔ぶれである。外部協力者には「シノドス編集長・評論家・荻上チキ氏」も名を連ねている。

同ネットワークのウェブサイトの「当団体の理念と目的」には、このように記述してある。


私たちが見過ごせないと感じる問題報道がなされたとき、協議し、改善を求めていくことが、このネットワークの主な活動です。

依存症問題においては誤解や偏見、中傷をまきちらすことが決して珍しくはありません。(*1)

同ネットワークには、このような高尚な「当団体の理念と目的」があるのだが、それに反する田中氏の一連のツイートは、ギャンブル依存症の誤解や偏見を撒き散らしていると言っても過言ではない。



その理由は、被疑者がギャンブル依存症と判明していない事件で被疑者をギャンブル依存症であると断定するのは、ギャンブル依存症当事者は犯罪者であり、ギャンブルを行うと犯罪を起こしやすいという「スティグマ」になるからだ。田中氏は一連のツイートを当事者がどのように捉えるかを想像する事が出来ないのだろうか。



ダブルスタンダード


薬物使用者=無差別殺人を犯す極悪人」であるかのような誤解や偏見を与えました。(*2)

田中氏はブログエントリーでこのような表現で批判をしているが、田中氏の「使途の一つがギャンブル」と記述してある事件の一連のツイートと照らし合わせると、「ギャンブルをする人=あらゆる事件を犯す極悪人」であると誤解や偏見を与えている。

このように田中氏は薬物使用者の犯罪には薬物以外の他の問題があると擁護するが、「使途がギャンブル」の事件では、何らエビデンスを示さずに依存症やギャンブルが原因だと断定して当事者や問題の無い遊技者等を貶める。これを「ダブルスタンダード」「二枚舌」と言わずに何と言うのだろうか。


今の日本の実情考えたら、各県に1億円位の予算はいるでしょうよ。(*3)

田中氏の一連のギャンブルが原因であるとするツイート等は、公益法人代表の権威を利用して「ギャンブル=酷い=悪」という「スティグマ」を構築、世論を誘導し、田中氏のブログにおいて主張する「ギャンブル依存症対策費47億円」をパチンコ業界等に支出させる為のプロパガンダではないのか。



田中氏は、杉村太蔵氏や羽鳥慎一モーニングショー等のメディアによって薬物使用者の「スティグマ」が作られると批判しているが、ギャンブル依存症当時者に「スティグマ」を刻んでいるのは田中紀子氏自身である事に全く気付いていない。



依存症の「スティグマ」



WHO(世界保健機関)ではギャンブル依存症を精神疾患と認定するが、田中氏のように「ギャンブル依存症当事者の犯罪だ!」と、声高に叫ぶのは当事者への「スティグマ」である。これでは「ギャンブル依存症当事者は犯罪者である」という「スティグマ」が強まり、社会的信用を低下させ、自らを卑下し、心理的負担を増大させる。



APA(米国精神医学会)のDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)やWHO(世界保健機関)のICD-11(国際疾病分類第11版)での、現在の呼称は「Gambling Disorder(ギャンブル障害、ギャンブリング障害)」である。



日本においては、ICD-10での「Pathological gambling(病的賭博)」が、DSM-5での「Gambling Disorder(ギャンブル障害)」や「Compulsive gambling(強迫的ギャンブル)」と同義であり、これが日本でのギャンブル依存症だったが、最新版であるICD-11では「Pathological gambling(病的賭博)」は「unspecified(特定できない)」とされ、「Compulsive gambling(強迫的ギャンブル)」でのギャンブル行動は「Gambling Disorder(ギャンブル障害)」のギャンブル行動では無いと明記された。

田中氏の主張するギャンブル依存症対策とは、どのようなエビデンスに基づいたギャンブル依存症であるのかが全く不明である。





2つの「スティグマ」

私見になるが、「Disorder=障害」である理由は、「Pathological=病的」という呼称や「否認の病」と言われる所以である呼称「精神疾患」という「スティグマ」を懸念したのではないか。

この2つの「スティグマ」の懸念と依存状態から脱却する為に「治療」という言葉では無く「回復」という言葉を使用する事実と合わせると、「〜依存症=病気」では無く「〜依存と病気は違う」が適切であり、「addiction」も「中毒」や「〜依存症」ではなく「〜障害」が適切である。

現代の精神疾患への一般人の理解は不十分であり、社会での精神疾患当事者への対応も改善の余地がある。「依存症=病気=精神疾患」という「スティグマ」により、その表面だけを端的に捉えさせてしまうと、社会での精神疾患への理解度の低さから差別の対象になり兼ねない。

然すれば、前述の通り「〜依存症=病気」では無く、「〜依存と病気は違う」が適切なのではないだろうか。



時代錯誤

田中氏はギャンブラーズアノニマス(GA)などの自助グループや回復施設を推奨しているが、そのプログラム(12ステップ)(*4)が宗教的で馴染めないなどの相性の問題がある。12ステップで強迫的ギャンブラーを自認すると、「自分の力で解決できない」「絶対にやってはいけない」「一生治らない」「進行性」などと強迫的ギャンブルから脅迫される。


12ステップは1920年代に「キリスト教の信仰を持つ事で断酒に成功した」という体験を基にし、自らが無力であることを認め、自身よりも大きな力(ハイヤーパワー)に助けられて回復するという精神療法である。(*4)

しかし、2021年の公益財団法人社会安全研究財団のパチンコ・パチスロ遊技障害研究成果最終報告書では、12ステップでの「自分の力で解決できない≒自分で止める事ができない」という認知が発症や進行に強い影響がある事が判明しており、田中氏の主張には疑問符を付けざるを得ない。(*5)

また、当事者が何度もスリップ(反復する問題賭博行動)してしまうのであれば、ギャンブルと自助グループ・回復施設・精神医療のループが続き、スリップによる心理的負担や支出による負担が大きくなるのではないか。然すれば、パチンコがメインの日本であるならば、確率論の知識を得てその知識を基に立ち回り、「ハームリダクション・ギャンブル」をして負債を抑えるのが、クオリティ・オブ・ライフ(*6)の視点からも適切である。


クオリティ・オブ・ライフ(英: quality of life, QOL)とは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた『生活の質』のことを指し、ある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。QOLの「幸福」とは、生きがい、身心の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション活動、レジャーなど様々な観点から計られる。またQOLには、国家の発展、個人の人権・自由が保障されている度合い、居住の快適さとの関連性も指摘される。(*6)

私はパチンコやパチスロを指導していた経験があり(**A) 、指導していた者の中で精神科で全員がギャンブル依存症と診断された者だったが、パチンコの知識を理解した後にスリップする者は一人もいなかった。故に進行的で不可逆的ではない事が証明され、強迫的ギャンブル、ひいてはギャンブル依存症の定義が覆されており、また、ギャンブルの根幹である確率論に言及しない、1950年代生まれの強迫的ギャンブルは時代錯誤であり、ギャンブル依存症の完全なる回復方法が確立されない原因は、強迫的ギャンブルという定義にあるのではないだろうか。



田中氏の「ギャンブル依存症は病気」という啓発は旧態依然であり、「強迫的ギャンブル=12ステップ」という認識もギャンブル依存症回復の主流とはならない。また、私には「理」では無く「利」で啓発活動しているように見える。依存症問題の正しい報道を考えるネットワークの発起人でもある田中氏の主張は本当に正しいのだろうか。懐疑的にならざるを得ない。



*2022年10月8日加筆(全文を読みやすく加筆修正しました。)


(*1)引用元・依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク・当団体の理念と目的
(*2)引用元・ミヤネ屋の事実誤認に対しBPOに申し立て - アゴラ - 田中紀子氏
(*3)引用元・たらい回し案件は誰かが真剣に何とかしようと思えば何とかなる!です - 田中紀子氏
(*4)引用元・ギャンブル依存症は利権である - ギャンブル依存症とかのブログ - ギャンブル依存症だった人
(*5)参照元・公益財団法人日本遊技機工業組合社会安全研究財団パチンコ・パチスロパチンコ・パチスロ遊技障害研究成果最終報告書(2021)
(*6)引用元・クオリティ・オブ・ライフ - ウィキペディア(Wikipedia)



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ギャンブル依存症疑い3.6%

厚生労働省の2017年のギャンブル依存症の調査で、約320万人(3.6%)が生涯でパチンコや公営競技等の、ギャンブル依存症が疑われる状態になった事があるとする調査結果を発表しました。直近1年以内ではギャンブル依存症が疑われた人は約70万人(0.8%=約22%)です。

つまり、ギャンブル依存症が疑われても約250万人(2.8%=約77%)は回復しています。また、ギャンブル依存症には併存障害が75%に及ぶという公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授・篠原菊紀氏の指摘もあります。

そこで、今回は、ギャンブリング障害(ギャンブル依存症)には ”誰もが” 陥るのかを”脳科学”的な研究や”精神医学”的な調査を基にして検証してみます。


間違いがございましたらご指摘をお願い致します。



シナプス

今回のエントリーでは、脳科学的な見地からギャンブル依存症を検証致しますので、脳内の情報伝達の為の接触構造である「シナプス」「神経伝達物質」について説明させて頂きます。

シナプス ・イメージ図

脳内には情報を処理して伝達する神経細胞があり、情報を送る側の末端と受け取る側の末端をシナプスと呼びます。情報を送る側は「シナプス前終末」と呼び、受け取る側は「シナプス後細胞」と呼びます。シナプスでは神経伝達物質(モノアミン)を使用して情報の伝達を行います。


神経伝達物質、モノアミンとは?

モノアミンとは、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどの神経伝達物質の総称です。その中の「ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン」はカテコールアミンとも呼ばれます。

  • ドーパミン ー 快楽・衝動
  • セロトニン ー 調整・抑制・安定
  • ノルアドレナリン ー 覚醒・判断・注意
  カテコールアミン
カテコールアミン


参照元・モノアミン - 脳科学辞典


シナプスでの情報伝達

シナプス ・イメージ図

1・シナプス前終末からシナプス後細胞へ情報が伝達される際に、活動電位という電気信号が神経細胞に発生。

2・活動電位がシナプス前終末まで達すると、シナプス小胞がシナプス間隙まで移動して細胞膜を開き、小胞内に貯蔵されていた神経伝達物質をシナプス間隙へと放出。

3・シナプス間隙へ放出された神経伝達物質の一部はトランスポーターによってシナプス前終末に取り込まれてリサイクルされます。放出された神経伝達物質は情報伝達の為にシナプス後細胞に向かう。

4・シナプス後細胞のモノアミン・レセプター(受容体)によって、神経伝達物質の受容、情報伝達を完了。



ギャンブル依存症と発達障害とモノアミン

次は、シナプスと神経伝達物質の研究や調査から、ギャンブル依存症と発達障害の脳科学的な関連性を検証してみます。


ギャンブル依存症とノルアドレナリン


ノルアドレナリンとは?

ノルアドレナリンはモノアミンやカテコールアミンの一種です。生体内で神経伝達物質やホルモンとして働き、末梢神経系では交感神経における神経伝達物質として重要です。中枢神経系ノルアドレナリンは覚醒や睡眠、ストレスに関係する働きをします。また、注意、記憶、学習等にも影響すると考えられています。


参照元・ノルアドレナリン - 脳科学辞典


ノルアドレナリン・トランスポーター

京都大学大学院医学研究科准教授・医学博士・高橋英彦氏の2012年の研究によると、ギャンブルの慎重さにおいての脳内のノルアドレナリン(神経伝達物質)トランスポーター(再取り込み口)に特徴があり、ノルアドレナリン・トランスポーターの密度の低い人ほど、ギャンブルに慎重になるという研究結果を発表しました。

これは、逆の見方をすれば、ノルアドレナリン・トランスポーターの密度の高い人ほど、ギャンブル依存症の人が多いと仮定できます。


参照元・ギャンブルへの慎重さに脳内のノルアドレナリンが関与 - 京都大学・高橋英彦氏


発達障害とノルアドレナリン

ノルアドレナリン・トランスポーター(adhd)

一方で、発達障害の人の脳では、神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンが不足している事が解っています。発達障害の人の脳内では、トランスポーター(再取り込み口)から神経伝達物質を再取り込みしすぎてしまう可能性があるそうです。

これは、ノルアドレナリン・トランスポーターの密度が高い人ほど、発達障害の人が多いと仮定できます。


参照元・ADHDの原因は脳内に? - 大人のためのADHDサイト


発達障害とギャンブル依存症の共通項(ノルアドレナリン)

この事から、発達障害の人とギャンブル依存症の人のノルアドレナリン・トランスポーターに共通する特徴が有る事が判ります。

  • ギャンブルへの慎重さが低い:ノルアドレナリン・トランスポーター(密度高)
  • 発達障害の人が多い:ノルアドレナリン・トランスポーター(密度高)


ギャンブル依存症とドーパミン


ドーパミンとは?

ドーパミンは運動機能や認知機能などの中枢機能の調節に関与しています。また、ドーパミン神経系は精神疾患の病態に対する関与の可能性があるとされています。


参照元・ドーパミン - 脳科学辞典


ドーパミン・レセプター

京都大学大学院医学研究科准教授・医学博士・高橋英彦氏らの2010年の研究は、健常男性をAとBの同人数のグループに分け、様々な当選確率と当選金額の組み合わせのある複数の宝くじを、「どの程度の金額なら購入してもよいか?」を回答するものです。

両グループで、「低確率を高めに、高確率は低く見積もる」レベル数値と線条体のドーパミンD1、ドーパミンD2受容体(レセプター)の密度との相関関係を画像化技術を使用して調査したところ、線条体のドーパミンD1受容体の密度が低い人ほど、「低確率を高めに、高確率は低く見積もる」レベル数値が高いという結果になりました。ドーパミンD2受容体の密度には相関関係はありませんでした。

これらの調査結果から、ドーパミンD1受容体の密度が低い人ほど、低確率に期待感を持ち、高確率に不安感を持つ傾向があり、ドーパミンD1受容体の密度の高い人は、冷静な意思決定をする傾向があることが判りました。


参照元・低い当選確率を高めに見積もるワクワク感に脳内ドーパミンが関与-脳内分子の画像化技術と経済理論から依存症に迫る - 独立行政法人放射線医学総合研究所 / 独立行政法人 科学技術振興機構(JST) / 京都大学・高橋英彦氏


発達障害とドーパミン

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また、発達障害(ADHD)の人はドーパミン受容体が少ないという調査結果もあるそうです。


ネガティブにとらえられがちなADHDの有利な点とは? - Gigazine



発達障害とギャンブル依存症の共通項(ドーパミン)

この事から、発達障害の人とギャンブル依存症の人のドーパミン・レセプターに共通する特徴が有る事が判ります。

  • ギャンブルへの低確率に期待感、高確率に不安感:ドーパミンD1受容体(レセプター)(密度低)
  • 発達障害:ドーパミン受容体(レセプター)(密度低)




ギャンブル依存症者と健常者の脳の一部の活動や結合の違い

2017年発表の京都大学大学院医学研究科准教授・医学博士・高橋英彦氏らの研究では、ギャンブル依存症の男性患者21名と健常男性29名に対して、ハイリスク・ハイリターンのギャンブルとローリスク・ローリターンのギャンブルを状況に応じて最適なリスクの取り方を切り替える必要のあるギャンブル課題を、患者のリスクへの態度に特徴が見られるかどうかを検討しました。


実験の結果、患者は許容できるリスクの大きさを柔軟に切り替えることに障害があり、リスクを取る必要のない条件でも、不必要なリスクを取ることを確認しました。(*1)

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出典・ギャンブル依存症の神経メカニズム -前頭葉の一部の活動や結合の低下でリスクの取り方の柔軟性に障害 - 京都大学・高橋英彦氏ら


また、ギャンブル依存症者の脳の活動状態を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調査したところ、脳の前頭葉の一部(背外側前頭前野、内側前頭前野)の結合が弱い事も判明致しました。(*1)

(*1)引用・参照元・ギャンブル依存症の神経メカニズム -前頭葉の一部の活動や結合の低下でリスクの取り方の柔軟性に障害 - 京都大学・高橋英彦氏ら



ギャンブル依存症と発達障害やパーソナリティー障害、精神障害の関連性

前述の研究、調査から下記のように共通項が見つかりました。

  • ギャンブルへの慎重さが低い:ノルアドレナリントランスポーター(密度高)
  • 発達障害の人が多い:ノルアドレナリントランスポーター(密度高)

また、ドーパミンD1レセプターにおいても下記のような差異が画像化技術において確認されています。発達障害においてはドーパミン受容体(レセプター)の密度が低いという調査もあります。

  • ギャンブルへの確率を客観的に判断:ドーパミンD1受容体(レセプター)(密度高)
  • ギャンブルへの低確率に期待感、高確率に不安感:ドーパミンD1受容体(レセプター)(密度低)
  • 発達障害:ドーパミン受容体(レセプター)(密度低)

DSM-5で指摘される併存障害と傾向

DSM-5(精神障害の診断と統計のマニュアル-米国精神医学会)によると、低年齢からギャンブルを始めると、ギャンブル依存症(ギャンブリング障害)の割合が増加する。

ギャンブル依存症(ギャンブリング障害)には「衝動的」「競争心が旺盛」「精力的」「落ち着かない行動」「飽きやすい」「承認欲求が強い」などの傾向の人がいる。また、「無力感」「罪悪感」「抑うつ感」を感じた時にギャンブルをする傾向もある。

ギャンブル依存症(ギャンブリング障害)の幾ばくかの人には、パーソナリティー障害や抑うつ障害、双極性障害等の精神障害、物質使用障害、特に中等度から重度のアルコール使用障害と一体に見える場合がある。


環境要因

ギャンブル依存症(ギャンブリング障害)リスクに関しての双生児研究では、リスクの分散の49.2%が遺伝的影響で男女差がありません。残りの約50%が環境要因ですが、共有環境(互いを似せる方向に働く環境=ほぼ家庭環境)の影響は0%です。環境は非共有環境(互いを似せない方向に働く環境=家庭環境以外)が影響します。

この比率はビッグファイブと呼ばれる「神経症傾向(N)」「外向性(E)」「経験への開放性(O)」「協調性(A)」「誠実性(C)」などと似ており、性格と同レベルに遺伝性の想定ができます。


参照元・ギャンブル依存症 - wikipedia


また、公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授・篠原菊紀氏の下記ツイートでは併存障害が75%に及ぶという指摘もあります。


ギャンブル依存症の仮説

これによって、ギャンブル依存症の人には「ノルアドレナリントランスポーターの密度が高く」、かつ、「ドーパミンD1受容体(レセプター)の密度が低い」という事が多いのではないかと仮定できます。

また、DSM-5(精神障害の診断と統計のマニュアル-米国精神医学会)にて指摘されている「併存障害」「遺伝要因約50%:非共有環境要因(=家庭環境以外)約50%」という調査や、篠原菊紀氏による「併存障害75%」という指摘もあります。つまり、ギャンブル依存症の人には発達障害、精神障害的な傾向があると仮定できます。



ギャンブル依存症は進行的で不可逆性なのか?


ギャンブル依存症問題を考える会・田中紀子氏の説明

ギャンブル依存症問題を考える会・田中紀子氏は、ギャンブル依存症は「進行的」「不可逆的=一度たくあんになった大根は、もう、たくあんには戻れない」とギャンブル依存症の説明をしております。しかし、可逆的、不可逆的であっても約77%が回復しており、「進行的」と『レッテル貼り』するのは誤りではないでしょうか。


依存症を単体(背景要因や併存障害無しで依存症のみ)で原因

また、田中紀子氏は依存症を単体(背景要因や併存障害無しで依存症のみ)で原因としておりますが、今回の知見によって、ギャンブル依存症の原因は、併存障害での統合失調症や薬物依存、アルコール依存などや、神経伝達物質のモノアミン・トランスポーターやモノアミン・レセプターの差異、遺伝要因や非共有環境要因によって、依存状態に陥る可能性が高い事が判明しております。

上記の通り、個々人において様々な背景要因があります。また、薬物やアルコールなどの物質依存にも併存障害がある事が判っております。これは、薬物やアルコールなどの物質依存やギャンブル依存などの行為依存、即ち、全ての依存症を単体(背景要因や併存障害無しで依存症のみ)で取り扱う事、更にはギャンブル依存と他の依存症を一括りにするには、些か無理があるのではないでしょうか。



『タフラブ』の懸念事項

ギャンブル依存症問題を考える会・田中紀子氏は『タフラブ 』を次のように説明しております。

タフラブを我々は「自立した愛の形」と名付けていますが、つまりは 依存症者がやらかした問題を周囲の人は、尻拭いや肩代わりをせずに、本人の問題は、本人に責任をまっとうしてもらう! (*2)



底つき体験とは

依存状態に陥って、社会生活において重大な支障をきたした時に、本人がその深刻な状態を認識して、その状態から脱しようと依存症と向き合う事。


底つき体験

『タフラブ 』とは、アルコール依存症の治療からでてきた依存症治療に関する考え方です。それは、近親者が援助などをせずに、社会生活において支障をきたして、依存症と向き合うまでの「見守る愛」であり、その落ちるところが無い迄にどん底に落ちた「底つき体験」を通して、依存症者本人を回復に向かわせようというものですが、一つの疑問が浮かび上がります。

『依存症者が底つきしなかった場合はどうなるのか?』

借金ができなくなって高金利の闇金に手を出しても、仕事を解雇されても、犯罪を犯しても、病院などでカウンセリングや治療を受けても、底つきしなかった場合にもたらされるのは「死」ではないのだろうか。これは、依存症者の自殺が多いという事と、『タフラブ 』という手法には深い関連があるのではないか、という疑念が湧いてきます。

また、依存症や当事者への対応についての知識の無い近親者が、動画などに啓発されて、安易に『タフラブ 』を貫き通してしまった結果、死に至る。という懸念も生じてきます。


タフラブというのは、依存症界では常識ですが、日本では一般の人にはあまり知られておらず、これが依存症問題を長引かせてしまう一つの原因になっています。(*2)

今回の知見を踏まえると、依存状態に陥るのは、個々人において様々な背景要因があるという事が証明されています。行き過ぎた『タフラブ 』にもたらされるのが「死」であれば、「依存症界ではタフラブ は常識」とレッテル貼りするのではなく、個々人において対応を変えるのが最適解であり、そういった啓蒙が必要ではないのだろうか。


『タフラブ 』のコラボ

また、インターネットで『タフラブ 』のエビデンスとなりうる調査や研究の記事や論文などは見当たりません。このような疑念が拭いきれない『タフラブ 』を、アニメ化したり、アイドルグループとコラボレーションして、ギャンブル依存症問題を考える会が『タフラブ 』を流布する事は公益法人の事業として適切なのか、と懐疑的になります。


(*2) 参照、引用元・祝!タフラブCD化 NHKみんなのうた「変顔体操」両A面に アゴラ | 田中紀子氏
参照元・「底付き」は必要なのか - みゃおと鳴いたnet | scrblbug氏


EBPM『エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング』


EBPMとは?

EBPMとは『エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング』(証拠に基づく政策立案)の略です。以下の説明は内閣府からの引用です。

EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。

内閣府におけるEBPMへの取組 - 内閣府



ギャンブル依存症問題を考える会とEBPM


ギャンブル依存症を考える会の主張

公益社団法人ギャンブル依存症を考える会は、前回のエントリー「ギャンブル依存症の欺瞞の疑惑」でも指摘致しましたが、ギャンブル依存症者を安易に増加させるのではないか、と疑念を抱かせる簡易テストを作成したり、上記のようなエビデンス(研究結果や調査結果)に基づかない主張をしています。これは、内閣府の推進する「EBPM」と、同会の活動内容に相違があるのではないでしょうか。



厚労省と文科省と内閣府の責任

『内閣総理大臣を長とする内閣府』の取り組む「EBPM」に相違する、エビデンスに基づかない主張をしているギャンブル依存症問題を考える会に、内閣府の所管である公益認定等委員会は、「なぜ、公益認定をしたのだろうか?」、と疑問が湧いてきます。

また、厚労省や文科省は、内閣府の取り組む「EBPM」に相違する主張をする同会に、なぜ、ギャンブル依存症の啓蒙活動や予防活動の講演依頼をするでしょうか。これらについて、厚労省や文科省、ひいては『厚生労働大臣』や『文部科学大臣』には、原資が税金である支出によって、同会にシンポジウムや啓発講座等の依頼をする合理性についての説明責任があるのではないでしょうか。(*3)また、内閣府の所管である公益認定等委員会、もしくは内閣総理大臣には、公益性の認定に至った経緯を説明する責任もあるはずです。



ギャンブル依存症問題を考える会に問う

私はギャンブル依存症問題を考える会を潰そうという考えは持っていません。ただ、同会のエビデンスに基づかない主張に公益性があるのか、と疑問を感じ、また、厚労省や文科省が同会に原資が税金である支出によって、シンポジウムや講座の依頼をする合理性があるとは感じません。

しかし、私が見誤っている可能性も否定できません。そこで、下記の項目について、同会の主張に如何に合理性があるのかを、同会の知り得るエビデンスとなりうる研究や調査を使用した合理的な説明で、田中紀子氏にはブログにエントリーして頂きたい。と思います。


(*3)参照元・2017年の公益社団法人・ギャンブル依存症問題を考える会への総支出額 - 政府の事業が検索できるサイトJUDGIT!(ジャジット)
(*4)参照元・たらい回し案件は誰かが真剣に何とかしようと思えば何とかなる!です - 田中紀子氏


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ギャンブル依存症自己診断ツール「LOST」の懸念

ギャンブル依存症自己診断ツール「LOST」とは、ギャンブル依存症の早期発見、治療の為のセルフチェック式の4問のみの簡易テストです。開発に至った経緯は、現時点で使われるスクリーニングテスト「SOGS」「DSMー5」「20の質問」では


「算出方法が面倒」「質問数が多すぎる」「ギャンブル依存症者の対照群が一般人となっているため過剰診断になりがち」などという欠点があり、一般に広く用いられるには至っていなかった。そのためギャンブル依存症の予防教育や、早期発見、早期診断が実現せず、重症化してやっと家族が相談に訪れるという具合であった。(*1)


これらの欠点を補う為に開発したという事です。内容は以下の通りです。


LImitless
1.ギャンブルをする時には予算や時間の制限を決めない、決めても守れない

Once again
2.ギャンブルに勝った時に「次のギャンブルに使おう」と考える

Secret
3.ギャンブルをした事を誰かに隠す

Take money back
4.ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う。(*1)



早期発見や早期診断の問題点

この4つの質問に自分の1年以内のギャンブル経験が2つ以上あてはまったら、あなたはもうギャンブル愛好家ではなく、ギャンブル依存症に罹患している可能性がある。早めに相談機関を訪れることをお勧めする。(*1)


DSM-5

上記のように「1年以内のギャンブル経験が2以上あてはまったら相談機関に相談を推奨」しているが、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)では、予防的、早期介入を促す「精神病リスク症候群(弱性精神病症候群)」の診断カテゴリーを導入する提案があったのだが、米国心理学会やDSM-IV作成委員長のデューク大学名誉教授アレン・フランシス氏が強く反対して提案は破棄された。その理由として、アレン・フランシス氏はこう回答している。


精神病になると言われていた10人中9人が精神病にそうならないのです。精神疾患の予防法として立証されたものはありません。(*2)


「LOST」の信憑性

パチンコやスロットばかりをしていた当時の私を思い出して「LOST」でテストした結果です。

Q1.ギャンブルをする時には予算や時間の制限を決めない、決めても守れない
A.当てはまる
論理的に勝てる(期待値がプラス)台であれば予算や時間を決めずにやる。勝つのが目的だから至極当然。

Q2.ギャンブルに勝った時に「次のギャンブルに使おう」と考える
A.当てはまる
勝つ事で快感や満足感、達成感を求めているのであれば当然。

Q3.ギャンブルをした事を誰かに隠す
A.当てはまる
その場の状況によってはそれもある。

Q4.ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う。
A.当てはまらない
パチンコ、スロットを始めた知識の無い若い頃でも、すぐに取り返したいとはあまり思わない。


精神科の意図的な誤診

4問中3問が当てはまるが、社会的問題の無いギャンブル依存症者である。仮に、この結果を基に誤診の多いという精神科などを受診して、偶然にも利益のみを追求する精神科医に当たれば、故意に「処方薬依存」に陥らせる事をしたり、(「LOST」は利用していないが私の知人に実際にあった事だが衝動を抑える薬の)投薬等による自殺企図や自殺願望等を持つ事を考慮しない治療をすぐに始めるかもしれない。

また、過剰投薬で普通の生活が送れなくなるかもしれない。受診する側からすると、医師が誠実かどうかを判断する指標が無く、受診もギャンブルになってしまう。こういった問題点をどのように考えているのだろうか。

全ての精神科医が誠実であれば心配はいらないのだろうが、「LOST」で手軽に簡単にセルフチェック、診断できるという事は、安易に「ギャンブル依存症」などの診断を下される可能性を否定できない。また、ギャンブル依存症というレッテル貼りによる差別、本人の心理的負担もあるだろう。

そして、国内の世論を誘導する為に意図的に患者数を増やす為に利用するのではないか?という疑惑が生じてくる。


依存症問題を正しく啓蒙

ギャンブル依存症問題を考える会の代表・田中紀子氏のこのような記述にも非常に違和感を覚える。


2017年9月厚生労働省より、「ギャンブル依存症生涯罹患率推計:成人人口の3.6%およそ320万人」、「直近1年のギャンブル依存症罹患率0.8%およそ70万人」と推計が出された。 (*1)


「ギャンブル依存症生涯罹患率推計」「直近1年のギャンブル依存症罹患率」では、罹患した人の人数の推計や1年以内に罹患した人になってしまうが、正しい表記は「ギャンブル依存症に生涯で罹患の疑いのあった人の推計」であり、「直近1年のギャンブル依存症の罹患の疑いがあった人」である。意味が全く違う。

田中氏は「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」の発起人であるが、このようなギャンブル依存症者数を誇大に見せようとする誤った記述を常にしている。この意図的な誇大で誤った記述の背景には、ギャンブル依存症問題を考える会が依存症対策の為に、「各省庁の上に立って独立的にギャンブル行政を監督する機関の設立」を求めている事が背景にあるのだろう。

田中氏は講演等でもこういった誇大な表現をしているのだろうか。また、このような記述を否定せずに掲載しているメディアにも疑問を呈したい。


うつ病キャンペーン

厚生労働省は「うつは心の風邪」というキャッチフレーズで、「早期に発見し、早期に薬を飲めば治る」というキャンペーンを大規模に行った。抗うつ薬「SSRI」の国内販売と比例して、うつ病の患者数は1999年は「44万人」とそれまでの調査で横ばいだったのが、2000年を境に急増して2008年には100万人を超えている。

本来は治療の必要の無い人までが受診、投薬され、患者の急増につながった。これは米国、欧州、英国、豪州とで指摘されている。(*3)


急増の要因

DSMのような診断を一致させやすい操作的診断が普及したが、それが安易な診断が広がる要因となり、心因性、外因性、内因性を考慮せずに抗うつ薬を処方するようになったという。また、製薬会社はうつ病は脳の病気と啓発した。それが心因性や軽い抑うつ状態の人までが投薬治療を受け、うつ病の患者数の急増に結びついたのではないか。(*3)

そして、2010年当時の厚生労働大臣(立憲民主党・長妻昭衆議院議員)が製薬企業への天下り自粛を指示している。(*4)


ギャンブル依存症キャンペーンとうつ病キャンペーンの構図

ギャンブル依存症キャンペーンでは田中氏(ギャンブル依存症問題を考える会)が独立した依存症対策を推進する機関の設立を求め、その先にはギャンブル業界からの47都道府県に各1億円(47億円)を援助(*5)させようという。うつ病キャンペーンにおいては製薬会社がうつ病は脳の病気と啓発し、その先に製薬会社への天下り自粛があった。


共通点

どちらにも共通してるのは、治療に必要のない患者までも治療が必要であると促しており、「うつ病キャンペーン」の時には「SSRI」などの抗うつ薬の売上を増進させた。

翻って、「ギャンブル依存症キャンペーン」では「LOST」により患者数を安易に増大させて、「ギャンブル依存症問題は大きい」と世論を誘導して、ギャンブル依存症問題を考える会の求める「独立した依存症対策を推進する機関の設立」を達成させる。そこにギャンブル業界からの約50億円を援助させようとしてるのではないか。(*5)

これは、患者のリスクを全く考慮せずに、厚労省等が外部機関に利益をもたらすキャンペーンを図ることにより、天下り先の確保をしようとしてるのではないか。DSM-5で否定されている予防的、早期介入を促す「LOST」を容認するのも納得がいく。

はたして、田中氏はギャンブル依存症を本当に正しく啓蒙できているのだろうか?



(*1)参照・引用元・たった4問でわかる!ギャンブル依存症スクリーニングテストLOST誕生 - Japan in-depth
(*2)引用元・精神医療ダークサイド(元読売新聞東京本社医療部・佐藤光展氏著)(p177)精神科医・大野裕氏(国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター所長を経て現在は顧問。皇后陛下・雅子さまの主治医)によるアレン・フランセス氏へのインタビュー。
(*3)参照元 - 精神医療ダークサイド(元読売新聞東京本社医療部・佐藤光展氏著)(p140~)うつ病キャンペーン

(*4)引用元・【長妻厚労相】製薬企業天下り自粛指示 - 薬事時報
(*5)参照元・たらい回し案件は誰かが真剣に何とかしようと思えば何とかなる!です - 田中紀子氏
参考・参照元 - 精神医療ダークサイド(元読売新聞東京本社医療部・佐藤光展氏著)


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大麻で芸能人が逮捕

2019年5月22日に、元KAT-TUNの田口淳之介氏が厚生労働省麻薬取締部(通称マトリ)に元女優・小嶺麗奈氏と一緒に乾燥大麻およそ2.3グラムを所持していた罪で逮捕されました。

その後、6月7日に保釈保証金300万円を納めて保釈をされましたが、その保釈時の『土下座』を一部のネットや依存症界では全否定するようなバッシングを浴びせていました。その点についての私感です。



土下座の意味

フリーライター・赤木智弘氏のブロゴスのエントリーにおいて、もはや、『土下座』は、最早、ドラマやバラエティのお約束であり、「土下座で謝罪を表現すること」は極めて難しいという。

しかし、フィクションとノンフィクションの区別がつかない人が世の中にそんなにも多くいるのだろうか?逮捕されて閉鎖された空間で尋問を受けた後に保釈され、30を過ぎた大のおとなが、アスファルトだろうが土だろうが、地べたに頭をつけて土下座で謝罪しているのである。それがパフォーマンス、演技に見えるのだろうか?、と、疑問符をつけざるを得ない。

初めて逮捕され、保釈され、追い詰められた精神状態の時に、果たしてパフォーマンスや演技で『土下座』をしようと勾留中に考えるのだろうか。これは、保釈時に『どのようにしたら謝罪が伝わるのか?』と考えた刹那、『土下座』という行為をしてしまったのではなかろうかと推測する。

土下座に謝罪の意味はない - 赤木智弘 - Blogos

誰に対しての『土下座』?

また、インターネットにて、誰に対して『土下座』で謝罪してるのか?というのは、

  1. 世間を騒がせた事に対しての謝罪
  2. 関係者やファンを裏切った事へ対しての謝罪

ではなかろうか。

誰に対して謝罪してるのか判らないというのは『行間が読めない』のではないだろうか。



「ギャンブル依存症問題を考える会・田中紀子氏の断罪」



これは依存症界ではなく、田中氏の視点だけの『利己的』『独善的』な発言ではないか?田中氏は田口氏が保釈され、インターネットでこういったバッシングを目にすることを考慮しないのだろうか?

逮捕されて閉鎖された空間で尋問を受けた後に保釈され、田口氏がどういった状況なのか、依存症の知識があるのかどうか、周りにフォローする人物がいるのかどうかも不明瞭であり、保釈後に一人でいる状況も考えられ、追い詰められてるかもしれない。

万が一にも最悪の事態の可能性もある。

田中氏が『我々依存症界にとって迷惑』と断罪する事は、田口氏の精神状態を全く考慮しておらず、この断罪は早計すぎる。と断罪せざるを得ない。田中氏は依存症罹患者の自殺率の高さを認識しているにも関わらず、自らの団体の主張を押し通す事だけの発言、これを『利己的』『独善的』と言わずにして、どう表現すればいいのだろうか?


弁護士が『土下座を促す』?

芸能人の保釈時の映像を見ていると、謝罪の文言は弁護士が考えていると推測できるが、常識的に弁護士が謝罪として『土下座』を促すような事は到底考えられない。これは深読みしすぎではなかろうか。



『土下座』や『丸刈り』は依存症に効果がある?


一般の方々に、土下座や丸刈りそういった精神論が、依存症に効果があるいといった、誤解が社会に広まらないで欲しいです。(*1)

一般的には『土下座』や『丸刈り』は謝罪であり、「『土下座』や『丸刈り』が依存症の治療や回復に効果があるといった誤解が広まる」と、『たった一度』の事例だけで危惧するのは結論が飛躍しすぎであり、ましてや、スマホ普及率80〜85%の時代であり、先ずはインターネットでそのキーワードを検索するはずである。田中氏の危惧は早計すぎるのではないか。

『土下座』や『丸刈り』は治療や回復には意味が無いのは誰の目で見てもほぼ明らかである。だが、『謝罪』としての意味までも無いのだろうか?『土下座』や『丸刈り』は謝罪を言葉だけでなく態度で示しているのである。


第一、土下座とか丸刈りなんていう派手な謝罪のあり方の根底にあるのは、「絶対に許して欲しい」「少しでも自分の有利にことを運びたい」「誠意があると信じて貰いたい」という自分勝手な強引な感情ですよね。(*1)

(土下座は)相手の感情を揺さぶろうとする計算(*1)

これは田中氏が「全ての依存症者の思考パターンは絶対にこうであり、土下座は計算である。」とレッテル貼りしてるだけであるが、本当に謝罪の意をもって表している人も少なからずいるはずである。

一般的に『土下座』や『丸刈り』をされたら、先ず、「あなたの謝罪の気持ちは良く判った。」と考えるのが普通ではないだろうか。その次に、「次にまた過ちを犯さないようにするにはどうするのか?」と問いかけ、受診、治療等の『行動』に繋がらなかった時に断罪すればいいのである。『土下座』や『丸刈り』だけでは『意味がない』と。



人間の尊厳


以下のようなものは効果がない。 恫喝、懲らしめ、見せしめ
依存症の回復に効果がある 依存症者を叩くより回復させたほうがメリットがある。(*2)

田口氏の『土下座』を叩いて、見せしめにしてるのは田中氏自身ではないのか?芸能人といえども一個人である。「土下座の意味は無い」という発言は田中氏の提唱する『タフラブ』なのだろうが、『見守る愛』があるかどうかも判らない、全く接点の無い田口氏に対しての『土下座』の否定は、『愛の鞭』ではなく『棘の鞭』ではないだろうか。これは自らの主義主張を広めようと芸能人である田口氏を利用しているに過ぎない。

「土下座の意味は無い」と発言するのであれば、公共の場では無く、私的な場で直接、本人に発言すべきである。公衆の面前で『土下座』をした、芸能人と言えども一個人を、発言力のある田中氏がツイッターで断罪するという行為は、田口氏の精神状態を全く考慮せず、『利己的』『独善的』であり、人間の尊厳というものを軽く見ているのではないか。発言するのであれば、「今すべき事は土下座ではありません。」「土下座の意味は無い。」では無く、「土下座で謝罪の意は伝わったが、土下座だけでは意味が無い。」が適切ではないか。田口氏の精神状態が心配である。

国立精神・神経医療研究センター・精神科医・松本俊彦氏の芸能界のコネクションを辿ってのフォローを期待したい。


(*1)引用元・田口淳之介さん、あなたがすべきことは土下座ではないです - 田中紀子
(*2)引用元・土下座に何故効果がないか?誰でもわかる依存症講座です - 田中紀子
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ギャンブル依存症問題を考える会(以下同会)は依存症ビジネスを推進する団体ではないか?

そう考える理由は同会の田中紀子代表(以下田中代表)はブログで「依存症の疑い」と厚労省が発表しているものを「罹患者」と記述しており、また、同会の主張する内容に調査結果等の数値的な根拠のある言説がなく、自民党「ギャンブル依存症対策の強化に向けた論点整理」の「有識者ヒアリングにおいて得られた知見」においても「知見」ではなく、「主張」をしており、論点がずれているからです。


以下引用(*1)

①ギャンブル等の管轄省庁の枠を超えて、独立して、ギャンブル等依存症対策を推進する機関が必要

②アクセス制限、医療支援だけに着目するのではなく、数多くの民間を巻き込んで、予防から社会復帰に至るまでの一連の総合的な施策が必要

③税金による国の予算は活用の自由度が低いことから、対策の財源としては、受益者(事業者・施行者)負担による財源の確保を検討すべき

④カジノの規制について、高額な入場料を課すことは逆効果なのでは?IR設置後は、違法ギャンブルの撲滅が必須


①についてはギャンブリング障害の規模の正確な実態も把握できていない提案であり、②については、なぜ数多くの民間を巻き込むのかについての根拠は無く、甚だ疑問を持たざるを得ない。

③受益者負担ということはユーザー側にしわ寄せがくるということではないのか?その辺りについて言及していない。依存症対策を否定するわけではないが、そこまでの規模なのかという点も疑わしい。米国での調査でも90%がコントロールユーザーであり、自己管理が不安定になる者が約5%、生活に支障が生じている者が1%である。また、税金だと私達に金が回ってこないからとも意味がとれる。

④についても逆効果と考えるのは「入場料分を取り返そうとするから」という理由だと思うのだが、カジノが入場料を取るのは動機、行動因子を弱め、逆に無いと動機、行動因子を強めるということだと考える。逆効果だという考えの根拠となる調査結果などが無く、動機、行動因子を強めるということについての反論が無い。


「ギャンブル依存症問題を考える会」とは

「ギャンブル依存症問題を考える会」の目的に

「ギャンブル依存症という病気について啓発活動を行う。」(*2)

とあるが、田中代表が「疑い」を「罹患」とブログに投稿し、社会生活に障害のでる1%を誇大に論じており、同会の回復支援の調査結果等もない。間違った啓発活動をしているのではないかと疑惑が生じてくる。

「ギャンブル依存症問題を考える会」という名称もDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)最新版で「病的ギャンブリング」から「ギャンブリング障害」と変更しており、間違った認識を世間に与えかねない。

また、リカバリーサポートネットワークのように調査結果を基にした知見、諏訪東京理科大学篠原菊紀教授のような科学的な根拠に基づいた言説もなく、ミスリードをしている感が拭えない。

根拠の希薄な主張、ミスリードをして、その主張が通った時に何が達成されるのかを考えると、ギャンブル業界から莫大な対策費を拠出させて、天下り団体の創設、民間の自助グループをビジネス化するのが目的ではないのかとの疑惑が生じます。一方で、ロビー活動を通じて政策に影響を与える立場であり、オピニオンリーダーを自認する同会には、自らの主張にいかに合理的な根拠を有するかを説明する義務があります。また、1%の多寡は個人の判断で決めるのではなく、医学的見解を踏まえた判断をするのが論理的ではないかと考えます。


最後に

以前のブログにも書いてますが、「負けたら依存症」になり、生活に障害がでるのが問題です。私の提案は投資をしてしまう欲求(気持ち)の部分に「勝ち負けの論理的な知識」(確率論、期待値等)を与えて、動機因子、行動因子をコントロールしようというものです。「勝ち負けの論理的な知識」でコントロールできれば、再発は無いのではないかと考えます。(私自身がそうです。)そのためには、重症化する背景要因の中で「勝つ理屈、負ける理屈」(確率論、期待値)の知識の有無がどの程度なのかを調査して、議論しないとギャンブリング障害の本質的な解決にはならないと考えます。

こちらもご覧ください。ー ギャンブル依存症対策について⑤



篠原教授からご指摘のあった部分を削除致しました。

(*1)引用元・ギャンブル等依存症対策の強化に向けた論点整理 ー 自民党

(*2)引用元・ギャンブル依存症問題を考える会




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